「やっぱりこの選手はすごいなと」 レフェリー歴30年、最も近くで見続けてきた男が絶賛するレスラーとは

レフェリー生活30周年を迎える松井幸則は、2006年からDDTに所属。今はDDTのみならず東京女子プロレスでも活躍し、さまざまなレスラーと接してきた。その中で出会ったレスラーたちが一堂に会するのが、5月19日に大阪・錦秀会住吉区民センターで開催される『松井幸則レフェリー30周年記念大会 おもしろき四角いこの世をおもしろく』だ。すでに第1弾参戦選手が発表されているが、なぜその選手たちに声をかけたのか、レフェリー目線で語ってもらった。

現・KO-D無差別級王者の上野勇希の手を上げる【写真提供:DDTプロレスリング】
現・KO-D無差別級王者の上野勇希の手を上げる【写真提供:DDTプロレスリング】

業界に激震が走ったみちのくプロレス離脱記者会見の裏側

 レフェリー生活30周年を迎える松井幸則は、2006年からDDTに所属。今はDDTのみならず東京女子プロレスでも活躍し、さまざまなレスラーと接してきた。その中で出会ったレスラーたちが一堂に会するのが、5月19日に大阪・錦秀会住吉区民センターで開催される『松井幸則レフェリー30周年記念大会 おもしろき四角いこの世をおもしろく』だ。すでに第1弾参戦選手が発表されているが、なぜその選手たちに声をかけたのか、レフェリー目線で語ってもらった。

 2000年を跨いで、松井はWAR、みちのくプロレス、大阪プロレスに所属し、レフェリーとしての実力を確かなものにしていく。昔からファンだった天龍源一郎率いるWARにいるときに、フリー時代に呼ばれたことがあるみちのくプロレスから声がかかった。

「WARは天龍さんへの憧れで入団したものの、まだ未熟な自分には上下関係など厳しい部分が多く、退団を考えていたタイミングでみちのくから誘いがありました。そういえばあの(フリーで呼ばれた)ときは楽しかったなと思って、心は東北に行ってしまって……当時武井(正智)さんが社長で、社長室で3時間くらい留意されたんですが、みちのくに移ることにしました。それであの離脱記者会見まではみちのくにいて、その後は大阪です」

 古いファンなら承知の事件かもしれないが、大阪プロレス設立前はみちのくプロレス内でザ・グレート・サスケ(当時はSASUKE)とスペル・デルフィンとの抗争が激化。リング外の話題が持ち込まれるなどして、デルフィンが激怒。同調した選手・松井とともに、1999年1月にデルフィン一派のみちのくプロレス離脱会見をサスケの知らぬところで断行した。

「(サスケとデルフィンの)仲は悪かったですね、ものすごく。1998年12月の西日本シリーズのときには、大会後にこれからどうするかという話が行われるわけですよ。ホテルの部屋割り表を見ながら、この部屋に集まるのは危険だから外で話をしようか、とか。完全に隠密に行動して、盛岡にいるはずの僕らが東京で記者会見をしたんですよね。大阪プロレスでは旗揚げという貴重な経験ができて、バタバタでしたけど楽しかったですね」

 大阪プロレスでは「えべっさんvsくいしんぼう仮面」というお笑いプロレスの鉄板ともいうべきカードが人気を博し、松井もその一員として欠かせない存在となった。

「みちのくでもコミカルな要素のある試合はありましたけど、あそこまで振り切ったのは彼らが初めてでしたね。レフェリーとしては『楽しんでいないんだ、巻き込まれている被害者なんだ』というラインを作ることは意識しました。そうしないと、ただふざけているだけに見えてしまうので。でも……楽しかったですよ(笑)」

インディーマニアにはたまらない話をたくさん聞かせてくれた【写真:橋場了吾】
インディーマニアにはたまらない話をたくさん聞かせてくれた【写真:橋場了吾】

鈴木みのる、TAKESHITA、ディック東郷ら大物たちが大阪に集う

 大阪プロレスには5年ほど在籍し、退社が決まっているタイミングでたまたまDDTが大阪大会を開催。そのときに、高木三四郎から声をかけられてDDTの試合を裁くようになった。2006年3月に正式にDDTに所属し現在に至るわけだが、5月19日に大阪でレフェリー生活30周年記念試合を開催することになった。松井の人徳を伺わせる選手たちが参戦するわけだが、まず目を引くのはKONOSUKE TAKESHITA(竹下幸之介)の大阪凱旋だろう。

「僕、彼が大阪プロレスのプロレス教室時代から知っているんですよ。小学高学年だったのかな、でも体が大きくて大人のクラスにいましたね(笑)。(竹下のカードは)2パターンあるかなと思っていて、上野(勇希=DDTのKO-D無差別級王者にして竹下の同級生)やサウナカミーナ(竹下が立ち上げたユニット)や、現在のDDTの最前線である遠藤(哲哉=竹下の同期)やクリス(・ブルックス)との戦いに入ってもらいたい気持ちがある一方で、この日ならではの珍しい選手とシングルをやってもらうのがいいのかなという気持ちもあります。(竹下は)もはや日本人選手としてトップにいるんじゃないかなと思いますね」

 今、DDTで王者としてその存在感を増している上野も参戦が決定している。

「もともと持っていたものをさらけ出してきたかなと。会社のこともいろいろと考えてくれて、チャンピオンとしての立ち振る舞いや言動が板についてきたなと思います。試合に関しても、上野に任せておけば大丈夫という安心感・安定感が増しましたよね」

 プロレス王・鈴木みのるも参戦。海外参戦が増えているさなか、スケジュールがうまくあったという。そして忘れてはいけないのがディック東郷。みちのく、大阪でともに過ごした同志だ。

「高木(三四郎)さんとの東京ドームや新幹線プロレス以外はあまり接点がなかったんですが、やっぱりこの選手はすごいなと。最終的にはお客さんも、対戦相手も、そして団体全体も掌の上に乗せてしまう……でも鈴木さんが参戦することがすべてのプラスになるように仕向けていけるんですよね。(東郷には)最大級のリスペクトですね。みちのくで初めて見たときに、この選手はとんでもないと思いました。こんなに切れ味の良い技術を持った選手はいないという思いは、ずっと持っています。参戦してくれるのは本当にうれしいですね」

※錦秀会住吉区民センターは、ディック東郷がプロレス生活に一旦の区切りをつけた直前のタイミングで行われたマグニチュード岸和田とのシングルが行われた思い入れのある場所でもある

 最後に、30周年記念大会に向けての抱負を聞くと……。

「これまで僕が手掛けた大会の中で最大の人数・試合数になるので、いろいろな意味でやばいことになるとは思うのですが、僕はヘロヘロでもお客さんが楽しんでくれるのが一番だと思っていますので、ぜひ見にいらっしゃってください!」

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