TBS、旧ジャニーズとの関係性を再検証「事務所の派閥対立に振り回された」「逆らってはいけない」の証言も

旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題で、TBSは26日、外部の専門家を含む「特別調査委員会」による社内調査結果の報告書をTBSテレビ、TBSラジオの公式サイトで発表した。また、同書の内容を同局系『TBSレビュー』(日曜午前5時25分)で放送。その中で、元ジャニーズJr.の男性が、同局の施設内で性被害にあったと訴えていることや、同事務所内の派閥対立があったことを明かし、「対立に巻き込まれて忖度したり、圧力を感じてきた」との声も紹介している。

TBS【写真:ENCOUNT編集部】
TBS【写真:ENCOUNT編集部】

テレビ局で初の外部委員を含めた「特別委員会」による社内調査

 旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題で、TBSは26日、外部の専門家を含む「特別調査委員会」による社内調査結果の報告書をTBSテレビ、TBSラジオの公式サイトで発表した。また、同書の内容を同局系『TBSレビュー』(日曜午前5時25分)で放送。その中で、元ジャニーズJr.の男性が、同局の施設内で性被害にあったと訴えていることや、同事務所内の派閥対立があったことを明かし、「対立に巻き込まれて忖度(そんたく)したり、圧力を感じてきた」との声も紹介している。

 テレビ各局では、NHK『クローズアップ現代』を皮切りに旧ジャニーズ事務所との関係性を検証する番組を放送。TBSも『報道特集』などで実施したが、今回は「局としての検証」と位置付け、テレビ局では初めて外部(元検事の弁護士2人)を含む「特別調査委員会」を設置。調査は5週間かけて、社員や元社員の計139人を対象に実施したとしている。

 番組では、週刊文春による「ジャニー喜多川氏セクハラキャンペーン報道」の訴訟で、2004年2月、最高裁がジャニー氏の性加害については「真実性を認める」とした東京高裁の判決を維持。この事実をTBSが一切報じてこなかったことについて、同委員会は「背景に編成局など他部署の介入があったかどうかについて調べたが、その事実は確認されなかった」と報告。一方で、「当時、新聞・テレビの記者は、『週刊誌報道の後追いはすべきではない』という意識が強かったのも事実であろう。しかし、どんなニュースソースであっても、記者は事案ごとに取材すべきか否かを適切に判断すべきであり、『週刊誌だから』という理由で事実確認を怠っていたとすれば、情報への感度の低さを問われても致し方ない」と指摘している。

 また、09年4月、ジャニーズ事務所に所属していたグループのメンバーが公然わいせつ容疑で現行犯逮捕された翌日、釈放後に出た車両がTBS放送センターの駐車場に退避。TBS報道局員が取材でカメラを向けると、ジャニーズ事務所と連絡を取っていたと思われる編成局員が「撮るな」と取材を妨害した問題についても報告し、分析結果を伝えた。

「車両を招き入れた目的は、報道陣の取材から逃れるためだったことは明白であり、報道局の取材を妨害してしまったことになる。いわば、報道機関が報道機関としての責務を自ら放棄させうる行為だった。TBS社内で事実関係の調査や総括がなされた事実は確認できず、再発防止のための措置もとられていなかった」

 今春までTBSがジャニー氏の性加害問題を報じてこなかったことについては、「編成局などジャニーズ事務所と向き合う部署との関係が念頭にあったのは明らかで、一定の忖度があったと言われても否定できない」(報道局幹部)などの証言を紹介。その上で報告書は「本格的に取材すれば、ジャニーズ事務所向き合っている編成局やコンテンツ制作局の業務に影響するのではないか、という懸念から事務所への配慮が働いていたと考えるほかない」と指摘した。

