タワーマンションの多くは、豪華な共用施設をウリにしている。広く清潔でシャワー室を完備したフィットネスルーム、規模の大きなホームパーティーを開くことができるラウンジ、音響システムが充実したシアタールーム、バーチャルで名門コースのプレーが楽しめるゴルフレンジ、子どもたちを遊ばせることができるキッズルーム、プールやスパ、ライブラリースペース、中にはシガーバーが用意されているところもあるというから驚きだ。

　もちろん、こうした施設は住人であれば誰でも使用することができ、無料または相場よりも安い金額での利用が可能。恩恵にあずかっている人も少なくないことだろう。

「あの……マンションの共用施設って、自由に使っちゃいけないんですか？」

　そんな疑問を持つのは、東京都内のタワマンに住む時田公美子さん（仮名・34歳）。2年ほど前に関西から移住し、双方の親からの援助もあって、お住まいのタワマンを中古購入するに至ったという。

「平日の午後、子どもたちが学校から帰ってきてから塾や習い事に行くまでの数時間、カラオケができる部屋を借りて遊ばせています。14時～16時くらいの時間は穴場なのか空いていることが多いので、月に10回くらい利用することも。ただ先日、同じマンションにお住まいの方から『あなたたちが楽しむためだけに共用施設があるわけじゃないんだから自重しなさい』って言われてしまったんです……」

　公美子さんが住むタワマンでは、共用施設は予約が必要。ただ、空いていれば当日でも予約をすることが可能だという。

「管理規約を読み直しましたが、とくに使用回数の制限などは書いてありませんでした。コンシェルジュの方にも確認しましたが、私たちは部屋で飲食もしないので、その後に使う方から『部屋が汚い』などの文句が出ているということもないようです。これ……文句を言ってきた人のことは放っておいてもいいですか？　ちなみに、カラオケルームの使用料として1時間につき300円支払っています」

　公美子さんによると、文句を言ってきたのはそのマンションが建ったときから入居している女性とのこと。相手に対し何かをしてしまった記憶はなく、突然の攻撃にとまどっているという。

　こうした共用施設を利用するにあたり、何か制限はあるのだろうか。業界歴20年を超える中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんに話を聞いた。

「全然問題ないです。放っておいて大丈夫です。3日前までに予約しなければ利用できない、1か月に1度しか利用できない、という制限が設けられていないのであれば問題ですが、公美子さんご家族は規定にのっとり、使用料も支払って利用しているだけですから、責められるいわれはありません。

　ただ、共用施設は維持にかかる費用を管理費から捻出しているので、そうした施設を滅多に使わない人は不満を抱いている可能性もあります。でも、共用施設があることが予め分かっていてそのマンションを購入しているのですから、それこそ『使いたきゃ使えよ』ってな話なのですが、人それぞれライフスタイルが違うので『無駄』と考える人も中にはいるのでしょう」

　むしろ怖いのは、情報の漏洩だという。

「問題があるとすれば、文句を言ってきた人がどのような経緯で、公美子さん家族の利用頻度が高いことを知ったのか？　という点だと思います。コンシェルジュや管理員が漏らしているようであれば、管理会社に注意してもらった方がいいでしょう。公美子さんのお子さんのつながりを通じて知ったようであれば、どうしようもありませんが。

　なお、何度も文句を言われるようであれば、管理組合に訴えるのもアリです。その際は、スマホで録音するなど証拠を集めておくといいですね」

　共用施設は維持費がかかることから、住人の意向で廃止する動きも出ているという。使えるものは、使えるときに、しっかり使っておく。これが賢い選択かもしれない。

□姉帯裕樹（あねたい・ひろき）「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。