【光る君へ】道兼と道長のラストシーンは台本と異なる演出 玉置玲央、柄本佑の提案に「救われた」
NHKの大河ドラマ『光る君へ』(日曜午後8時ほか)の第18回が5日に放送され、俳優の玉置玲央が演じる藤原道兼の最期が描かれた。玉置が取材に応じ、道兼の最期を演じた際の心境や、藤原道長演じる柄本佑との撮影秘話を語った。
5日放送の第18回
NHKの大河ドラマ『光る君へ』(日曜午後8時ほか)の第18回が5日に放送され、俳優の玉置玲央が演じる藤原道兼の最期が描かれた。玉置が取材に応じ、道兼の最期を演じた際の心境や、藤原道長演じる柄本佑との撮影秘話を語った。
第18回では長兄・道隆(井浦新)の死後、一条天皇(塩野瑛久)が道兼を関白に命じた。道兼は民のためによい政をと奮起していたが、関白の慶賀奏上の日に倒れ、7日目にこの世を去るのだった。
道兼の最期について質問されると「よくぞ聞いてくださいました!」と答えて、まずは柄本佑演じる弟・道長との関係の変化について説明した。
「第15~17回の間で道長との関係性がものすごく動きました。でも、それは道長に限らずなんですけど、父(兼家/段田安則)が亡くなったことで、兄弟や内裏とかいろんな関係性がぐわ~っと変わって動くんですけど、特に道長との関係性がものすごく変わるんです。そのきっかけが道長に救ってもらうことでした」
道兼は、最も信奉してきた兼家から後継者に指名されず、失意のまま父親を亡くした。第15回では藤原公任(町田啓太)の家に居座り、酒を飲んで酔いつぶれるなど精神的に崩れてしまっていた。しかし、迎えに来た道長から「兄上は変われます」と励まされる様子が描かれた。
道長からの言葉が「彼の中で大きなきっかけになった」と玉置は言う。これまでは父の命により、さまざまな策略の「汚れ役」を担ってきた道兼。
「その汚れ役が、今までの言葉通りの意味ではなく、例えば兼家がずっと言ってきた『この家を守る』のように、藤原家のために何かをなしていくことに、少しずつシフトしていきました。これはもう想像でしかないですけど、もしかしたら道兼はこの先の道長の未来に対しての汚れ役を担っていくっていうような、自分の出世とか欲を解消するためではなく、誰かのために汚れ役をちゃんと担っていくようになっていったのかな、と思いますね」
道兼の心境に思いをはせると、台本上は「笑いながら」死を迎えるように書かれていた。
「自分に対しての嘲笑ではなく、ある種の虚しさもあります。死の直前に道長が一緒にいてくれるんですけど、心を開いて寄り添ってもらった結果、彼がそばにいてくれることへの喜びとか、それまで彼に犯してきたことに対しての申し訳なさとか、いろんなものが入り混じった笑いだったという気がします」
道長とのラストシーンは台本と異なる演出
そんな道兼は、悲田院に行ったことが原因で疫病にかかってしまっていた。その後、見舞いに来た道長とのラストシーンは台本と異なる演出だったと撮影秘話を明かす。
「台本上は道長が見舞いに来ても、道兼が『近づくな。俺は疫病だ』と御簾(みす)越しに会話をしてそのまま去っていく流れでした。でも、佑くんが『いや、道長は入っていくよ。御簾の中に入って兄に寄り添うよ』と演出サイドとやりとりをしてくれたんです。道兼がゴホゴホ咳をしながらぐっと倒れ込むところを、道長がたまらず御簾を跳ねのけて入って背中をさすってくれるシーンを提案してくれました」
演出の中泉慧氏は「持ち帰って考えてみます」とリハーサル段階では確定しなかったが、本番でも柄本が「やっぱりどうしても俺は入っていきたいし、道長は寄り添うと思います」と再び提案。演出と話し合い、道長が御簾の中に入って道兼に寄り添うシーンに決まったという。その柄本の姿に、玉置は感動したとしみじみと語った。
「すごく道兼としてうれしくて、ありがたくて……。もちろん大石(静)先生が書いた台本通りにもやれるし、それをやった方がいい可能性もあったんです。でも、佑くんが提案して貫き通してくれたことと、道長として道兼に最後まで寄り添ってくれたことがうれしかったです。しかも道兼の転換期として、道長に救われたという思いがあったなかで寄り添ってくれたので、道兼の思いが一方的なものじゃないとわかった瞬間でもありました」
さらに道長がこれまで劇中で描かれた通り「自分という存在をぶらさず貫いてきた人物」だと評し、「長男とも違い、次男とも違い、そういうやつこそがちゃんと生き残ってることが、僕はこの『光る君へ』がすごく好きなところです。その道長がこれだけブレてきた兄に対して最後に寄り添ってくれたっていうのがすごい救われたんですよね」と魅力を熱弁すると、共演した柄本への思いも続けた。
「最期のシーンで佑くんが道長でよかったなと思ったし、今回共演できてよかったなと思いました。道兼の気持ちを分かってくれてありがとうとも思いましたし、いろんな思いが渦巻いたラスト、自分の死ぬシーンでした。カメラが止まった時に、自分も咳が止まらなくなっちゃったんですよ。それを佑くんがカメラ止まってるのにずっと背中をさすってくれて『つらいよね、つらいよね』と言ってくれたのを今でも覚えています。変な話ですけど、自分の役割とか道兼の死というものを全うできるなって思えて幸せでした」
第1回で主人公・まひろ(紫式部)の母を殺害した道兼の最期について、玉置は当初「ろくな死に方しねえなと思ってました」と振り返るが、「道兼なりの幸せというか、行きつく幸福なものを見つけて死んでいくんじゃないかなって気はしてたんですよ。物語を盛り上げるための小道具として死んでいくことはきっとなくて、第1回から重ねてきたいろんな所業があれど、きちんと納得のいく、意味のある幸せな死を迎えるんじゃないかな」と想像していた。
実際に描かれたラストシーンについて「そういうふうになったんじゃないかな」とうなずきながら、「共演者の皆様と、監督と、それこそ佑くんのおかげでそこに至れたなっていうのは、本当に感謝、感動だなと。なにかの取材の時にそのことを佑くん本人に言ったら『感動させてやったぜ』って言っていて、ちくしょうって思いましたけど」と感謝の言葉を続けた。