三山ひろし、今年も『紅白』でギネスに挑戦「風物詩として見ていただけるのはうれしい」
演歌歌手の三山ひろし(43)が『第74回NHK紅白歌合戦』に9年連続9回目の出場を決めた。歌唱中のけん玉リレーは大みそかの風物詩で、今回もギネス記録更新に期待がかかる。デビュー15周年イヤーで、紅白前の今月19~21日には東京・明治座でスペシャルコンサートを開催し、「ひとり大忠臣蔵」に挑戦する。多忙な日々だが、「落語歌謡」という新ジャンル、三山ひろしというコンテンツの確立のため、止まることなく前進し続けている。
その前に東京・明治座でスペシャルコンサート「ひとり忠臣蔵」を披露へ
演歌歌手の三山ひろし(43)が『第74回NHK紅白歌合戦』に9年連続9回目の出場を決めた。歌唱中のけん玉リレーは大みそかの風物詩で、今回もギネス記録更新に期待がかかる。デビュー15周年イヤーで、紅白前の今月19~21日には東京・明治座でスペシャルコンサートを開催し、「ひとり大忠臣蔵」に挑戦する。多忙な日々だが、「落語歌謡」という新ジャンル、三山ひろしというコンテンツの確立のため、止まることなく前進し続けている。(取材・文=笹森文彦)
演歌・歌謡曲を代表する歌手となった三山だが、紅白の出場者発表は今年も緊張したという。
「歌手にとっての夢舞台ですから、選ばれて本当にうれしいです。正直言うと、やっぱりホッとしましたね。ああ、良かったって」
紅白で過去6年間「けん玉世界記録への道」と題し、歌唱中のけん玉リレーのギネス記録に挑戦している。前回は127人の記録を樹立した。けん玉リレーはいまや大みそかの風物詩。今年は128人の記録更新に挑むことになそうだ。
実は9月に「第37回けん玉全日本新人王決定戦」に初参戦。社会人の部で優勝して、新人賞を獲得した。
「自分の歌の道もちゃんと歩んで来て、けん玉でも新人賞をいただき、両方で風物詩として見ていただけるのはうれしいです」
歌の道ではデビュー15周年の節目を迎えた。
「『あっという間』とは全然思っていません。いろんなものを積み重ねて、着実に前進し続けて『ちょっと坂を上れたかな』という感じです。歌手として、恒石正彰(本名)として大きく成長できた15年だったなと、すごく思います」
記念曲は2曲発表した。第1弾が夫婦唄の『どんこ坂』。第2弾は海が舞台の『北海港節』。後者はビタミンボイスと呼ばれる歌声とは一変。ハードに勇壮に歌い上げる。さらに来年1月10日発売の新曲はタイトルが『恋…情念』。恋に障壁があっても、なお、燃え上がる情念の世界を歌い上げる。海同様、こちらも初挑戦の歌世界だ。
「確かに川とか山、ふるさと、母、家族、ぬくもりなどをテーマにして、14年間歌ってきました。でも、方向転換ではありません。作家の先生に『(三山には)もしかしたらこんな才能もあるんじゃないか』と、どんどん引き出してもらっているような気がします。例えば海という新しい引き出しが増えると、今度、海が来たらその引き出し、その間の人生のプラスアルファを足して、より良く海ものを歌える。1つ1つの新しいチャレンジは壁であり、それを乗り越えることで、自分の歌の世界が広がっていくと思います」
『どんこ坂』は夫婦もので、夫で2児の父親でもある三山の人生と重なる記念曲である。
「自分も伴侶と歩んで行けるようになり、あるいは親となり、自分自身の厚みというものが歌に生きていると思います。一方で、この15年間、ずっと応援してくれた方と一緒に歩んできたからこそ今があるという、パートナーシップの歌でもあると思っています」
新しいチャレンジは、15周年記念コンサートでも行っている。ギターとドラムの弾き語りに挑戦している。自分のオリジナル曲を歌いながらドラマをたたくのは難しいが、お客さんの反応は上々という。
「いい意味で考えればですが、コロナ禍が後押ししてくれました。お客さまにしてみれば(応援の)かけ声を掛けられないとか、つらい思いをしてきました。そんなお客さまのために新しいことに挑戦して、ステージで披露できたらなと思い始めました」
