いとうせいこう、小説執筆はパソコンから“手書き”に「空間になって奥行きが出る」

マルチクリエイターのいとうせいこうが14日、都内で行われたコトバとアイデアのコンテスト『第27回手帳大賞 発表表彰式』のプレゼンターとして登場し、自身の手帳を紹介した。当日はいとうとともに審査員を務めた歌人の東直子、フードエッセイストの平野紗季子も登壇した。

表彰式に出席したいとうせいこう【写真:ENCOUNT編集部】
表彰式に出席したいとうせいこう【写真:ENCOUNT編集部】

『第27回手帳大賞 発表表彰式』のプレゼンター

 マルチクリエイターのいとうせいこうが14日、都内で行われたコトバとアイデアのコンテスト『第27回手帳大賞 発表表彰式』のプレゼンターとして登場し、自身の手帳を紹介した。当日はいとうとともに審査員を務めた歌人の東直子、フードエッセイストの平野紗季子も登壇した。

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 MCが「手帳をやめてしまう理由の回答率1位の『空欄が目立つ状況が続いてしまった』ということだそうです。いとうさんはどう思いますか」と話をふると、いとうは「それ書いてないということですもんね。書いているにもかかわらず、余白が多くて自分としてはがっかりしてしまう気持ちはわからなくもない。必ずしも仕事的なことを書けば埋まっているかというとそうではないんですよね」と語った。

 続けて、「例えば僕は、ニコニコマークでもでっかく書くとか、だめだったときはバッテンを書くとか、手帳はそれでいいんだと意識を変えていった方がいいかもしれない。感情を表す、感情を覚えておくメディアなんだと思っておけばいいと思うんです。SNSだと大丈夫かなと思われるけど、手帳ならいいですもんね」と持論を展開した。

 自身の手帳の様子を会場のスクリーンによって発表したいとうは「何を思いついたか、何をしなければならないかというのが大事。後々の仕事のため、今やっていることよりもそっちの方が大事なんですよね。これを見ると、ゲラ直しをやるぞという気持ちだったり、Zoom番組をやれないかと思いついたり、そういう形で実現しなくても構わないので、思ったことを忘れないうちに夢を書いている。そういったものを仕事と並列に書くのが大事だと僕は思っています。現実の仕事とそうではないものが同じくらい価値があるということです。誰々に連絡してなかったとか、DVDはどこいったのかとか、急に思って書く。こういうものがアイデアにつながったりするんです」と手帳の使い方を説明していた。

 MCが「手で書くという良さが手帳ならではですね」とつぶやくと、いとうは「何年か前に手書きに戻した時期があって、そのときはなかなか大変でした。小説を書くときは、キーボードでやっていると、アイデアがあったのにデリートしちゃうんですよね。手で書いておくと戻しやすいんですよ。そのときの熱気やダメだと思ったバツ印の強さがパソコンだと残らないんですよね。手書きで書くと、空間になって奥行きが出る。手書きでやるから脳の神経に刺激がいっていると僕は考えています。そういう我々のアイデアを生み出している可能性が絶対あると思うので、ぜひ書いておいてほしいですね」と主張していた。

 表彰式では、『名言大賞』5万2377通、『商品企画大賞』2665通の応募から、両部門で特に優れた作品を発表。商品企画大賞優秀賞に『中高生のための手帳』(谷口楓果さん)、名言大賞優秀賞に『明日の予定は元気。』(小野あけみさん)と『なんか人のために頑張っています。』(矢野浩樹さん)、名言大賞に『あなたはたくさんいていいのよ』(生越寛子さん)が選ばれた。

 同賞は高橋書店が主催。手帳文化の発展を願い、1997年にスタートした。名言大賞と商品企画大賞の2つの部門からなり、思わず手帳にメモした「コトバ」とあったらいいいなと思う手帳の「アイデア」を募集している。

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