「無職の杉谷拳士です」 WBC会見での大失敗から1年…バラエティー出演を続ける原動力

2022年にファンから惜しまれながらも現役引退した元日本ハムの杉谷拳士氏は今、バラエティー界で“夢の実現”に向けて前進を続けている。23年4月には、引退直後としては異例の冠番組『杉谷拳士が取材中』(水曜深夜26時47分)がテレビ朝日系でスタート。同年は多数の人気バラエティー番組に出演するなど存在感を放った。現役時代とは異なる表情を見せ続ける杉谷氏にその原動力を聞いた。

インタビューに応じた杉谷拳士氏【写真:荒川祐史】
インタビューに応じた杉谷拳士氏【写真:荒川祐史】

『杉谷拳士が取材中』を「アスリートの方に『出たい』と思ってもらえる番組に」

 2022年にファンから惜しまれながらも現役引退した元日本ハムの杉谷拳士氏は今、バラエティー界で“夢の実現”に向けて前進を続けている。23年4月には、引退直後としては異例の冠番組『杉谷拳士が取材中』(水曜深夜26時47分)がテレビ朝日系でスタート。同年は多数の人気バラエティー番組に出演するなど存在感を放った。現役時代とは異なる表情を見せ続ける杉谷氏にその原動力を聞いた。(取材・文=中村彰洋)

 テレビ朝日系『スポーツ王は俺だ!!』の人気コーナー「リアル野球BAN」。杉谷氏にとって切っても切り離せない存在だ。15年に初出演すると、バラエティーへの適応力が開花。とんねるず・石橋貴明の“懐刀”として、準レギュラーのように出演を続けた。

「貴明さんに『好きなようにやりなさい』と言っていただけたところからすべてが始まりました。小さい頃から見ていた『リアル野球BAN』にずっと出たいと思っていました。野球が好きという気持ちをただ体全部で表現していたら、いつの間にかこういうキャラになっていました(笑)」

 そんな親しみやすいキャラクターが世間にも認知されたことで実現した、異例の引退直後の冠番組。スタッフから「一緒に成長したい」と熱意の込もったオファーを受けた。「本当にうれしかったです。今では家族のような感じです」と“チーム杉谷”の団結力の強さを語る。

『杉谷拳士が取材中』は、杉谷氏が気になる場所や人を取材するというもの。日々、スタッフと議論しながら取材対象を決めていく。これまではインタビュー“される側”だったが、同番組では“する側”。「野球の解説などとは全く違いますね」と笑いながらもやりがいを明かす。

「いろんな競技や分野の取材に行くので、たくさんの下調べをするんです。新鮮なことばかりで、すごく楽しいですね。『今、この人はどんなことを話したいんだろう?』と考えながら話を聞くようにしています。聞き方1つで返ってくる言葉が変わってきます。選手に寄り添いながら、自分自身ももっと成長していきたいです」

 引退直後の大きな仕事はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での現場リポートだった。優勝会見では、いの一番に手を挙げて質問。第一声は「無職の杉谷拳士です」。会場にはなんともいえない空気が流れたという。

「質問したい内容をまとめきれずに勢いで手を上げてしまいました。本当に反省しています(苦笑)。後日、『取材者とはなんたるか』ということを、栗山(英樹)さんに教えていただきました。あの“失敗”から始まった1年でした」

尊敬する2人について語った【写真:荒川祐史】
尊敬する2人について語った【写真:荒川祐史】

ブレない思い「子どもたちにいろんなスポーツをもっと知ってほしい」

 そんな杉谷氏にとって、指針となる2人の先輩がいる。1人目は現役時代の監督でもあった栗山英樹氏だ。

「栗山さんがアスリートとお話するときの姿勢は、すごく勉強になります。(監督時代には)1番近くで見させてもらいましたし、選手との抜群の距離感や接し方は参考になりました。今でも、栗山さんの楽屋を見つけたら、すぐにあいさつに行かせてもらいますし、そのときにも『拳士、話すときに食い気味になっちゃダメだよ』とかいろいろなアドバイスをもらっています」

 2人目は、リアル野球BANで共演を続ける石橋だ。「1番最初に引退報告したのは、栗山さんでしたが、その後が貴明さん」と語るほど、杉谷氏にとっては大きな存在となっている。

「貴明さんからは、『番組を作るためにたくさんの人たちが携わっている。その人たちがどういった思いで仕事しているかを考えながら、常に感謝の気持ちを忘れないように』だったり、『あいさつだけは忘れないように。いつか自分が困ったときに手助けしてくれるぞ』などいろんなアドバイスをいただきました。貴明さんのスポーツへの情熱を間近で見続けていたので、その背中をずっと追いかけています」

 23年4月には自身が代表を務める会社「ZENSHIN CONNECT」を設立。多数のテレビ番組への出演など挑戦を続けているが、そこにはブレない軸があった。

「活動を通して『野球、スポーツに挑戦したい』と思ってもらうきっかけになったらうれしいなと考えております。なにより子どもたちに野球だけではなく、いろんなスポーツをもっと知ってほしいです。何かに挑戦する権利は誰しもが必ず持っていると思うので、『○○になりたい』と思ってくれる子を1人でも多く増やしていきたいです。また、ファイターズや北海道に恩返しできるような活動はし続けたいですね」

 冠番組『杉谷拳士が取材中』のスタートから約9か月。「周囲の方々から、『選手との距離感がすごく良くなった』と言ってもらうことも増えました」と成長を明かしつつも、たくさんの伸びしろを感じている。

「ゴールデンにも進出したい、インドのクリケット、インディアン・プレミアリーグも取材したい、リオネル・メッシ選手にも出てもらいたい……(笑)。アスリートの方たちに『出たい』と思ってもらえるような番組にしていきたいです」

 1月4日まではテレビ朝日系の深夜枠『バラバラ大作戦』全18番組の中から1番面白い番組を決める「バラバラ大選挙」も実施中。杉谷氏は「皆さんの一票でこの番組の方向性が変わっていきます」と真剣なまなざしで“夢”への後押しを求めた。

□杉谷拳士(すぎや・けんし)1991年2月3日、東京都出身。帝京高から入団テストを経て08年ドラフト6位で日本ハムに入団。22年に惜しまれながらも現役を引退した。15年からテレビ朝日系『スポーツ王は俺だ!!』の人気コーナー「リアル野球BAN」に出演しバラエティー能力が開花。引退後は野球解説のみならず、多数の番組に出演。

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