須田亜香里、「元握手会の女王」の今 「恋愛にも自由になっていいんだ」と頭が柔軟に
元SKE48の須田亜香里が、今月1日にフォトエッセー『がんこ』を出版した。32歳になった須田を写真で捉え、恋愛や価値観をつづっている。かつては「30歳を過ぎたら生きていない」と思うほど、アイドル活動に全力を注いでいたという。「元握手会の女王」は今、どんなことを考えているのだろうか。
SKE48卒業から1年 フォトエッセー『がんこ』を出版
元SKE48の須田亜香里が、今月1日にフォトエッセー『がんこ』を出版した。32歳になった須田を写真で捉え、恋愛や価値観をつづっている。かつては「30歳を過ぎたら生きていない」と思うほど、アイドル活動に全力を注いでいたという。「元握手会の女王」は今、どんなことを考えているのだろうか。(取材・文=大宮高史)
サービス精神旺盛、どんな時でも神対応だった握手会の女王。SKE48での13年間でファンに愛されてきた須田は、昨年11月にグループを卒業。休むことなく、今年の年頭からは同書のためのグラビア撮影をしていた。すっぴんに近いショットも交えている。
「以前は海外で写真集を撮らせていただいたこともありました。その時は非日常感に負けないように背伸びして、『かわいく見せよう』と意気込んだりしていましたね。そういったキラキラした時間はアイドル時代にたくさん経験できたので、できるだけいつのも私を見せていくコンセプトで作りました。寝起き風の写真なのにバッチリメイクしているのも、かえって違和感がありますよね(笑)」
冬と夏の2シーズンに分けて撮影。須田は「半年インターバルがあるだけでも表情をガラっと変えています。『季節が違うだけでこんなに変わるんだ』とびっくりされるかもしれません」と表現力に自信を見せる一方、プライベートの変化も楽しんできた。
エッセーの中では、恋愛観や理想の異性についても率直につづっている。
「SKE48にいた頃は、そういった話題に触れてみようとすら思わなくて……スイッチを完全に切っていたような感覚でした。それはストイックに自分を律するというよりは『アイドルなんだから』と無意識に触れないでいたのかなと思います。でも、卒業して『恋愛にも自由になっていいんだ』と気づいたら頭が柔軟になって、思考が浮かんでくるままに自由に書いてみました。とはいえ、まだまだ世の中の男性を知らなすぎるので、友達付き合いから始めようにも分からないことだらけですね(笑)」
陰口を言われることも嫌いだったという。
「『実は裏で彼氏がいたりするんだろ』みたいにウワサされるのは大嫌いで、そもそもそんな器用に立ち回れません。『元気な頑張り屋』というイメージがあるかなと思いますが、もっとドロドロした感情が行動の原動力になっていたりもするので、そういった後ろ向きなところも文章にしてみました。その方が、読者も『リアルだな』とより共感できるのかもしれません」
波瀾万丈のアイドルキャリア「あの頃は常に何かに追われているような感覚」
アレルギーが原因で肌荒れに悩まされたり、2015年のAKB48選抜総選挙では選抜落ちのショックで号泣。本気で卒業を考えるなど、波瀾万丈のアイドルキャリアを送ってきた。当時、生活の全てを仕事に注いでいたといい、「30歳を過ぎてアイドルでなくなったら、生きていない」と漠然と思っていたという。気付けば、10月31日で32歳になった。
「人って『居場所がなくなったら死ぬ』と本気で思いこむくらい、没頭できるんですね。あの頃は常に何かに追われているような感覚があって、『ひとつ失敗したら人生が終わる』くらいに思いつめながら毎日を生きていたんだなと振り返って思います。そんな経験をしたからこそ、今の生活では楽しさを感じる瞬間が増えました。失敗もしましたが、小さな失敗は日々たくさんありますが、それでもちゃんと生きています(笑)」
『がんこ』のタイトルが象徴するような負けず嫌いな性格も、「期待を裏切ってしまうのが怖い」というネガティブさの裏返しだった。
「期待に応えたいというよりは、がっかりされたくないから頑張っているのが本音です。すごく細かなニュアンスの違いなんですが……。頑張り屋に見えて、本心は人が離れていってしまうのが怖い。小心者ゆえの行動力で今まで生きてこられたんです。そんな絶妙な心理をエッセーの文章で感じとっていただけると、うれしいですね」
メンタルコントロールの方法も変わったという。
「何かひとつ物事に打ち込むと身を削りがちです。それも、私だけじゃなく周りの人も一緒に消耗してしまうくらいに。巻き込み体質でもあるなと思います。だから、皆さんのためにも深刻な顔をしていないで、『笑顔で仕事場に向かおう』と思えるようになったんです」
かつてはアイドルでいるべく、恋愛にまつわる感覚にフタをしていたように「感情に向き合うことが苦手で、人間味がなくなっていたかもしれません」と振り返る。そんな過去を脱して、芝居への苦手意識が克服できたのは、今年3月の舞台『Bumblebee7』でのことだった。
「心理的・時間的にも余裕ができて、『私の人柄をもっと素直に、多面的に見せられるかな』と思ったタイミングでの出演でした。やりたかったボールダンスにも挑戦できましたし、お芝居での感情作りも楽しみながらできて『やればできるんだ』と成長を実感できました。7人という少人数での作品で、共演の皆さんとすぐ仲良くなれて今でも一緒に遊びに行く間柄です。グループを離れても友達関係も広げられました」
アイドル後は「毎日、進化中です!」
高校時代まではバレエに心血を注ぎ、アイドルデビュー後は泥くさくファンの信頼をエネルギーに変えてきた。
「性格的に叶えたいことを見つけると、後先を考えないで消耗してしまうようなので、これからの目標や夢は計画的というか、身の丈にあったスケール感のものから叶えていきたいですね」
想像できなかった「アイドル後」の日々も楽しんでいる。デビューから14年になるが、「人間・須田亜香里」の全貌は見せ切ってはいないようだ。
「エッセーを読んで、私の本音をどう感じとってくれるかは人それぞれかもしれません。でも、自分のいいところばかり見せていても等身大の人柄は伝わりませんから、アイドルを卒業して解放されたことや、今はどんな素敵なものを吸収して生きているかを想像してくれるとうれしいです。毎日、進化中です!」
□須田亜香里(すだ・あかり)1991年10月31日、愛知県生まれ。2009年11月にSKE48に加入。16年、17年のAKB48選抜総選挙では2年連続「神セブン」に選ばれ、18年は2位。22年11月にSKE48を卒業。現在はテレビ、ラジオや連載など多方面で活動。趣味はホラー漫画を読む、一人旅。