新年最初の「三山ひろし15周年記念コンサート~ありがとう感謝をこめて~」は来年1月12日に、神奈川・平塚市のひらしん平塚文化芸術ホールで行われる。
年内は紅白まで多忙な日々が続く。明治座での「三山ひろし スペシャルコンサート2023」では、3日間で4公演を行う。歌謡ショーだけでなく、第2部の「挑戦!ひとり大忠臣蔵」が見どころになる。
夢は「落語歌謡」の確立「コンテンツに磨きをかけて」
忠臣蔵は1703年(元禄15年)12月14日に元赤穂藩国家老・大石内蔵助率いる赤穂四十七士が、亡き主君・浅野内匠頭の無念を晴らすため、本所・吉良上野介邸に討ち入り、本懐を遂げた事件を題材にしている。これをテーマに三波春夫さんが数々の長編歌謡浪曲を作り上げ、72年に組曲『大忠臣蔵』として発表した。三山はこれを基にひとりで忠臣蔵を演じる。
「尊敬する三波春夫さんの生誕100年の年末に、お届けできるのはうれしい。基本的にはストリー仕立てになっていますが、大石内蔵助、浅野内匠頭、片岡源五右衛門ら全部、三山ひろしですから(笑)。忠臣蔵の長編歌謡浪曲という引き出しもあって、毎年毎年コンサートでやって、ブラッシュアップ(磨きをかけるの意)してきました。ひとりで大変ですけど、その集大成を見ていただきたいと思っています」
そんな三山には大きな夢がある。三波春夫さんが長編歌謡浪曲を築き上げたように、落語と歌謡曲を合体した「落語歌謡」という新しいジャンルを作り上げることだ。
三山は2020年1月に初の明治座座長公演で、立川志の輔一門である立川志の春と共演した。これがきっかけで、落語に興味のあった三山が志の春に“弟子入り”。「三山家とさ春」の高座名で、志の春と二人会を行っている。とさ春は土佐(高知)から取った。
11月22日に発売したアルバム『三山ひろし全曲集』には、志の春作詞の落語歌謡『厩火事(うまやかじ)』(作曲・宮下健治)を初めて収録した。
「落語がまるっと入った歌謡曲はないんです。ないなら作りましょうと思った。この時代に新しいものを作って、後世に歌い継いでもらえるような作品を残したい。まずは古典落語をお届けしたいですが、私自身、もっと勉強して、学んだものを落語歌謡にしていきたい。やがては自分の新作落語を歌にするのが目標ですね。宗家として、新しいものをどんどん出して、『長編歌謡浪曲と言えば三波春夫さん』『落語歌謡なら三山ひろし』と言われるように、自分を押し上げて行きたいです」
まだデビュー15年。時間は十分にある。
「いろんな作品やジャンルをこなすことで、三山ひろしというコンテンツが盛り上がってくると思っているんです。表現の幅を広げていくことで、コンテンツに磨きをかけて、アップデイト(最新の状態にすること)して、いつもパッと目につく、一番いい商品棚に置いてもらえるような三山ひろしでありたいです」
ヒット曲『お岩木山』の歌詞には「♪山よ! 山よ お岩木山よ…男の山には 道などないが 歩いたところが 道になる」と記されてる。三山の生きざまそのものである。
□三山(みやま)ひろし 本名・恒石正彰(つねいし・まさあき)。1980年(昭55)9月17日、高知・南国市生まれ。母子家庭に育ち、高校卒業後、ガソリンスタンドに就職。祖母の影響で演歌好きになり、21歳のときにNHK『のど自慢』の土佐清水大会で優勝。翌年、NHKホールでのグランドチャンピオン大会に出場。25歳の時に歌手を目指して上京。人を介し、演歌歌手・松前ひろ子が経営する「Liveレストラン青山」にアルバイトとして採用される。松前と夫で作曲家・中村典正氏(2019年死去)のもとで3年間修業し、09年6月に『人恋酒場、』でデビュー。『お岩木山』(15年)で、『第66回NHK紅白歌合戦』に初出場。歌唱後、松前の次女と13年3月に結婚し、長女と長男がいることを公表。『男のうそ』『四万十川』『男の流儀』『望郷山河』などヒット曲多数。特技はけん玉(四段)、竹とんぼづくり、裁縫。170センチ。血液型AB。