“推し”を応援する韓国発祥の広告文化、日本でも急増 「日プ女子」で拡大「立ち上げから倍以上に」
韓国発祥の“推し”を応援する文化「センイル広告」が、日本でもはやり始めている。センイルとは、韓国語で「誕生日」を意味する。韓国ではファンが個人的に、自分の好きなアーティストやアイドルの誕生日をお祝いする広告やイベントを応援する広告を出す習慣がある。広告内容は街頭ビジョン、電車、バスなどの交通広告、バス停やトラックのアド広告、SNS広告、カップホルダーなど多岐に渡る。では、どうすれば同広告を出せるのか。
ファンが好きなアーティストの広告を出す習慣
韓国発祥の“推し”を応援する文化「センイル広告」が、日本でもはやり始めている。センイルとは、韓国語で「誕生日」を意味する。韓国ではファンが個人的に、自分の好きなアーティストやアイドルの誕生日をお祝いする広告やイベントを応援する広告を出す習慣がある。広告内容は街頭ビジョン、電車、バスなどの交通広告、バス停やトラックのアド広告、SNS広告、カップホルダーなど多岐に渡る。では、どうすれば同広告を出せるのか。今回、センイル広告を手掛けるセンイルJAPAN(運営会社:株式会社IW)の代表・増田雅人さんと、スタッフで韓国エンタメ文化に詳しい宮原日奈さんに話を聞いた。(取材・構成=コティマム)
――センイル広告について教えてください。
増田さん「センイル広告とは、韓国発祥の特殊な広告文化のことです。通常は、街頭ビジョンなどに企業による営利目的の広告が入ります。センイル広告の場合は、ファンの人が『アイドルやアーティスト、YouTuberら“自分の推し”を応援・お祝いしたい』という思いから、応援目的で広告を出稿します。2016年1月に韓国で始まった国民がアイドルをプロデュースするオーディション番組『Produce101』が、センイル広告発祥のきっかけと言われています」
――オーディション番組がきっかけなんですね。
増田さん「日本でも日プ女子が放送されていましたが(※)、オーディション番組は国民の投票によってデビューするアイドルが決まります。それが影響して応援文化が生まれ、韓国の地下鉄やバス停などに練習生の応援広告が出始めたのがきっかけと言われています。その後、練習生だけでなく、既に活躍しているBTSなど有名なアーティストの応援広告に広がっていきました」
(※)2023年10月から12月まで放送のガールズグループオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS(以下:日プ女子)』で、11人組のME:I(ミーアイ)が誕生した。期間中、練習生を応援するセンイル広告が出されていた。
――個人が広告を出すということで、画像や動画はどうするのでしょうか。
増田さん「韓国の場合、権利元へ必ず広告使用の許諾申請は行わなければいけませんが、応援目的で使用されるのであれば、事務所側も一般人による広告を黙認しています。事務所も自社アーティストを応援してもらえるのはうれしいですからね。地下鉄広告などはかなりお金がかかるため、それをファンの方達が自発的に出してくれるのはありがたいことではないでしょうか」
――増田さんの会社では、センイル広告を出したいファンの方をサポートされていますが、どういう経緯で始めたのでしょうか。
増田さん「最初は弊社に元々いた韓国人スタッフの友人が、『日本でセンイル広告を出したいが、手伝ってくれないか』と言ったことがきっかけでした。僕も最初は何のことか分からなかったんです(笑)。どうして、ファンがアーティストを応援するために多額のお金を払って広告を出すのか、正直、全く理解できなかった。でも、その韓国人スタッフの友人の広告サポートのために、2018年にBTSのセンイル広告を新宿の街頭ビジョンに出した時、ファンの方からも媒体の方からも、すごく感謝されたんですね。それから、『日本でもこういうことができる』と知った方々から問い合わせをいただくようになり、2年ほど経った20年には月に20件以上の広告を出すようになりました。今は立ち上げた頃より、お問い合せやサポート件数も倍以上になっています」
“推し”に気持ちを伝える場
――日本のファンが、韓国のアイドルやアーティストの広告を日本で出すのですか。
増田さん「そうですね。弊社では日本だけでなく、韓国や米国などの街頭ビジョンやバス停などにも広告が出せます。申し込みはやはりK-POPアイドルや韓国のアーティストの応援が多いです。日本人アーティストの場合は、センイル広告の文化にまだなじみがないためか、権利元の許諾関係が厳しいところが多いため、一部の日本人アーティストに対してのみ出稿がある状況です。ただ、オーディション関係では日本人を対象にしたセンイル広告の申し込みも多いです」
――日プ女子の放送で影響は出ましたか。
増田さん「日プ女子が始まってから、昨年10~12月のお問い合せは増えました。街頭ビジョンはないですが、SNS広告や駅に出す交通広告の申込みがありました」
宮原さん「日プ女子に限らず、通常オーディション関係では練習生応援のお問い合わせが増えます。普段は男の子の練習生の場合は女性ファン、女の子の練習生の場合は男性ファンが多いです。でも、日プ女子の申込みは、ほとんど女性ファンからでした。計20件以上広告を出していて、すごく盛り上がりました。東京駅や渋谷駅、新宿駅、大阪の難波駅など、人通りが多くみんなが見やすい交通広告の申し込みが多いです。駅構内の改札近辺などに応援ポスターが貼られます。インタグラムやX上で展開するSNS広告も手軽に出せるので、申し込みが多かったですね」
――どの練習生の応援広告が多かったでしょうか。
宮原さん「問い合わせや申し込みがあったのは、高橋妃那さん、八田芽奈さん、安藤千陽さん、加藤好実さん、谷聖彩さん、日高葉月さん、山口愛咲さん、秋山愛さん、水上凜巳花さん、高見文寧さん、笠原桃奈さんです。『上位の子だけ』というわけでなくバラバラで、本当にいろいろな練習生への申し込みがあり、メンバーが重なりませんでした」
――ファンがセンイル広告にハマる理由は。
増田さん「ファンはコンサートやテレビ、YouTubeなどを見て、自分の推しから生きがいをもらい、推しに感謝の気持ちを持っています。でも、今までは、『その気持ちを推しに伝える場』がなかった。推しに感謝の気持ちや応援を伝える方法として、センイル広告が選ばれているのだと思います」
※高橋妃那、日高葉月の「高」の正式表記ははしごだか