テレ東、旧ジャニ検証番組放送 過去には幹部とみられる男性から威圧された局員も「名刺よこせ」「会社に伝えるからな」
テレビ東京は26日午後5時5分から、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題を受け、検証番組『ジャニー喜多川氏の性加害問題~検証報告と今後の対応について~』を放送した。テレビ東京ホールディングス(HD)が「放送」「制作」「編成」部門の現役社員と元社員を合わせた134人を対象に調査を実施したと説明。テーマごとにさまざまな証言を紹介した。
売れっ子出演要請はメリー氏から拒否
テレビ東京は26日午後5時5分から、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題を受け、検証番組『ジャニー喜多川氏の性加害問題~検証報告と今後の対応について~』を放送した。テレビ東京ホールディングス(HD)が「放送」「制作」「編成」部門の現役社員と元社員を合わせた134人を対象に調査を実施したと説明。テーマごとにさまざまな証言を紹介した。
<報道現場でのジャニー氏による性加害問題の認識>
「テレビ東京にワイドショー番組がなく、原則として報道番組では、芸能界の話題は扱わないという共通認識があった。当時はこの問題を重要な人権侵害だと捉える感覚が鈍かった」(報道局OB)
「最高裁が上告を棄却し、(ジャニー氏の性加害を認める)高裁判決が確定した時期は、オウム真理教だった麻原元死刑囚の一審判決の直前だったため、まったく注意をはらっていなかった」(元報道局員)
「(今年3月の)BBCの報道当時、これほど被害者がいるとは想像できなかった。男性への性加害に対する認識、人権への問題意識も足りなかった」(報道局員)
<旧ジャニーズ事務所のタレントが逮捕された時の対応>
「警察署の入口でジャニーズ事務所の幹部とみられる男性から『名刺をよこせ。あとで会社に伝えるからな』と威圧された。上司に相談したら、『気にしなくていいから』と言われ、取材を続けて報道した」(元報道局員)
<制作現場でのジャニー氏による性加害問題の認識>
「ジャニーズ事務所に過去に出入りしていた男性が、1980年代の昔話として、合宿所に行ったら被害を受けた、と聞いたことがある。過去の話だったうえ、深刻な様子では話していなかったので、自分も深刻には受け止められなかった」(制作局OB)
「ジャニー氏に性癖のうわさを知っている人は多くいたのに、誰も指摘しなかった。誰も告発する勇気がなかった」(制作局OB)
「旧ジャニーズ事務所からの圧力や事務所への忖度(そんたく)がテレビ東京、BSテレビ東京の報道の手加減につながった事例は1件も確認できなかった」(局としての報告)
<番組制作の現場では旧ジャニーズ事務所とどう向き合ってきたのか>
「当時(ジャニーズ事務所の)トップと言われたタレントはテレビ東京に出ていなかったので、忖度は必要なかった」(元制作局員)
「(副社長だった)メリー氏に売れっ子タレントの出演要請をしたら、『テレビ東京には出さない。次の人を育てたら?』と言われた。テレビ東京はジャニーズの育成番組を放送し、人気が出たら他局にもっていかれる流れがあった」(元制作局員)
「音楽番組でジャニーズ事務所ではないグループに出演依頼をしようとしたところ、ジャニーズ事務所からは『出してもいけど、うちは引くから』と言われた。結局、同じ画面内に映さない仕切りで、その番組には双方に出演してもらった。こうしたことは他の事務所との関係でもある話だ」(元編成局員)
「テレビ東京グループにとって旧ジャニーズ事務所は『重要な取引先のひとつ』ではあったものの、それ以上の位置づけではなかった」(局としての報告)
そして、番組の終盤には局としての見解を発表した。
「重大な人権侵害があったことはゆるがない事実である以上、少なくとも真偽を確かめるといった行動を取るべきでした。会社として人権意識が希薄だった結果、メディアとして果たすべき責任を果たせなかったと深く反省しています」
テレビ各局では、NHK『クローズアップ現代』を皮切りに旧ジャニーズ事務所との関係性を検証する番組を放送。民放では日本テレビ、TBS系『報道特集』、フジテレビが社内調査し、「忖度があった」とする社員の証言などを伝えている。テレビ朝日もジャニー氏に関する性加害問題などを検証する特別番組の制作・放送する予定を発表している。