『SPY×FAMILY』人気の理由とは? シリアス×コメディーの絶妙なバランス感覚
2022年4月からテレビ東京系で放送されたSeason1が人気を博し、23年10月からはSeason2の放送が開始されたアニメ『SPY×FAMILY』。丸善やジュンク堂書店などの大手書店が実施するサービス『honto』が発表した「2023年秋アニメ原作本ランキング」では本作の原作漫画(作:遠藤達哉)が第1位を獲得。このランキング結果からも、本作の人気が不動のものだと言えるだろう。今回は、本作がそこまで多くの人に愛される理由を考察する。
シリアスとコメディー、すれちがいが巻き起こす笑い
2022年4月からテレビ東京系で放送されたSeason1が人気を博し、23年10月からはSeason2の放送が開始されたアニメ『SPY×FAMILY』。丸善やジュンク堂書店などの大手書店が実施するサービス『honto』が発表した「2023年秋アニメ原作本ランキング」では本作の原作漫画(作:遠藤達哉)が第1位を獲得。このランキング結果からも、本作の人気が不動のものだと言えるだろう。今回は、本作がそこまで多くの人に愛される理由を考察する。
まず注目すべきは、主要キャラクターが背負う設定の重さである。物語の舞台は、冷戦状態にある東国と西国という2つの国。主人公・黄昏(たそがれ)は西国側の敏腕諜報員だ。原作1話では、東国の国家統一党総裁であるドノバン・デズモンドに接触するよう西国政府より命令を受ける。しかし、ドノバンはほとんど表舞台に顔を見せず、唯一現れるのは息子が通う名門校での懇親会のみであった。
そんなドノバンに近付くため、黄昏は精神科医ロイド・フォージャーを名乗り、子どもを名門校に通わせるべく家族を探すところから物語が始まるのだ。
ここでロイドが選ぶ偽装家族のチョイスが、ストーリーをより面白くしている。
ロイドが偽装結婚の相手に選んだ市役所で働く女性・ヨルは、実は幼少期から殺人術を叩きこまれた殺し屋だった(原作2話より)。
さらに、ロイドが架空の家族を作るため孤児院から引き取った少女・アーニャは超能力者であり、人の心を読むことができる(原作1話より)。
ロイドもヨルも、それぞれの素性は知らない。しかしアーニャだけは超能力によって2人の素性を知っているのだ。この状況が生み出す「自分がスパイだと知られていないと思っているロイド」と「すべてお見通しなアーニャ」との、笑いを誘うやりとりも本作の魅力だろう。
たとえば原作1話でのロイドとアーニャが手をつなごうとする場面では、「手をつなぐ」行為に対し、ロイドは「片手が塞がれてはいざの敵襲に備えられんが仕方ない……」と考える。その思考を読み取ったアーニャは、敵を警戒するために手を放すが、アーニャが人の心を読むことを知らないロイドは「アーニャに警戒された」=「嫌われた」と思ってしまう。
何気ないシーンだが、思わずくすりと笑いを誘う描写だ。
このような、ギャグを言わずとも、その場で起きる食い違いが笑いを生むシチュエーションコメディーの世界観が、本作の人気を高める要素の1つだろう。
ロイドやヨル、アーニャがシリアスなストーリーのなか、さまざまなシチュエーションコメディーの展開に巻き込まれ、翻弄されるというギャップこそが、多くのファンの心をつかんだと考えられる。
また、フォージャー家以外の登場人物も、本作の魅力を引き立てている。
黄昏の協力者である情報屋フランキー・フランクリンや、アーニャが入学するイーデン校寮長のヘンダーソン、イーデン校でアーニャと同級生になるダミアン・デズモンド(ドノバンの次男)など、多くの個性的なキャラクターたちだ。
なかでもイーデン校の寮長・ヘンダーソンに着目したい。彼は名門校の寮長にふさわしく、威厳のある風貌をしている。原作4話では「エレガンスに欠ける者ばかりだ」と受験生のレベルの低さを嘆く様子が描かれた。
しかし、フォージャー家がことごとく審査員受けする行動を取るのを見てヘンダーソンは「エレガント! ベリーエレガント!」とおおげさなリアクションで狂喜乱舞している。
このように、ヘンダーソンは本作のシリアス×コメディーを体現しているようなキャラクターだ。
シチュエーションコメディーによる笑いと、シリアス×コメディーの絶妙なバランス感覚。そこに各キャラクターの魅力が加わって、『SPY×FAMILY』は多くのファンに愛される作品となったのだろう。
『SPY×FAMILY』Season2はABEMAでも放送中。最新話を放送日から1週間無料で視聴することができる。