AKB48、卒業ラッシュの裏で“若返り” 新世代が約半数に「より多くの人に知ってほしい」

アイドルグループ『AKB48』が、“若返り”で生まれ変わろうとしている。カギを握るのは、“研究生組”だ。このほど、2022年5月に加入した17期生が、10人全員で正規メンバーに昇格することが決定した。グループは異例の卒業ラッシュが続き、一見するとピンチに思えるが、その裏で、未来を担う研究生たちが着実に成長。19期研究生の加入も決まり、新世代の17~19期生はメンバー全体の約半数を占める勢力になった。アイドル戦国時代の過酷さが増す中で、昨年12月に結成18周年を迎え、若さを原動力とする“下剋上”。17期生の中核を担う平田侑希、布袋百椛、山崎空の3人に、これからの決意を聞いた。

『AKB48』17期生の(左から)布袋百椛、平田侑希、山崎空が抱負を語った【写真:山口比佐夫】
『AKB48』17期生の(左から)布袋百椛、平田侑希、山崎空が抱負を語った【写真:山口比佐夫】

新世代17~19期生は合計23人…劇場リニューアルなど矢継ぎ早の新展開

 アイドルグループ『AKB48』が、“若返り”で生まれ変わろうとしている。カギを握るのは、“研究生組”だ。このほど、2022年5月に加入した17期生が、10人全員で正規メンバーに昇格することが決定した。グループは異例の卒業ラッシュが続き、一見するとピンチに思えるが、その裏で、未来を担う研究生たちが着実に成長。19期研究生の加入も決まり、新世代の17~19期生はメンバー全体の約半数を占める勢力になった。アイドル戦国時代の過酷さが増す中で、昨年12月に結成18周年を迎え、若さを原動力とする“下剋上”。17期生の中核を担う平田侑希、布袋百椛、山崎空の3人に、これからの決意を聞いた。(取材・文=吉原知也)

「今のAKB48ってすごいんだぞ。皆さんにそう思っていただけるよう頑張りたいです」。19歳の布袋はキリっとした表情を浮かべながら語る。

 16~20歳で構成される17期生は、16期生オーディションから約5年ぶりに加わった新世代のメンバー。平田、布袋、山崎のほか、佐藤綺星、水島美結、橋本恵理子、正鋳真優、太田有紀、畠山希美、小濱心音が名を連ねる。歌やダンスのいろはを学び、劇場公演の舞台を重ね、テレビ番組や配信コンテンツへの出演を経験してきた。平田や山崎、佐藤ら、研究生時代から早くもシングル表題曲選抜入りの実績を誇るメンバーもいる。

 飛躍は続き、演技の世界でまた1つの大きなチャレンジに成功。17期生全員が出演するドラマ『ミッドナイトファイナルアプローチ』(山梨放送、TVerで配信)が放送となった。平田演じる主人公の女子大学生アイドルが、卒業をするかどうか進路に悩むものの、不思議にいざなわれた空港で、数々の特別な体験をすることで、自分の未来を決心するというストーリーだ。山崎は主人公の幼なじみ、布袋は空港のグランドスタッフ役を熱演している。

 深夜の空港を貸し切ってのスケールの大きな撮影が行われた。大役を果たした平田にとって、本格的な演技は初めての経験。「私は感情表現が苦手なタイプなのですが、監督さんからたくさん指示をいただき、自分なりに向き合って演技に取り組みました。歌や踊りとは異なる、表情を通しての表現も勉強になりました。終わってみれば、自分の思っている以上に表現することができたと思っています」と自信を込める。

