指定時間に不在→「ドライバーの気持ち考えろや」 ネットで賛否…当事者の考え「無料サービスには限界」
今年4月からトラックドライバーの時間外労働が制限、長時間労働の是正が期待される一方で、「2024年問題」として物流への影響も懸念されている。宅配業界の現場では今、何が起きているのか。SNS上で宅配業界のリアルな内情を忖度ナシで発信する、宅配ドライバー歴15年のひろい(@hiroyzero)さんに話を聞いた。
長時間労働の是正が期待される一方で、物流への影響も懸念される「2024年問題」
今年4月からトラックドライバーの時間外労働が制限、長時間労働の是正が期待される一方で、「2024年問題」として物流への影響も懸念されている。宅配業界の現場では今、何が起きているのか。SNS上で宅配業界のリアルな内情を忖度ナシで発信する、宅配ドライバー歴15年のひろい(@hiroyzero)さんに話を聞いた。
「『せっかく午前中に指定したのに11時30分になっても全然くる気配がないから待ちきれなくて出かけたんだけど家に帰ってきたらポストに11時59分の不在票が入っていてマジでムカついたよねw』という何とも胸の痛くなるような書き込みを目にしました。宅配ドライバーとしてひとつだけ言わせていただけるのであれば、なんとか午前中の指定に間に合うように息を切らしてダッシュでお客様のお宅に伺ったのにまさかの不在を喰らった時のドライバーの気持ちも少しは考えろやボケです」
宅配利用者が午前中の指定時間を待ちきれず外出したところ、午前11時59分と書かれた不在票が入っていたという書き込み。今月1日、ひろいさんが身勝手な宅配利用者に対して、不満の思いをつづった投稿は、7000件を超えるリポスト、5.3万件のいいねを記録するなど大きな話題を呼んだ。
「11時59分は午前ですよね」「時間指定は無料でやって貰ってることなのになんでそんなに上から目線ででかい態度取れるのか」といった共感の声の一方で、「荷物受け取りのために1日しかない休みを台無しにしたくない」「午前中指定でも午後に配達された」「逆で19時から指定したのに18:50に来て不在票入れていかれたことあるんですけどそれは怒っていいやつですか?」「午前中の枠って何故あんなに長いんでしょうか 8時~12時って もう一分割してくれたら嬉しいのに」といった利用者側の本音も多く寄せられている。
ひろいさんが宅配業界の実情をSNSやブログに投稿するようになったのは4~5年前。「当時も宅配系アカウントはチラホラありましたが、どれも利用者に対して攻撃的な投稿が多く、見ていてあまり気持ちのよいものではありませんでした。もっと利用者から親しみをもっていただけるような宅配アカウントができればいいな、と思って始めました。とは言いつつやはりネガティブなネタが多くなってしまうのはどうしようもないですが、反響はおおむね肯定的なものが多いと思います。利用者の方から『タメになった』とか『知らなかった。ありがとう』という声をいただくとうれしいですね」と振り返る。
目下、宅配業界が直面しているのが輸送能力の大幅な減少が懸念される2024年問題だ。ひろいさんも「素直には喜べません」と当事者としての思いを明かす。
「労働時間が制限されるため、収入が減る可能性が極めて高い。実際には今年度の給料をもらって見ないと分かりませんが、4月より残業時間は大幅にカットされる計画で稼働が組まれています。我々としては収入が減ることが一番怖いので、逆に残業したいぐらいなのですが、会社がそれを許してはくれないという状況です。あまりにも収入が減るようであれば転職を考える者もある程度は出てくると思います。それなりに給料がもらえるからこそ続けていられる仕事ではありますので」
宅配業界の今後については「やはり置き配をスタンダードにしていくべきかと思います。アメリカのように基本は置き配、もし対面で受け取りたければ有料。再配達や時間指定ももちろん有料といった感じで、現存の無料サービスはどんどん有料にしていくべきかと。無料サービスだからこそ、無責任な時間指定や再配達を依頼してくるお客様が多いというのは否定できません。ドライバー不足や働き方改革の影響で現状のサービスを無料で続けるのには限界が近づいています。非常にセンシティブで難しい問題ですが、いずれはそういう日が来ると思います」とひろいさん。
トラックドライバーの働き方改革が叫ばれる時代、「いつでも無料でモノが届く」という日本の物流の“当たり前”が終わりを迎える日も近いかもしれない。