萩原聖人が「年に1回は舞台出演したい」と語る理由 佐藤隆太主演『GOOD』は「今やる意味のある作品」
俳優の萩原聖人(52)が舞台「『GOOD』-善き人-」(4月6日~21日、世田谷パブリックシアター、4月27日~28日兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、演出・長塚圭史)に出演する。1930年代のドイツを舞台に、意図せずヒトラーに気に入られたドイツ人大学教授(佐藤隆太)がユダヤ人の親友(萩原)を裏切るというストーリー。萩原にとって、舞台とは?
演出・長塚圭史氏と初タッグ「いつかご一緒できればと思っていた」
俳優の萩原聖人(52)が舞台「『GOOD』-善き人-」(4月6日~21日、世田谷パブリックシアター、4月27日~28日兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、演出・長塚圭史)に出演する。1930年代のドイツを舞台に、意図せずヒトラーに気に入られたドイツ人大学教授(佐藤隆太)がユダヤ人の親友(萩原)を裏切るというストーリー。萩原にとって、舞台とは?(取材・文=平辻哲也)
映画、ドラマを中心に、声優・ナレーションでも活躍する萩原だが、デビュー以来、舞台にもコンスタントに出演。昨今ではケラリーノ・サンドロヴィッチ作品の常連にもなっている。
「舞台は大好きです。去年はできなかったのですが、年に1回はやりたいと思っているんです。ただ決まるのが早いので、たくさんはできない。だから、何をやるか、誰とやるかが大事になってくる。1、2か月、作品と向き合うので、選ぶ時は慎重になります。今回も悩んで決めました」
本作はローレンス・オリヴィエ賞ベストリバイバル賞をはじめ4部門ノミネートされたイギリス演劇界の話題作。善良で知的な大学教授ハルダー(佐藤)が意図せずヒトラーに気に入られてしまい、自らが生き残るために、ユダヤ人精神科医の親友モーリス(萩原)を裏切る……。主演の佐藤とはテレビ朝日系ドラマ『光る壁画』(2011年)でも共演。演出の長塚氏とは初タッグとなる。
「佐藤隆太君と舞台でガッツリ向き合えるのは楽しみだったし、長塚さんとはいつかご一緒できる機会があればと思っていました。20年前に長塚さんが脚色された『夜叉ヶ池』に出演させていただいたことはあったのですが、これだけ深くコミュニケーションを取るのは初めて。彼自身も俳優をやっているので、奥深くまで読み解こうとしてくれる。悩んでいるところをビビットに演出してくださる感じがします。長塚さんはなるべくセリフを変えずにやっていこうとしているので、僕も自分なりに計算して、そこにトライしています」
テーマの難しさもあり、セリフ量も多い上、翻訳劇ならではの独特な言い回しもある。
「佐藤君の量は半端ない。だから、僕が大変だと口が裂けても言えないですね。今は公演まで間に合うかと恐怖や不安と向き合っていると思いますが、やり遂げた時には、『佐藤隆太すごかったね』と言われる作品になるはずです」
舞台の良さは、映像世界よりも長く、深く作品世界に没頭できることだという。
「こんなに考えることが多いのは、久しぶりですね。長いセリフを覚えないといけないというのはありますが、考えるのはその先です。この作品には、悩める人たちが多いので、僕らも悩まなきゃという感覚があります。体力的にもメンタル的にも負荷が大きいですね」
もう一つの挑戦は、音楽だ。ハルダーの妄想では、幻の楽団が登場し、状況に合わせた音楽を演奏し、演者は歌を披露する。
「僕らもふと頭の中で曲が流れるということがあるじゃないですか。それって、無意識の中で行われることだと思うんです。その無意識というのも作品の一つのテーマにもなっています。舞台上では生の楽団がいて演奏するというのも初めての経験で、楽しみにしています」
時代が大きく変動する時に、人はどこまで善良でいられるかを問いかける骨太な内容。そのテーマの大きさにはひるんだこともあったが、通し稽古を迎えて、手応えも感じている。
「今だからこそやる意味がある作品になると思います。日本人に理解してもらうのは正直難しい。テーマも含めて、大きなハードルだと思いますが、みんなで乗り越えましょうとやっています。佐藤君も役にピッタリで、すごく信頼感があります。いいカンパニーになっているなと思います」。自身も悩み抜いたという翻訳劇で、どんな演技を見せてくれるか。
□萩原聖人(はぎわら・まさと)神奈川県出身。1987年に俳優デビュー。93年、『学校』、『教祖誕生』、『月はどっちに出ている』で日本アカデミー賞優秀新人俳優賞と話題賞(俳優部門)、95年、『マークスの山』、97年には『CURE』で同賞優秀助演男優賞ほか数々の賞を受賞。以降も映画、ドラマ、舞台、ナレーションなど幅広く活躍している。近年の主な出演作に、映画『Fukushima 50』(20)、『島守の塔』『今夜、世界からこの恋が消えても』『餓鬼が笑う』(22)、『君は放課後インソムニア』(23)、ドラマ『トッカイ~不良債権特別回収部~』(21/WOWOW)、『新聞記者』(22/Netflix)、『TOKYO VICE』(22/WOWOW)、『神の子はつぶやく』(23/NHK)、24年は『牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者』(TOKYO MX・BS日テレ)、『厨房のありす』(NTV)、舞台では『魔術』(16)、ナイロン100℃ 45thSESSION『百年の秘密』、『7Days Judgement-死神の精度-』(18)、KERA・MAP#010『しびれ雲』(22)などがある。