 山崎は過去2回、AKB48のドラマ撮影の経験があり、「これまでは犯人やしゃべらない子といった不思議な役が多かったのですが(笑)、今回は等身大の役柄を演じることができました。私の中で『表現力』を大事なテーマにしているので、ドラマの経験で学びながら生かすことができました」と笑顔で話す。ドラマ初挑戦の布袋は、監修を担当したANAの現役スタッフから直接、指導を受けたことが大きな学びになった。「長いせりふが多かったので、かまないようにと必死でした。ANAのスタッフさんから言葉遣いや正しい姿勢を教えていただきました。左手を前にして、右足を後ろに引く立ち方など、参考になることばかりでした」。おもてなしのプロから教わった所作は、ステージのパフォーマンスにもしっかりと生かすつもりだ。

 一方で、グループには近年、大きな変化が訪れている。2023年から怒涛(どとう)の卒業ラッシュが続いているのだ。07年に15歳で3期生として加入し代表的存在として知られる柏木由紀を含めて、その数は44人に上る。

 グループの行く末を心配する声が上がり、「○○人目の卒業」がネットニュースのトップになる。ただ、メンバー構成をひも解いてみると、地ならしが整えられていることが見えてくる。

 AKB48は3月17日に行われたコンサートで、17期生の昇格を発表。さらに、18期研究生8人が控えており、平均年齢17歳・最年少13歳の19期研究生5人の加入が決まったのも朗報だ。現状のメンバーは、人気・実力トップの村山彩希ら13期生を筆頭に、51人(卒業公演前のメンバー、マレーシア・クアラルンプールの姉妹グループ『KLP48』に移籍するメンバーを含む)となっている。17~19期生は合計23人で、実質的に半数を占めるのだ。運営サイドとしても研究生たちを中長期的な視野で計画的に鍛えてきたといい、既存の正規メンバーとのさらなる切磋琢磨がグループ力向上のポイントになりそうだ。

あこがれの柏木由紀の存在が大きな糧

 昇格は「まだ実感がないです」と3人は口をそろえる。こうした中で、後輩がまた増えることになり、自覚も芽生えてきた。山崎は「今までは先輩方の背中を見て、ある意味甘えて活動してきました。後輩たちがどんどん入ってくる中で、私たちが中心にならないと。その気持ちが強まりました。とはいえ、17期生の1人1人のパフォーマンス力、人間力はまだまだ足りないので、今後しっかり伸ばしていきたいです」と謙虚に話す。

 レジェンドの存在が飛躍の糧になった。2年前の第17期生オーディション合格者のお披露目会に駆け付けてくれた柏木。この3月のコンサートでも、17期生のパフォーマンスを優しく見守ってくれた。17期生メンバーたちに「頑張ってね」と鼓舞する声をかけてくれたといい、これからも尊敬してやまない“アイドル・柏木由紀”の背中を追いかけていくつもりだ。

 AKB48の命運を握っていると言っても過言ではない17期生たち。キュートな笑顔の中に秘めた野心がある。山崎は「今後は私たちと研究生で選抜を独占しちゃうぐらいの勢いで、今のAKB48をより多くの人に知ってほしいです」と力を込める。

 東京・秋葉原にあるAKB48劇場が、全面リニューアルされることも転換点の1つだ。老朽化に伴うもので、今年9月から約3か月かけて改装し、“聖地”と呼べる拠点も一新となる。

 それに、17期生は7月から、全国5か所を回る全国ツアーを行うことも明かされたばかり。矢継ぎ早の新展開。期待とプレッシャーが入り混じる。

 布袋が「ツアーを通して、たくさんの方、いろいろな地域の皆さんに会いに行ける。すごく楽しみです」と目を輝かせれば、平田は「もっともっと選抜に入っていきたいです。それに、全国ツアーをやらせていただけるので期待に応えたいですし、17~19期生だけでもこれだけできるんだぞ、というところを見せていきたいです」と声を弾ませる。

 計り知れないポテンシャル。しっかりと発揮できなければ、再びトップの座はつかめない。4年間遠ざかっているNHK紅白歌合戦への出場も至上命題だ。新生AKB48の真価が問われるのはこれからだ。

 ※山崎空の「崎」の正式表記はたつさき

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