被災しても食堂と温泉を無料提供 “氷見の女将アナウンサー”「少しでも地元の助けに」

令和6年能登半島地震で、震災の被害を受けながらも被災者を鼓舞しようと、懸命な活動を続けている人たちがいる。震度5強を観測した富山・氷見市で、フリーアナウンサーで民宿おかみを務める青木栄美子さんもその1人だ。地震翌日の今月2日から、宿を開放しての食堂と温泉の提供を実施。被災者の心と体を温めている。青木さんに前を向く思いを聞いた。

食堂と温泉の無料開放を行った富山・氷見市の民宿あおまさ【写真:青木栄美子さん提供】
食堂と温泉の無料開放を行った富山・氷見市の民宿あおまさ【写真:青木栄美子さん提供】

震度5強観測の富山・氷見市、50年続く民宿創業者の孫

 令和6年能登半島地震で、震災の被害を受けながらも被災者を鼓舞しようと、懸命な活動を続けている人たちがいる。震度5強を観測した富山・氷見市で、フリーアナウンサーで民宿おかみを務める青木栄美子さんもその1人だ。地震翌日の今月2日から、宿を開放しての食堂と温泉の提供を実施。被災者の心と体を温めている。青木さんに前を向く思いを聞いた。(取材・文=吉原知也)

 青木さんは、富山湾の海沿いにあり、祖父の代から50年続いている民宿あおまさを営んでいる。創業者の孫にあたり、2023年4月に夫婦で宿を承継した。元民放アナウンサーでNHKキャスターを務めた経歴も持っている。「氷見の女将アナウンサー」として地元で親しまれている。

 年明け早々の地震発生。青木さんは沿岸から約1キロのアパートに家族といたが、立っていられないほどの揺れに襲われた。なんとか避難バッグを引っ張り出し、車で高台の体育館に向かった。親戚や家族は無事だったという。

 2日朝に宿の様子を見に来ると、バックヤードや倉庫は物が散乱する状態だったが、水が出てトイレが使えることを確認。この日の午後、被災者のための「無料食堂」として臨時開放を行うことを決めた。

「民宿あおまさは地元の方々に支えていただき、祖父から50年続いて続いてきました。少しでも困っている地元の方々の助けになればと思い、無料食堂や温泉の無料提供を行うことにしました」と決断の理由について話す。

 3日は約70人におにぎりとみそ汁を振る舞い、30人分を近くの避難所に届けた。約100人が温泉を利用したという。活動には地元の有志が助けに加わり、4日も実施。5日は休息をとり、6日に再び無料開放を予定している。

 現地では余震が続いており、観光業のダメージも計り知れない。なかなか先が見えない中でも、いまできることに全力で取り組んでいる。青木さんは「仕方のないことですが、このような地震が起きてしまった以上、余震に対する恐怖から、当面は北陸全体から観光客が減ってしまうかもしれません。観光客向けに魚を提供する飲食店や、当店のような民宿など(氷見には民宿がたくさんあります)は、コロナ禍からやっと立ち直ったところに追い討ちをかけられる形になるので、先のことに対する不安は大きいです。でもとにかく、いま私にできることを一生懸命頑張ります」と話している。

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