NHK Eテレ『シャキーン！』（2008年3月～22年3月）の16代目桃太郎モモエは今、日本から飛び立とうとしている。俳優・松田杏咲（まつだ・ももえ＝21）。番組卒業後は学業に力を入れ、東京都立大法学部に一般入試で現役合格を果たした。その後、ドラマ出演を中心に活動をしながら大学のミスコンに出場してグランプリを獲得。「芝居は大好き」で活動に充実感はあるものの、英語をマスターして商社への就職もイメージしている。4月からはワーキングホリデーでオーストラリアへ。期間は1年間で自身の将来も考えていくという。（取材・文＝柳田通斉）

　全身桃色の衣装、桃色の髪…　コントで笑わせ、ロック曲調で「♪すもももももも　もものうち　ももえのももも　もものうち」と歌っていたモモエは今、大学3年生になっていた。

「中学時代はほぼオール5で学年トップクラス。高校でも頑張って共通テストでは受験科目の英語、国語、世界史で85％を取って、第1志望の東京都立大法学部に現役合格できました」

　6歳から子役を始め、モモエで番組出演していたのは中1～高1。収録で時間を取られていたが、「勉強をしていい成績を取って褒められるのが好きでした」と振り返る。

　受験勉強から解放された松田は21年9月、TikTokに「シャキーン！モモエの現在の姿」と題して画像をアップ。瞬く間に約280万回再生を記録し、ファンの間で再注目された。芸能活動も再開し、新型コロナウイルス感染が収束に向かった23年には、東京都立大のミスコン『メトロポリタンコンテスト』にエントリーした。現役の俳優だが、「他薦があった」と聞かされて決意したという。

「インスタのDMに運営の方から『他薦されています』とメッセージが入り、家族も『やってみなよ』と背中を押してくれたので出ることにしました。現役アイドルでも大学ミスコンに出ている人はいますが、私は『エントリーしたからには負けられない』という思いになりました」

　その後、インターネットでの投票が始まり、松田もライブ配信でアピールを続けた。

「いろんな人の配信を見て研究し、『辛いめんを食べ切るまで終われない』という企画もやったりしました。辛い物が苦手だからこそ、『やろう』と思いましたし、配信を続ける中で届いた『話が面白い』のコメントはうれしかったです。『芸能活動の経験が生きた』と思いました」

　数字の動きがリアルに分かるだけに緊張の日々だったが、4人のファイナリストに残って、同11月4日に開催された『みやこ祭』でグランプリを受賞。TikTokで結果報告をすると、再びバズって注目された。

　この勢いで芸能活動を本格化させる選択もあったが、松田は冷静に将来のことを考えていた。

「お芝居をすることは好き。特に上手な人とやれると本当に楽しい。でも、芸能界で成功することはそんなに簡単ではない。だからこそ、勉強は続けたい。学歴があれば職業の選択肢が広がるし、在学中にもっと自分を高めていきたい」

　考えた末に今年4月から1年間、オーストラリアでワーキングホリデーに入ることを決意した。

「昨年の秋に1か月、カナダに留学しました。それが楽しくて、『また海外で暮らして、もっと英語を話せるようになりたい』と思いました。働きたいのがカフェです。なるべくローカルな場所に行って、日本人がいないシェアハウスに入るつもりです」

　今は3年生の後期テストも終わり、旅立ちに向けてさまざまな準備を進めている。所属事務所も「海外で経験を積むことは素晴らしい」と後押しをしてくれている。

「本当にありがたいです。自分の中では『貿易の仕事をしてみたい』という思いも出てきています。とにかく現地で一生懸命やって、自分がどうしていきたいのか。芸能活動を継続するのかどうかも含め、しっかりと考えたいです」

　事務所との約束は「オーストラリアからもSNSを発信すること」。松田は将来を考えながら、南半球から「シャキーン！モモエの現在」を伝えていく。

□松田杏咲（まつだ・ももえ）　2002年5月18日、東京・八王子市生まれ。進学校の都立南平高を経て、東京都立大法学部に現役で入学。芸能活動は6歳から始め、NHK Eテレ『シャキーン！』には中1の15年から高1の19年まで出演。特技はピアノ、水泳、鼻リコーダーなど。158.5センチ。