 14年9月、ジャニーズ事務所の企画したハワイへのメディアツアーにTBSから4人が参加したことも報告した。嵐の15周年記念コンサートを見せることが目的で、航空機代、宿泊代はジャニーズ事務所側が負担している。この件については「当時、TBSは本件のメディアツアーはジャニーズ事務所側から見返りを求められる『便宜供与』ではなく、出張は問題ないと判断したと見られる。ただし、視聴者から見れば、事務所側の費用負担でハワイに行かせてもらえれば、何かしらの配慮をしているのではないかとの、不信感を持たれる行為ではある。今後、取引先が負担する出張などに関しては、放送の公平性に疑義が生じる可能性もあるため、適切な行動が求められる」としている。

 そして、TBS関連施設内でジャニー氏から性被害にあったとする元ジャニーズJr.の男性の証言を得ていることも報告した。男性は、1983年にTBSホール(当時)で行われたジャニーズ事務所の非公開オーディションで、「客席でジャニー氏の隣に座らされ、オーディションを一緒に見ていた時に体を触られた」と訴えているという。だが、報告書では「40年前のことであり、当時の状況を知る関係者を見つけることはできず、詳細については検証できなかった」としている。

 TBSとジャニーズ事務所との関係については、具体的な証言を紹介した。

「TBSは、数年前まではジャニーズ内の派閥対立に巻き込まれて忖度したり、圧力を感じてきた歴史だったと思う。同じジャニーズ事務所でありながら、全く別会社のように連携を取らず、お互いを敵対視している争いに振り回されてきた」(編成局と制作局を経験した社員)

「編成局から『ジャニーズ事務所は会社全体に関わるので、正しい、正しくない、ではなく、すぐに謝れ。向こうの言う通りにしろ』と言われた。絶対に逆らってはいけない相手だと学習した」(コンテンツ制作部門社員)

 その上で報告書では「魅力的なタレントを大勢抱える有力な事務所との厳しい“交渉”や“折衝”だとする証言が多くある一方で、“圧力”や“忖度”と捉えた証言が存在するのは、ジャニーズ事務所が時代とともに優良な事務所へと成長していったことが背景にある」と指摘。続けて「事務所自体が力を持つとともに、グループに絡む事務所内での派閥対立がTBSの編成・制作現場に多大な影響を与えたことは否めない。これが当時のジャニーズ事務所とTBSの関係を一層複雑にした」としている。

 外部委員からは「再発防止のため」として、「トップのメッセージ発信」「ニュース編集権の独立性確保、及び、報道機関として『公平・公正・正確な情報発信』の徹底」「経営陣と現場のコミュニケーションの充実」など9項目の提言がなされたとししている。

 番組の最後には、TBSホールディングスの佐々木卓社長が登場してコメント。ジャニー氏の性加害問題を今春まで報じてこなかった責任に言及した。

「この度の調査結果と提言を極めて重く受け止めております。性加害を今年まで報道しなかったこと、エンターテインメント関係者の間のうわさ話と軽んじて事実確認を怠ったこと、いずれも猛省するばかりです。さらに『無意識に見て見ぬふりをしていたのではないか』『釈明はもはや通用しない』などと厳しい指摘を受けました。全社員ひとり一人が公共の電波を預かる会社の一員として、被害者の方々の苦しみを心に刻み、人権尊重の意識を高めるようにしてまいります」

 ジャニーズ事務所との関係性についても、見解を述べた。

「旧ジャニーズ事務所が時を経て大きく成長するにつれ、編成、制作部門なの関係者の中に遠慮や気遣い、特別な配慮も見られるようになりました。また、報道部門でも会社の事情を気にして、逡巡するような様子が見られるようになりました。会社の取引関係の事情でペンを鈍らせてはなりません。ニュース編集の独立性をさらに高めるよう、取り組んでまいります。これまでのエンターテインメント業界は『特殊な世界』という観念をあらため、今の時代にあった人権尊重の取り組みを促し、今後は健全なパートナーシップを築いてまいります。取引先の人権問題にコミットする『人権デュー・ディリジェンス』の態勢を速やかに整え、私自らが率先して、全てのステークホルダーに人権侵害を許さない対応を求めていく所存です」

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