ヒコロヒーの生歌披露に涙を流すファン 刊行記念トークショーは一体感ある贅沢な空間に
ヒコロヒー初の短編恋愛小説集『黙って喋って』の刊行記念トークショーがこのほど、東京・恵比寿の「TimeOut Cafe & Diner」で行われた。ミュージシャンの奇妙礼太郎も参加し、まるでセッションのようなトークと歌で温かい空間を作り上げた。
『黙って喋って』の刊行記念トークショー
ヒコロヒー初の短編恋愛小説集『黙って喋って』の刊行記念トークショーがこのほど、東京・恵比寿の「TimeOut Cafe & Diner」で行われた。ミュージシャンの奇妙礼太郎も参加し、まるでセッションのようなトークと歌で温かい空間を作り上げた。
午後4時30分スタートの第1部と午後7時開始の第2部の2部構成で開催。1部開催の時間の会場付近はビジュアル系ロックバンドのライブと重なり、それぞれのファンがごった返す中、80人の観客が会場にたどり着いた。
さまざまな年齢層、男女比は半々。薄暗いムードのある店内でお酒片手にほろ酔いしながらヒコロヒーの登場を待つ。午後4時33分、ヒコロヒーがファンの前に姿を現した。
約3年前にヒコロヒーが敢行した「きれはし」のイベントでもゲストに登場し、楽曲『HOPE feat. ヒコロヒー』で共演した奇妙への感謝からスタート。軽快なトークで笑いを誘いつつ、舞台に招き入れた。
奇妙が、『黙って喋って』のとあるストーリーに音をつけた曲をぜいたくに披露し、トークテーマは今回の本の話題へ。
ヒコロヒーは「書き込みながら読んでくださったじゃないですか」と奇妙が本の中に傍線を引き、登場人物らに対するツッコミや感じたことを書き込んでいたことを明かす。
本に全く関係のない日記も書き込んでいるといい、「スーパーに行ってささみチーズフライを買ってきた。冷蔵庫から冷えたビールを出して飲む。マスタードをつけて。(最近手に入れた布団乾燥機。割とやかましい)」など、日常が垣間見える温かいトークで和やかな時間が流れた。
質問コーナーはファンとの距離が一気に縮まる時間に
開始から30分。ふと時間を見たヒコロヒーは「もう、めっちゃ時間経ってるやん」と大焦り。奇妙が「6時までです」とボソッとツッコむと「あと50分ちょっとありましたね」と答え、会場は笑いに包まれた。
テーマはガラリと変わる。ヒコロヒーが「ここらでひとつ、お客さんからの何かに答えようのコーナー」と質問コーナーの開始を宣言。「そんなこっち見てるだけじゃダメですよ。巻きこんでいきますけど……。ちょっと一気に緊張するのやめて」と会場の空気を察したのか、苦笑い。「意思表示の上コンセンサスを取って、うかがいますから」と言いつつ質問コーナーへ。
真っ先に手を挙げた女性がいた。質問はまさかの「前髪を伸ばしていますか?」。これにヒコロヒーは「威勢がいいね。めっちゃどうでもいい質問(笑)。なんでもいいて言ったもんね。前髪は伸ばしてい……ます!」と回答し、会場からは拍手が起きた。
2人目の質問者は20代の女性。京都からきたことが明かされると会場は拍手。ヒコロヒーも「京都から!? 根性あるね! ひとりで来たん? やるねぇ!」と大興奮だった。
京都在住20代女性の質問は「最近食べた一番おいしいもの」について。ヒコロヒーは「結局腹がどれだけ空いてるか、みたいな。東京で食べるフレンチよりも山とか登って、ずっとひもじくて食うおにぎりがうまい。その理論ですよね」と回答。これには横で聞いていた奇妙は「答える気ない。京都から頑張ってきたのに」と失笑していた。
最終的に京都からきたファンに会場近くの恵比寿のおすすめスポットを紹介する流れになる。奇妙は恵比寿横丁をあげ、その理由を「あそこに行くと全員が全員のことを品定めしている。なんか居心地の悪さを体感するのもいいんじゃないかと」と説明し会場は笑いに包まれた。
ここでヒコロヒーも恵比寿横丁の思い出話を披露。同じ事務所の女性芸人・紺野ぶるまと訪れたという。紺野いわく恵比寿横丁は「全員にお酒を飲ませてもらえて奢ってくれる」場所だったが、「そんな竜宮城みたいな素晴らしいところがあるのかと思って、2人で行ったら、誰ひとり奢ってくれなくてむちゃくちゃ金払って。ぜひ東京ならではの居心地の悪さ体験してください」と後押しした。
奇妙礼太郎の即興曲にヒコロヒーもファンも酔いしれる
ファンとの質問コーナーが終わると、楽曲『HOPE feat. ヒコロヒー』を奇妙と2人で生歌唱。直前までトークで笑いを誘っていた2人が全く別の表情になる。優しい音にファンたちは体を揺らしながら酔いしれていた。
生歌唱が終わると、3年前に行われた「きれはし」の敢行イベントの話に触れ、ヒコロヒーのひごろの思いを込めた詞に奇妙が即興で音をつけた“お焚き上げ”の曲が披露された。
日頃の思いが綺麗な歌として昇華されたヒコロヒーは満足気。なんでも即興できてしまう奇妙の才能に感服し「こういう才能あったら毎日楽しくないですか? 最高じゃないですか。例えば文字を読んで、そこの(会場に設置されているドリンクメニュー)生ビール、コロナ、赤ワインとかでも……」と曲にできるのか聞こうとすると奇妙がすかさずギターを奏で始める。
店内に書かれたドリンクメニューが愉快な音に乗って一瞬で歌になる。最初は驚いていたファンも自然と手拍子で合わせ、会場全体でセッションをしているような時間となった。
いよいよラストを迎える。ヒコロヒーが「本当に聴いてて、いつも『大丈夫だよ』とか『いつかすてきなことがあるよ』というこの歌に助けられていた曲でございます。今日は僭越ながらヒコロヒーも一緒に歌わせていただきます」と「オー・シャンゼリゼ」(奇妙礼太郎)の曲を紹介。自身も力をもらったという「いつも何か すてきなことが あなたを待つよ シャンゼリゼ」などの歌詞と歌声に会場には涙ぐむファンもいた。
ヒコロヒーと奇妙はたくさんの拍手に見送られ、会場を後に。いわゆるトークライブとは別次元の、約80人のファンと作り上げた一体感のある贅沢なイベントとなった。