家賃7万円から50万円に 成り上がったYA-MANが欲に溺れなかったワケ「朝倉未来と比べたら」

「雲の上の存在だった人を倒す」――。初代RISEオープンフィンガーグローブマッチ(OFG)65キロ級王者のYA-MANは今月19日、自身が手がける格闘技イベント「FIGHT CLUB」で朝倉未来と対戦する。YA-MANはOFGでどう変わったのか。「憧れ」だった朝倉未来について話を聞いた。

“憧れ”朝倉未来との対戦理由を語ったYA-MAN【写真:ENCOUNT編集部】
“憧れ”朝倉未来との対戦理由を語ったYA-MAN【写真:ENCOUNT編集部】

記者会見の舌戦では完敗

「雲の上の存在だった人を倒す」――。初代RISEオープンフィンガーグローブマッチ(OFG)65キロ級王者のYA-MANは今月19日、自身が手掛ける格闘技イベント「FIGHT CLUB」で朝倉未来と対戦する。YA-MANはOFGでどう変わったのか。「憧れ」だった朝倉未来について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 OFGで成り上がったYA-MANが急きょ立ち上げた同イベントはOFGマッチ限定の格闘技興行。本物同士がKO決着のみの3分×3R、キックボクシングルールで対戦する。目玉のひとつがYA-MAN率いる「RISE」軍団と未来率いるJAPAN TOP TEAM/JTT軍団の対決だ。

 今月4日に記者会見が行われたが、「RISE」軍団は冗舌な未来を前に舌戦では完敗。普段は会見で大立ち回りを演じるYA-MANもこの日は発言にキレがなかった。

「本当に話すことに一生懸命になっちゃいました。自分がプロデューサーということもあって、変なことは言えないし……。今回の会見は難しかったですね。逆に向こう(未来軍団)は楽しかったんじゃないですか? 首を放たれた番犬みたいな、楽しそうですよね」

 未来は木村“ケルベロス”颯太に対し「てかお前誰?」とブチギレ。知名度がないことを指摘し、会場を凍り付かせた。YA-MANもこの点に関しては首を縦に振る。

「もちろん強さが1番ですが、知名度はないとダメだと思いますよ。日本人最強と言われる人がいたとしても、5人しかその人のことを知らなかったら、それは日本一じゃないんですよ」

 突然の興行立ち上げだった。2018年にプロデビューしたYA-MANは無名時代を長く過ごしていたが21年にOFG試合が導入されると、メキメキと頭角を現す。一時は6連勝もしており、勝利とともに人気、知名度も上がっていった。「OFGをきっかけに良い方向に変えられたら」。OFGで変わった生活を明かす。

「無名時代は駅から徒歩15分のところに家賃7万円くらいの1Kを借りて住んでいました。基本、チェーン店の牛丼とかスーパーの総菜を食べる、そういう生活でした。でも、いまは渋谷の家賃50万円くらいのところに住んでいます。ご飯もお金を全く気にせず、好きなときに好きなものを食べられる生活に変わりましたよね」

 SNSには豪遊する様子もアップしているが、一方でファイトマネーをシングルマザーや孤児院に寄付するプロジェクトにも参加している。母子家庭で育ったYA-MANにとって、社会貢献活動はモチベーションのひとつだ。

「生活に余裕はできる。でも、自分自身は何も変わらない。もちろんジムまでの距離は近くなって楽になったりしますけど、根本的な自分は変わらないです」

 変わらなかった理由に、今回対戦する朝倉未来の存在もあった。

「変わらなかったのは、自分よりも果てしない上の人が身近にいたからですね。自分がちっぽけと思える人が近くにいたから。一般の人の10倍稼いでいたとしても、その人は自分の100倍稼いでいる。『俺はあの人の100分の1か』みたいな。その人と比べたら全くいきがれない」

 アウトサイダーからDEEP、RIZINへ成り上がる姿が刺激になっていた。

「初めてRIZINを観戦したときが、朝倉未来の初参戦だったんです。アウトサイダー出身って肩書きでそのときに『なんで地下格の選手がRIZIN出るの』って思っていました。でも、そこからどんどん上に上がっていて、『すげえ』って。いつの間にか格闘技業界ではなくて、日本で誰も知らない人がいないくらいの所になってて。

 でも初戦を見ていたので、『俺でもいけるわ』という指標でもありました。地下から出てきて、俺はストリート出身で。俺と変わらないじゃんって」

 未来には自らオファーを出した。それは未来の言う「知名度」のためではない。憧れだった存在にどこまで追いついたか、あるいは超えたのか。オファーの理由は「挑戦です」とうなずく。

「那須川天心と武尊選手を除いてキックボクサーの中で自分より知名度のある選手って本当に限られていると思うんですよ。その中で自分は目標を見失ってた。前回の山口裕人選手との試合もタイトル、殴り合いって面白みはあるんですけど、ワクワクはしなかった。

 違う競技(MMA)で下からはい上がっていくか、朝倉未来・天心(レベル)とやっていかないとワクワクする自分って作れない。そういう意味でやってみたかったんですよね」

 ABEMAが事前に行った調査では格闘技ファンの7割が未来の勝利を予想している。そんな逆境を乗り越えることはできるのか。ストリートから成り上がった男がOFGでまた何か変えようとしている。

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