さわやかラストで高評価の“鬱漫画”たち メインキャラの死の連続…残酷な内容の数々

多数のキャラの死亡や、残酷な展開が続く漫画は「鬱(うつ)漫画」とファンから呼ばれ、あまり読後感が良くないとされている。しかし、鬱漫画の中にも、ラストがきれいにまとまりさわやかな気持ちになれる作品もある。今回は残酷な内容ながらも、ラストがすがすがしく締めくくられた作品たちを紹介しよう。

漂流教室〔文庫版〕 1巻(楳図かずお/小学館)
漂流教室〔文庫版〕 1巻(楳図かずお/小学館)

終わりよければすべてよし? きれいな結末を迎えた作品たち

 多数のキャラの死亡や、残酷な展開が続く漫画は「鬱(うつ)漫画」とファンから呼ばれ、あまり読後感が良くないとされている。しかし、鬱漫画の中にも、ラストがきれいにまとまりさわやかな気持ちになれる作品もある。今回は残酷な内容ながらも、ラストがすがすがしく締めくくられた作品たちを紹介しよう。

(※本記事は作品の結末を語る内容のため、各作品のネタバレが含まれています)

『週刊少年サンデー』(小学館)で1972年から74年まで連載された『漂流教室』(作:楳図かずお)は、衝撃的な内容だったが、さわやかなラストを迎える作品だ。舞台は環境破壊によって荒廃した未来世界で、小学校ごと未来へタイムスリップした主人公の高松翔たちが、絶望的な状況に立ち向かいながらなんとか生き延びようとする物語である。

 人を襲う怪虫の出現やペストの蔓延、怪物と化した未来人類など、さまざまな危機が訪れ、まだ幼い小学生たちは次々と命を落としていく。そんな過激な内容の本作であるが、ラストは未来世界に来た自分たちを「未来にまかれた種」と称して、生きていくことを誓う。そして偶然小学校に迷い込んだ3歳児の勇一だけは現代に戻り、荒廃した未来世界を変えると誓う、というさわやかな結末を迎える。

 70年代に連載された古い作品だが、子どもたちが次々と無惨に死んでいく衝撃的な内容と、未来世界で生きていこうとする人間たちの前向きな姿がさわやかな読後感を与え、今でも根強い人気を誇る。ネット上では「パニック物なのに完成度が高い」「希望が見えるラストは結構好き」などの声が見られた。メディアミックス化もしており、2002年には常盤貴子や窪塚洋介が主演の実写ドラマが放映されている。

 次に紹介する『月刊IKKI』(小学館)で04年から09年まで連載された『ぼくらの』(作:鬼頭莫宏)は、陰鬱な展開の多さから鬱漫画として有名だ。

 同作は15人の少年少女たちがロボット「ジアース」に乗り込んで戦う、いわゆる“ロボットもの”である。ただしジアースの燃料はパイロットの命であり、操縦したキャラは戦闘後に必ず死ぬ運命なのだ。

 スポットが当たるキャラは男女問わず幼い子どもであっても、ジアースを操縦して死んでしまう陰鬱な内容だが、死から逃れられないパイロットの心理をていねいに描いている点が、漫画ファンから高い評価を得ている。

 ラストシーンで描かれる最後のパイロットが戦いに向かうコマは、不思議と晴れやかな気分になる仕上がり。「めちゃくちゃ綺麗に終わった」「戦いから誰も逃れられなくてみんな死んだのに最後はまじで爽やか」との声がネット上にあがっている。

 最後に紹介するのは、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で19年から20年まで連載されていた『チェンソーマン』(作:藤本タツキ)の第1部だ。本作の終盤ではメインキャラたちが続々と死亡する衝撃的な鬱展開が続いた。しかし、デンジは、黒幕であるマキマの裏をかき、完全勝利の結末を迎えている。

 ラストには、悪魔が登場し、逃げ惑う民衆の中でチェンソーマンに変身して悪魔に立ち向かうデンジが描かれ、締め方も高い評価を得ている。ネット上では「いい映画を見ていい気分で映画館を出たような気分」「ここまで綺麗にまとまるとは思ってなかった」などの声が見られた。

 ちなみに同作は『少年ジャンプ+』(集英社)において第2部が22年7月から連載開始している。第2部がどのような結末を迎えるかにも注目したいところだ。

 鬱漫画と呼ばれるような作品でも、きれいに終わりを迎える作品もある。読後感の悪さを警戒して読んでいない作品がある人は、この機会に読んでみてはいかがだろうか。

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