江口のりこ、女優への原点は15歳の決断 進学せずうどん屋でアルバイト…神戸の映画館に通った日々

俳優の江口のりこ(43)が、CSホームドラマチャンネル開局25周年記念オリジナルドラマ『お母さんが一緒』(日曜午後10時、18日スタート)に主演する。脇から主演までこなす江口がドラマの舞台ウラ、俳優の原点を語った。

インタビューに応じた江口のりこ【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた江口のりこ【写真:ENCOUNT編集部】

中学を卒業し社会人に「よくも悪くも素直じゃないかもしれません」

 俳優の江口のりこ(43)が、CSホームドラマチャンネル開局25周年記念オリジナルドラマ『お母さんが一緒』(日曜午後10時、18日スタート)に主演する。脇から主演までこなす江口がドラマの舞台ウラ、俳優の原点を語った。(取材・文=平辻哲也)

 同ドラマは演出家・脚本家のペヤンヌマキの同名舞台を原作に、親孝行のつもりで温泉旅行に連れて行った三姉妹の騒動を描くコメディー。映画『ぐるりのこと。』の橋口亮輔監督が演出した。江口は2人の妹(内田慈、古川琴音)にコンプレックスを持っている長女、弥生を演じた。楽しいはずの旅は、ささやかなすれ違いを機に、けなしあいに変わっていくが、九州弁が柔らかな雰囲気を出している。

「弥生はトラブルメーカーでもあり、物語を導いていく役割でもあるので、いろんなことを任されている感じがありました。九州の言葉におかしみがあるように聞こえたりすることもできたので、方言で良かったと思います。リハーサルをやっていく中で、監督が自身のエピソードをお話ししてくださったり、ヒントをたくさんくださいました」

 コロナ禍以降の昨今のドラマはリハーサルがなく、いきなり本番ということも少なくない。本読み含め5日間あったリハの時間は貴重だったという。

「今は自己紹介して、現場で撮影しながらみんなで探っていく感じが多いです。それを否定するわけではないですが、今回のようにリハーサル期間がしっかりあったのはすごくいいことだと思いました。セリフをしっかり覚えて、現場で人物を演じるわけですが、その人間を見つけていくのはすごく難しいんです」

 旅館の一室をメイン舞台にした会話劇で、撮影中は息苦しさも感じたという。

「時間がない中、部屋に閉じ込められて朝から晩までずっと撮っている。撮っても、撮っても、終わらない。姉妹3人のやりとりがうまくいっているシーンもあれば、スタミナ切れになっている部分もありますが、3人で頑張ったシーンはどれも愛おしい。どのシーンにも思い出が詰まっています」

 演じる上では、自身のバックグラウンドが出てくるもの。江口自身は5人きょうだいの4番目の次女。

「私のきょうだいはベタベタしているわけではないですが、このドラマみたいに言い合ったり、我慢していることもない。あっさりしているかもしれないです」

 2002年、三池崇史監督の『桃源郷の人々』で映画デビュー。04年にタナダユキ監督の『月とチェリー』で映画主演。以降、脇役から主演まで幅広く出演してきた。

「主演といっても、セリフが多い、出動日数多いなという感じで、特別に何かすることはないです。私は19歳で劇団に入って、今もいますけれども、気づいたら43歳になっていた。やっていることが変わらない。仕事によって、『半沢直樹』のようにたくさん見てくれている人はいますが、その都度いろんな人と出会って、刺激を受け、勉強になったり、反省したりしています」

 キャリアを経ても、俳優業の難しさには変わりない。

「やればやるほどわからなくなるし、怖い。最初の頃はセリフを忘れて、舞台に出て行く夢を全然見なかったけれども、最近よく見るんです。あれ? 役者の仕事って何すればいいのかなと思ってしまう」

中学卒業後はアルバイトを転々、19歳で劇団東京乾電池のオーディション受ける

 江口は兵庫県出身。中学卒業後は高校には進学せず、映画を見て、俳優になりたいと思った。

「中学時代は陸上部で楽しかったんですが、部活動が終わってしまうと、勉強も好きじゃないので、する気もなかった。何もやることがない時にBSの映画を見て、面白いなと思ったんです。うちにはお小遣い制度がなかったから、義務教育を終えたら、働こうと思ったんです。学校の担任の先生には説得されましたが、親は『好きにしたら』という感じだったので、自分には特別な決断というわけではなかったんです」

 商店街のうどん屋を始め、アルバイトを転々としながら、神戸市の映画館通いを続け、19歳の時に劇団東京乾電池のオーディションを受ける。早くから社会に出たことは俳優生活にも影響はあったのか。

「よくも悪くも素直じゃないかもしれません。人が喜ばせようとしてくれた時に、『ちょっと待てよ』と思ってしまう。そこは、性格悪いなと自分で思ったりします。ちょっと斜めで見てしまうかもしれません。一癖ある役にはハマるかもしれないけれど、素直な役には邪魔にしかならないですよ」と笑う。

 2021年には後にシリーズ化されたテレビ東京『ソロ活女子のススメ』で民放連続ドラマ初主演。フジテレビ系木曜劇場『SUPER RICH』ではゴールデン・プライム帯ドラマの連ドラ初主演も果たした。CMにも出演し、テレビでの露出も増えてきた。

「やりたい役はあんまりなくて、今は誰と一緒にやるかが大事だなと思っています。ドラマは流れ作業的に作っていく状態もあります。そんな時にこんな共演者、スタッフさんがいるから、というのは重要になっています。今回、何よりも大事なのは監督さんだとすごく思いました。監督がいいと、作品も良くなる。橋口さんとお仕事したことで、もっと芝居がうまくなりたいと思いました」

 芝居には正解はない。だからこそ、その面白さも感じている。

「OKをもらった後でも、何かが足りないということは分かる。じゃあ、どうすれば、いいのかはすぐに答えは出ない。そんな感じで20数年間やってきたので、これは今後も変わらないと思いますね。仕事を続けながら、たまに、どこか遠くに行けたらいいかなとは思っています」

 今後は舞台『リア王』(3月8日~3月31日、東京芸術劇場 プレイハウスほか)、テレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『万博の太陽』(3月24日)、主演映画『あまろっく』(中村和宏監督、4月12日兵庫県先行公開)、主演ドラマ『ソロ活女子のススメ4』(テレビ東京、4月3日~)が控える。

□江口のりこ(えぐち・のりこ)1980年生まれ、兵庫県出身。2002年三池崇史監督『桃源郷の人々』で映画デビュー。ドラマ・CM・映画に次々と出演。2004年タナダユキ監督『月とチェリー』では本編初主演をつとめ注目を集める。ドラマ「時効警察」(EX)シリーズにレギュラー出演し個性を発揮。ベテランから新鋭監督まで多くの監督の作品に出演し活動の場を広げている。

ヘアメイク:鈴木彩
スタイリスト:清水奈緒美

『お母さんが一緒』(全5話+アナザーストーリー1話)
CSホームドラマチャンネルにて2月18日(日)スタート!毎週(日)夜10時
監督・脚本:橋口亮輔
原作:ペヤンヌマキ
出演:江口のりこ、内田慈、古川琴音、青山フォール勝ち(ネルソンズ)

ホームドラマチャンネル開局25周年を記念して企画・製作されたオリジナルドラマ。親孝行のつもりで、とある温泉宿に母親を連れてきた三姉妹。「母親のような人生だけは送りたくない」という共通の感情を抱える三姉妹の悲喜こもごもがブラックユーモアたっぷりに描かれる。

詳細はこちら
https://www.homedrama-ch.com/special/okasangaissho

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