タワマン部屋で“接客業” 不特定多数の人が頻繁に来客…防犯への不安、対応策は?
オートロックのエントランス、カードキーをかざすことで該当階まで上がることができるエレベーター、コンシェルジュによる来館者のチェック――。高級感をウリにしたタワーマンションは、住人の安全を守るため最新のセキュリティーシステムにより守られている。しかし、すべてのタワマンにおいて厳重なセキュリティーが敷かれているわけではない。中には「オートロックのみ」という建物も多く、タワマンでの窃盗事件が多発しているのが現状だ。
静かに訪れ、静かに去っていく来客「ゾッとしてしまいます」
オートロックのエントランス、カードキーをかざすことで該当階まで上がることができるエレベーター、コンシェルジュによる来館者のチェック――。高級感をウリにしたタワーマンションは、住人の安全を守るため最新のセキュリティーシステムにより守られている。しかし、すべてのタワマンにおいて厳重なセキュリティーが敷かれているわけではない。中には「オートロックのみ」という建物も多く、タワマンでの窃盗事件が多発しているのが現状だ。
今回、悩みを語ってくれたのは、横浜市のタワマンに住む田村綾音さん(仮名・45歳)。現在の部屋に引っ越してまだ日が浅いが、タワマン暮らしに憧れ、貯金をはたいて移り住んだという。
「私が住んでいるのと同じフロアの住人が、どうやら部屋で仕事をなさっているようで、早いときには朝9時ごろから夜9時過ぎごろまで多数の来客があります。30分~1時間おきくらいに人が来るので何事かと思っていたのですが、どうやら部屋で個人ピラティスのようなものをやっているようなのです。騒音が気になるとかではないので、これまで何も言えずにいたのですが、知らない人がしょっちゅう廊下をウロウロしている状況に不安が拭えなくて……」
来客は静かに訪れ、静かに去っていく。誰かに迷惑をかけることもなく、顔を合わせれば会釈程度ではあるもののあいさつもするため「客層としてはそこまで悪くはないと思いたいのですが……」と綾音さんは言葉を濁す。
「それでも、不特定多数の人が当マンションを頻繁に出入りしていることを考えると、ゾッとしてしまいます。せっかく楽しみにしていたタワマン暮らしが、憂鬱になってしまいました。不特定多数の来客をやめてもらうことはできるのでしょうか。それとも、こちらか苦情を呈した方が早いのでしょうか」
対応は管理規約次第「個人的に文句を言うのは悪手」
2014年には犯人がタワマンの郵便受けから合鍵を見つけて侵入し、約200万円に及ぶ指輪やブランド品を盗む事件が発生。16年には、犯人がタワマン屋上からロープを使って最上階に侵入し、現金3500万円あまりを盗むという事件もあった。富裕層が住むタワマンは犯罪者から常に狙われている。そもそも郵便受けやエレベーターを使用するためにはオートロックなどのセキュリティーを突破しなければならないはずだが……。
「危機管理意識が薄い住人からロックナンバーが漏れたり、住人が出入りする際に紛れて入り込むなど、セキュリティーの盲点を突くことは容易なことなんですよ」
20年以上に渡って不動産業界を見続けてきた中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんは、こう語る。宅配業者を装うなど、空き巣でありながらエントランスから堂々と侵入する例も後を絶たないというから驚きだ。
「不特定多数の方が出入りするというのは、確かに不安要素になることでしょう。まずは管理規約を確認してみてはいかがでしょうか。マンションによっては、民泊など人の出入りが多い業種を禁止している場合があります。もしもそうしたルールが無い場合は、新たに規約を追加してもらうしかありません。マンションの管理組合に働きかけてみてください。
個人的に文句を言うのは悪手だと思いす。たとえ規約に記されていたとしても、トラブルの元になりかねないので必ず管理組合を通すようにしましょう」
どんなに素晴らしいセキュリティーに守られていたとしても、安全性が担保されるかどうかはそこに住む住人の意識次第ということ。タワマン選びの際は、住人の質や周辺環境についても十分に調べることをおすすめする。
□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。