山田裕貴、役とのギャップに悩んだ過去「本来の自分とかけ離れていく」 葛藤の中で見つけた答え

NHK大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)、映画『東京リベンジャーズ』シリーズ(英勉監督)など話題作に引っ張りだこの俳優・山田裕貴が映画『ゴジラ-1.0』(山崎貴監督、公開中)に出演する。戦後の日本を描いたゴジラ70周年記念作品で、特殊任務を請け負う船の乗組員を演じた山田に、映画の見どころを聞いた。

映画『ゴジラ』シリーズの最新作に出演する山田裕貴【写真:ENCOUNT編集部】
映画『ゴジラ』シリーズの最新作に出演する山田裕貴【写真:ENCOUNT編集部】

映画『ゴジラ』シリーズの最新作では戦いに憧れる青年を熱演

 NHK大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)、映画『東京リベンジャーズ』シリーズ(英勉監督)など話題作に引っ張りだこの俳優・山田裕貴が映画『ゴジラ-1.0』(山崎貴監督、公開中)に出演する。戦後の日本を描いたゴジラ70周年記念作品で、特殊任務を請け負う船の乗組員を演じた山田に、映画の見どころを聞いた。(取材・文=西村綾乃)

 日本で制作された実写版ゴジラ30作品目となる最新作は、初代ゴジラの時代設定より前、戦後の日本が舞台。焦土と化した街に、海から上陸したゴジラが現れ、人々を恐怖に陥れる様子が描かれている。山田は戦後処理の特殊任務を任された新生丸に乗り込む青年・水島四郎を演じた。

「30歳を超えて10個くらい下の役を演じるのは難しいと感じていました。戦地に行ったことがある周囲と違い、その経験がない水島は屈託がなく明るい青年。その恐ろしさを知らないから、戦いに憧れを持っていたり、戦って死ぬことが誉(ほまれ)だと信じている。そんな青年を真っすぐに演じようと思いました」

 出演作が絶えない売れっ子だが、今作は3年ほど前に行われたオーディションでつかんだ役だったと明かした。VFXの名手・山崎が生み出した50.1メートルのゴジラとは船上で出くわす場面もあった。

「10日間くらい海に出て撮影をしました。100メートルぐらい先にいるゴジラににらまれ立ちすくむ様子など何もないところを見上げるので、反応の仕方が難しかったです。艇長役の佐々木蔵之介さんと『あのあたりを見よう』と事前に打ち合わせをしたりしました。でき上がった作品を見たときは、『海で撮影をしなくても良かったんじゃない?』と思うくらいCG部分が精巧で、そこにゴジラがいることが体験できた。こんなにすごい技術があればどんな状況も生み出せると思いました。将来監督がマーベル作品などを作ることがあったら、ぜひ、出演したいです(笑)」

 1990年生まれの山田は、今年33歳。両親も戦後の生まれだが、元プロ野球選手として活躍した和利氏が広島に在籍していた当時、母に連れられ原爆ドームなどを訪れたことがあったという。

「広島平和記念資料館はリニューアルされる前だったので、より直接的な展示が多く、印象に残っています。投下された原爆の熱線を受けた人が残した影の跡、犠牲になった人が身に付けていた衣服などの遺品を見て、『こんな無慈悲なことが起きてはいけない』と思いました」

 劇中には「生きろ」というセリフがある。令和を生きる山田にとって「生きる」とはどのようなことだろうか。

「世界は多様性を認め合うけれど、とても生きにくくて、『自分は何で生きているんだろう』と悩む人が増えていると感じます。自分も考えたことがありました。死んだら『ごめんね』も『ありがとう』も言えなくなる。(映画を見た人には)『生きているからあらがえるんだ』ということを感じていただけたらうれしいです」

 さまざまな役に挑む中で、そのイメージが独り歩きしてしまうことに、ギャップを感じていたと吐露。昨年は、仕事を休み世界を巡ろうと思い詰めたこともあったという。

「好きで選んだ仕事でも悩ましいことはたくさんあって。はたから見たら、『仕事があるのに、悩むなんてぜいたく』と言う人もいるかもしれないけど、性格的に人前に出ると頑張ってしまうことがありますが、どんどん本来の自分とかけ離れていくことに息苦しさがありました。このままじゃダメだと感じた昨年、『無理するのは止めよう』と思いました」

 主演を務めた神木隆之介とは、アニメーション映画『100日間生きたワニ』(21年、上田慎一郎監督)で初共演して以降、交流を深めている。今年は山田が本多忠勝役を務める『どうする家康』と、神木が主演していたNHK連続テレビ小説『らんまん』が隣同士のスタジオで撮影をしていたことから、本多の扮装(ふんそう)で神木の撮影を見学する様子などがSNSに投稿され話題を集めた。旧知の友の再共演をファンも心待ちにしていた。

「相手が誰であっても、いつも100%を出しています。共演することについて、面と向かって話したりはしていないし、自分がどう思うかよりも、相手にどう思ってもらえるかが大事だと思っています。歳が近い神木くんが撮影を終え、『裕貴がいてくれて良かった』『安心できた』と言っていたと聞いたので、共演することができて良かったと思いました」

□山田裕貴(やまだ・ゆうき)1990年9月18日、愛知県出身。テレビ朝日系『海賊戦隊ゴーカイジャー』で2011年に俳優デビュー。22年にエランドール賞新人賞を受賞。主な出演作にNHK連続テレビ小説100作目の『なつぞら』(19年)、映画『東京リベンジャーズ』シリーズ(21・23年)、映画『夜、鳥たちが啼く』(22年)、NHK大河ドラマ『どうする家康』(23年)など。毎週月曜日深夜にはニッポン放送で『山田裕貴のオールナイトニッポンX』のパーソナリティーを務めている。

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