朝倉未来を再び奮い立たせるのは“怒り” 堀口恭司は『舐めんなよ』で朝倉海をぶっ倒した

日本人史上初のBellator世界王者・堀口恭司(アメリカン・トップチーム)が大みそかの格闘技イベント「RIZIN.45」に参戦することが決まった。また大みそかの前には初の著書『EASY FIGHT』(12月7日・幻冬舎)が発売されることもアナウンスされた。ENCOUNTでは“史上最強のMade in JAPAN”こと堀口の自伝的書籍に関する内容の一部を、随時掲載していく。

朝倉海に勝利した直後の堀口恭司(20年大みそか、さいたまスーパーアリーナ)【写真:ENCOUNT編集部】
朝倉海に勝利した直後の堀口恭司(20年大みそか、さいたまスーパーアリーナ)【写真:ENCOUNT編集部】

堀口の「自分の気持ちにスイッチが入った瞬間」とは…

 日本人史上初のBellator世界王者・堀口恭司(アメリカン・トップチーム)が大みそかの格闘技イベント「RIZIN.45」に参戦することが決まった。また大みそかの前には初の著書『EASY FIGHT』(12月7日・幻冬舎)が発売されることもアナウンスされた。ENCOUNTでは“史上最強のMade in JAPAN”こと堀口の自伝的書籍に関する内容の一部を、随時掲載していく。

 今回は朝倉未来の引退表明を聞いた、那須川天心の「(朝倉は)自分のために格闘技をしてない」発言を堀口にフィードバックしながら、朝倉未来の今後を考えてみる。

「2020年大晦日、自分は朝倉海くんと再戦をすることになった。自分が海くんに負けたのは2019年8月。人生初のKO負けだった。負けた原因は自分にあった。すべては自分の体調管理不足。万全どころか、最悪の体調だとわかっていたのに、結局は周りの声に押されて、試合を引き受けた自分に責任がある」

 その後、堀口は練習中に前十字靭帯を損傷。結局、再戦は最初の朝倉海戦から1年4か月後の、2020年の大みそかに決まったが、その間、堀口の耳にはさまざまな声が入ってきた。

「何度やっても同じ結果になる」

「そんな話を向こう側はしていたとも聞いたし、『また堀口が負けるだろう』なんてことを言う人も多かっただろう。もちろん自分はそんな声に対しては『余裕だよこの野郎! 見てろよ』と思っていた。

『舐めんなよ』

 その気持ちがなくなったらリングになんて立つことはできない」

 しかも注目度の高かった一戦にもかかわらず、堀口にはプレッシャーはまったくなかった。なぜプレッシャーがなかったのか。

「それは、2019年8月にやった朝倉海戦は、みんなのためにやった試合。それに対し、再戦は自分のためにやる試合。その時点て゛そもそも気持ちが全然違う。自分の試合に対するモチベーションは、周りの人にいかに喜んでもらえるか。そこに尽きる。自分の軸はそこにある。その軸が、海くんに負けたことによって『こいつぶっ飛ばしてやろう』に変わった。自分の気持ちにスイッチが入った瞬間だった」

 再戦までの1年4か月の間、堀口のところには朝倉兄弟に関するいろいろな話が伝わってきた。

「あることないこと、大小含め、さまざまなものだった。それを聞くにつけ、真意はともかく、自分の思いはどんどん膨れ上がっていった」

12月7日に発売になる堀口恭司の著書「EASY FIGHT」
12月7日に発売になる堀口恭司の著書「EASY FIGHT」

「イージーファイト!」

「舐め腐りやがって」「調子に乗りやがって」

 堀口の意識の中に、そんな思いが日に日に増していった。

「勘違いしてほしくないのは『舐め腐りやがって』『調子に乗りやがって』と思いながら、それをすべて“怒り”に変えてリング上でぶつけられるか。重要なのはそこになる」

 堀口からすれば、事実や真実がどうかなんてことはどうでもいい。

「たとえ試合前はそんな感情でも、“怒り”に任せて判断せずに、いかに冷静になって自分自身を勝利に導くか。試合がはじまってしまえば、冷静に勝利に向かって突き進む。そこがプロの格闘家のやることかなと思っている」

 そして迎えた本番。結果はすぐに出た。

「ゴングが鳴ってから23秒、自分が右のローキックで先制し、海くんのローキックをかわす。さらにもう一発ローキックをヒットさせると、3発目のローキックも当てる。その瞬間、海くんがヒザをついて倒れた。その後、多少の攻防はあったかもしれないけど、すべて自分の想定内。最後は海くんが打ってきた飛びヒザを自分が右フックで撃墜し、パウンドをフォローしてフィニッシュした」

 1R2分48秒、堀口のKO勝ちだった。そして堀口はこの後、象徴的なひと言を口にする。

「イージーファイト!」

「自分は勝った瞬間、セコンドについていたマイク・ブラウンに向かってそう叫んだ。この言葉自体は、相手を小バカにしたよくない言葉だったと思う。ただ、この言葉の意味は、直訳した時の『楽な闘い』ではなく、マイクを含めたチームに対して、『自分たちのチームからすれば、こんなの余裕だよな』という同意を求めた言葉だった。

 それでも自分からすれば、そこまで1年4か月の間に積み重なっていたイライラが一気に爆発したから、『見たか、この野郎!』という感じでで叫んだのだと思う。

 もちろんその言葉は、不特定多数の人に向けて言ったわけでもなければ、まして海くんに向けて言ったわけでもない。

 自分自身に対して、それから家族やセコンドについてくれたマイクに対しての言葉だった」

 堀口の言葉を借りると、みんなのためにやる試合と、自分のためにやる試合とでは気持ちの入り方がまったく違うとのこと。

 であるなら、引退表明→撤回→休養宣言とされる朝倉未来が再起する方法は、堀口が朝倉海との再戦でそう思えたように、すべてを“怒り”に変えてリング上にぶつけること。それが最短ルートな気がする。

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