飯伏幸太がデビュー16年 輝きを増すゴールデンスターの裏に「二人の飯伏」
レスラー人生16周年の「ゴールデンスター」飯伏幸太が、自己流ファイトに磨きをかけ、新日本プロレスの頂点を狙う。
7月1日にプロレスデビュー16年 柴田惣一氏が記念寄稿
レスラー人生16周年の「ゴールデンスター」飯伏幸太が、自己流ファイトに磨きをかけ、新日本プロレスの頂点を狙う。
内藤哲也、オカダ・カズチカ、棚橋弘至とともに新日本プロレスのトップ集団の一角を占める「ゴールデンスター」飯伏幸太。プロレス生活16周年を迎えた7月1日、デビュー記念日に「NEW JAPAN CUP2020」2回戦でタイチとベスト8入りを争った。
無観客試合の会場に飯伏の放つ華麗で鋭いキックの打撃技が轟く。ロー、ミドル、ハイキック……タイチの肉体に食い込む度に、重く鈍い音が響く。体のどこに命中するかで、微妙に音が違うことに、気づかされた。
セコンドの介入もあり、タイチに敗れた飯伏だが、キックの破壊力を改めて見せつけた。そのファイトは「天才」の異名がふさわしい。実際、彼のファイトは閃きと輝きでまぶしいほど。幼少のころから、プロレス愛に目覚め、友だちを実験台に技を試し打ち。お菓子やおもちゃと引き換えに、ジャーマンスープレックスやバックドロップで投げていたという。
「危険度が増す技には、お返しの特典も豪華になる。危ない場面はよくあったけど、大ケガをさせたことはない」と、アゴを突き出した。得意げに胸を張られても何だが、自己流ファイトは長年の蓄積なのだ。
自身の肉体を守るための受け身も、教科書通りとはいかない。「先輩たちに教わってやってみると、返って体が痛くなってしまう」「もう、開き直り。自分のやり方で押し通している」と、プロレスごっこから育った天才レスラーは、今や日本一の団体で頂点に王手をかけている。
マイペースを私生活でも貫いてきた。プロレスでは先人たちのDVDなどもチェックし研究熱心だが、リング外のこととなると他人にはあまり興味がない様子。オフにはもっぱらゲームに没頭している。
かつては食生活にも関心なし。コーラをガブ飲みしていたが、現在は栄養面にも注意し、鍛え上げた肉体美を誇る。
「試合中も、もう一人の自分がいる」と、またまた飯伏節。ファイトに熱くなって勝利を目指すレスラーの自分と、冷静に分析するもう一人の自分が存在している。ファンの人たちの目には、どう映っているんだろうか? プロ意識も強い。
この「二人の飯伏」は、良く話し合いをする。2016年に個人事務所を立ち上げたときに「飯伏プロレス研究所」と名付けたのも自然な流れだった。
新日本プロレスも数を絞って有観客試合を復活させる。飯伏もファンの来場を誰よりも待ち望んでいる。ゴールデンスターはキラキラと輝き続けて行く。