「更生の道を作るのが僕たちの仕事」 RISE伊藤代表が「BreakingDown」を否定しないワケ
格闘家のYA-MANがプロデューサーを務める新格闘技イベント「FIGHT CLUB」は11月19日に行われた。その4日後には格闘技エンターテインメント「BreakingDown10」が開催。11月はメジャー団体以外の興行がさまざまな意味で話題になった。現在、立ち技格闘技団体「RISE」で代表を務める伊藤隆氏に「BreakingDown」や地下格闘技との関わり方について話を聞いた。
伊藤隆代表に聞く地下格闘技との関わり方
格闘家のYA-MANがプロデューサーを務める新格闘技イベント「FIGHT CLUB」は11月19日に行われた。その4日後には格闘技エンターテインメント「BreakingDown10」が開催。11月はメジャー団体以外の興行がさまざまな意味で話題になった。現在、立ち技格闘技団体「RISE」で代表を務める伊藤隆氏に「BreakingDown」や地下格闘技との関わり方について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
朝倉未来が社長を務める「BreakingDown」の影響力はすさまじいものになっている。不良や前科者、喧嘩自慢が注目されやすいコンテンツなだけにたびたび批判の的となる。
11月4日の試合でヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)に勝利しRIZIN王者となった鈴木千裕は「日本の格闘技界は不良やヤンキーが輝く時代になっている。格闘技の質を下げている」と発言。格闘技界OBの魔裟斗もこれに反応し「格闘技の未来がなくなる」と発信するなど波紋を広げていた。
K-1との団体対抗戦で勝利し、実力者のそろうRISEを運営している伊藤代表はどう考えているのか。関係者やOBは批判している構造に異を唱える。
「BreakingDownの影響力がすごくて、選手関係者やOBが否定する流れになっていますよね? 僕は全くそうは思わない。なんでそんなにざわざわするのって。あくまでアマチュアだしもっと大きく構えていればいいんじゃないの?」
地下格闘技出身者が事件を起こしてしまったという事実はある。「間違っていることは間違っているし、社会的影響もある」と前置きしたうえで他の選手は関係ないと訴えた。
「頑張って一生懸命にやって盛り上げる。これはプロ、アマ関係ないんですよ。度合いは違うかもしれないけど、頑張っていることは一緒。RISEとしてやりたいことは地下格闘技の子たちの更生というかしっかりとした道を作ってあげたいんですよ。何%か分からないけど強くなりたい子が絶対いる。その子たちの道を作るのが我々プロの仕事だと思っています。RISEで言うと伊藤澄哉。彼は地下格闘技から上がってきて王者になるって頑張っているんです。こういうことをプロのイベントでやるのが我々の仕事です」
現役選手たちがはやりの「BreakingDown」勢を否定するのは「日々必死に頑張っている分、当たり前ですよ」と伊藤代表。「裏方とか引退したOBがわちゃわちゃ言わなくていいんですよ。さまざまな子たちが格闘技をやって良かったなって一生懸命やって良かったなって思える道を創るのが我々の道です」と熱く語った。
魔裟斗の「格闘技の未来がなくなる」発言も耳にしていたようで「魔裟斗、お前もやんちゃだったろって(笑)。彼の気持ちも分かるけど声を大にして言うことじゃない。いまの業界がどうなっているか冷静に見極めてあげようよ」と現役の団体代表らしい意見を述べた。
地下格闘技選手は「試合だけで見せられない」からこそ「自己プロデュースがうまい」
「BreakingDown」以外にもさまざまな格闘技団体が誕生している。この流れについて「ボクシングのようにまとまっていないから地下格闘技が伸びるんです。自由で統一機構がないから。地下格闘技の台頭は我々裏方業界が生んだものですから」と分析。本気でなくすとすれば「拘束するような組織作りからしないとダメですよ」と冷静に語った。
本業のプロよりも高額のスポンサー料を稼ぐ出場者も存在するのが現状だ。そのことについては「こればっかりはしょうがない。出す方の自由、スポンサーさんの自由だと思います。個人的に応援してるから出しているとか、バズることを加味しての費用対効果の部分もあるだろうし。地下格闘技の子たちは、試合だけで見せられないので、自己プロデュースがうまいと思います」と語った。
だからこそプロ格闘家たちにもチャンスがあると自信を持って語る。
「プロの子たちに言いたいのは試合の部分で魅せられるんだから、もっと自信を持ってよと。自分の道で頑張ってよって。BreakingDownを受け入れなくてもいいから客観的に見てほしい。自分たちが那須川天心、武尊みたいに唯一無二になればいいだけですよ」
RISEにはいろいろな肩書きの選手がいる。元キャバ嬢から王道派までバラエティーに富んでいるのが強みだ。運営スタッフと選手との距離の近さが、良い方向に作用していた。
「原口健飛や志朗みたいな王道スタイル。強さもあるけど強いキャラクターのYA-MAN。伊藤(澄哉)は地下格から上がってきている。(白鳥)大珠みたいなイケメンスタイルだっている。個性を伸ばしていくのがプロ(興行)だと思う。地下格闘技を簡単に否定せずに引っ張ってあげて強さだけではなく社会貢献できるような人材に育てる。それがプロイベントの1つの立ち位置です」
格闘関係者やOBから否定の意見も多い「BreakingDown」などの新興格闘技イベント。本物を目指すプロに求められるのは何か。個々が見つめ直す必要がある。