北村匠海、『幽☆遊☆白書』は準備から配信までに実に5年 「終わる気がしなかった」明かした本音
俳優の北村匠海(26)が主演したNetflixシリーズ『幽☆遊☆白書』(全5話)が世界独占配信中だ。1990年から4年間『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された冨樫義博による大ヒット漫画の初の実写化。「終わる気がしなかった」と語る北村が、準備から配信まで5年がかりの超大作の舞台ウラを明かす。
あらゆる種類のアクションが各所に「ワンカットを撮るのに20~30テイクは撮りました」
俳優の北村匠海(26)が主演したNetflixシリーズ『幽☆遊☆白書』(全5話)が世界独占配信中だ。1990年から4年間『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された冨樫義博による大ヒット漫画の初の実写化。「終わる気がしなかった」と語る北村が、準備から配信まで5年がかりの超大作の舞台ウラを明かす。(取材・文=平辻哲也)
『幽☆遊☆白書』は33年前に連載がスタートしたレジェンド的なコミック。人間界、魔界、霊界という3つが交錯する世界観で、不慮の事故死を遂げ、霊界探偵となった浦飯幽助が、蔵馬(志尊淳)、飛影(本郷奏多)、桑原和真(上杉柊平)らとともに妖怪と対峙する姿を描く。26歳の北村にとっては生まれる前の作品だ。
「ジャンプ作品は年代問わず、少年みんなが読んでいるものだと思います。時代によって、ヒーローは変わっていきますが、その中でも『幽☆遊☆白書』は色褪せない金字塔として君臨している存在だと思います」
人気コミックの実写化では『東京リベンジャーズ』の主人公、花垣武道役の印象も強いが、浦飯幽助役のオファーが届いた時はどんな気持ちだったのか。
「少年漫画の主人公役をいただく時は、『なぜ自分なんだろう』と考えます。ただ、今回は監督が月川翔さんだった、というのが大きかったです」
月川監督とは『君の膵臓をたべたい』(17年)、『君は月夜に光り輝く』(19年)とタッグを組んでいるが、その出会いは中1の時に遡る。
「初めて出会ったのはRADWIMPSさんのMVでした。思い返せば、出会った当初からチャレンジを一緒にさせていただきました。オファーは、月川監督の『日本の『幽☆遊☆白書』を世界に送り出そう。そのチャレンジを僕と一緒にしてくれませんか?』というメッセージだと受け取ったんです。大変なプレッシャーのかかる作品でした」
それだけ、『幽☆遊☆白書』は大きい作品だった。
「役者として、原作のある実写をやるには責任感も伴います。それはスタッフキャスト全員が感じていたことだと思います。僕も、この作品をどうやって実写化するんだと思いましたが、そんな不可能に挑戦する月川監督と新しい景色を見てみたかった」
『東京リベンジャーズ』は21年にスタートし、23年に続編とシリーズ化しているが、撮影は『幽☆遊☆白書』とほぼ同時進行だった。
「2020年には『幽☆遊☆白書』の準備がスタートしていました。役者の仕事は、撮影する作品によってペースが違うんですが、いろんなものが交差して、『僕、ここから2年間はほぼヤンキーしかやらないな』と思いながらの2020年だったんです。それはそれで、面白かったです。金髪にしては黒髪にして伸ばして、また金髪にしてみたいな感じでした」
準備から配信まで5年以上かかった大型プロジェクトで、Netflix作品ならでは、の規模感を体感した。
「正直、『終わる気がしない』というくらいの期間がかかっていました。衣装合わせも僕は4回ぐらいやって、学ランの生地もいろんな素材を試しています。僕が着ているのはデニムのような素材ですが、カメラ写り、光の反射で、グリーンがどう映えるのかを見て、形を決めていった。こんなに贅沢に幸せにやれることはないなと思いました」
本作はCGを駆使した鴉(清水尋也)、武威(荒井敦史)、戸愚呂兄(滝藤賢一)、戸愚呂弟(綾野剛)ら妖怪たちとのバトルが見どころ。そのアクションシーンにも大きな時間を割いた。
「とてつもない練習量でしたし『幽☆遊☆白書』のアクションは(CG処理などがあるので)、技巧的な部分が求められました。いろんな種類のアクションが全話にあって、フルCG、人間と戦うシーン、パンチ一つ、ワンカットを撮るのに20~30テイクは撮りました」
同じヤンキーが主人公の作品で、根っこの精神に共通するものを感じつつ、両作の違いを楽しみながら演じたようだ。
「それでいうと、『リベンジャーズ』は令和のヒーローだし、『幽☆遊☆白書』は時代をまたいで脈々と続くヒーロー像だと思います。幽助を演じたおかげで、あまりにもちょっと強くなりすぎて。タケミッチの時にすごく苦労したのはありました」と笑う。
破格のスケールのNetflix作品を経験できたことは、北村にとっても大きな財産になった。
「これがいつかスタンダードになっていくかは分かりませんが、その一つの役と長く向き合う期間をいただけて、本当に有意義だなと思いました。ひとつの作品と向き合って、何年も撮り続ける。『もう終わる気がしない』と思えるのはありがたいこと。自分自身、仕事の仕方、作品の向き合い方を改めて感じ直すことができた、と思っています」。北村にとっては、俳優人生を大きく変えるターニングポイントになった。
□北村匠海(きたむら・たくみ) 1997年11月3日、東京都生まれ。08年、『DIVE!!』(熊澤尚人監督)で映画初出演。同年8月、フジテレビ系『太陽と海の教室』でドラマ初出演。2011年、4人組バンド・DISH//のメンバーとしても活動をスタート。W主演で映画初主演を務めた『君の膵臓をたべたい』(月川翔監督)で第41回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。人気コミックを原作とした『東京リベンジャーズ』シリーズ(英勉監督/21・23年)で主演を務めた。主な出演作に、『十二人の死にたい子どもたち』(堤幸彦監督)『君は月夜に光り輝く』(月川翔監督/以上19年)、『サヨナラまでの30分』(萩原健太郎監督)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(三木孝浩監督)『さくら』(矢崎仁司監督)『アンダードッグ』(武正晴監督/以上20年)、『砕け散るところを見せてあげる』(SABU監督)『明け方の若者たち』(松本花奈監督/以上21年)、『とんび』(瀬々敬久監督/以上22年)、『スクロール』(清水康彦監督)、『法廷遊戯』(深川栄洋監督/以上23年)など。
Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」
Netflixにて独占配信中
(C)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
原作/冨樫義博「幽☆遊☆白書」(集英社「ジャンプコミックス」刊)