令和女子プロレスのハードヒット問題 元全女レスラーが一蹴「それが仕事なんだから」

令和女子プロレスに異常事態が起きている。今年3月、WWEとの契約満了とともに日本に帰国した“太陽神”Sareee。紆余曲折あって、10月10日、新宿FACEでのSEAdLINNNGの大会で“冷酷の悪魔”中島安里紗と史上3度目の“初タッグ”(当人たちが過去2回の記憶がないため)を結成することになったものの、対戦相手が一向に決まらず。理由はSareeeと中島が令和女子プロレス界屈指のハードヒッターのため、それがネックになっているという。

デビュー34周年を迎えた渡辺智子(左)と伊藤薫の“いとなべ”【写真:(C)伊藤道場】
デビュー34周年を迎えた渡辺智子(左)と伊藤薫の“いとなべ”【写真:(C)伊藤道場】

対戦相手がいないってホントなの?

 令和女子プロレスに異常事態が起きている。今年3月、WWEとの契約満了とともに日本に帰国した“太陽神”Sareee。紆余曲折あって、10月10日、新宿FACEでのSEAdLINNNGの大会で“冷酷の悪魔”中島安里紗と史上3度目の“初タッグ”(当人たちが過去2回の記憶がないため)を結成することになったものの、対戦相手が一向に決まらず。理由はSareeeと中島が令和女子プロレス界屈指のハードヒッターのため、それがネックになっているという。

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 結局、6日前になって、LEGENDの伊藤薫、渡辺智子(通称・いとなべ/渡辺はマーベラスに所属)という元全女(全日本女子プロレス)の両名に落ち着いたが、SEAdLINNNGの南月たいよう代表は、「団体設立から8年、最も決まらなかった」と苦笑した。

 だが、終わってみれば、「まさに女子プロレス!」といった肉弾相打つ魂のぶつかり合いがリング上で繰り広げられ、いかに全女出身者の二人が修羅場をくぐってきたのかが証明される結果に。結果は中島が伊藤を丸め込んで勝利した。

 そこで激戦を終えた渡辺を直撃すると、意外な答えが返ってきた。

「対戦相手がいないってそれホントなんですかねえ? なんでなのかな? 私が思うのは、世界(WWE)を経験したSareee、安里紗だったら全女が好き。そういうガツガツ来るような子たちと、今の子たちが試合をやったら、また違う自分に出会える選手って、一人でも二人でも出てくるんじゃないかと思う。みんな『あたりが強いから怖い』のか。たぶんそんな理由でしょうね。でも、それ仕事なんだから……って思いません? それでカネをもらっているんだから、どんな仕事だって来るものは拒まずでやったらいいと思うのに、すごくもったいないと思うし、不思議ですよね」

 実際、両者と対戦してみた感想を聞いた。

「予想通りでした。あたりは強いし、顔面に来るし、容赦しないし。私、ホント翌朝、首が回らなくて。首が元々悪いんですけど、全然動かなくて。夜には動くようになったんですけど、カラダの痛みって心地よくて。ちゃんと仕事やったなって気がするんですよ。嬉しかったですね」

 そう言って、渡辺は清々しいくらいに喜びをあらわにした。

中島安里紗(右)が渡辺智子に強烈なエルボーを見舞う【写真:(C)SEAdLINNNG】
中島安里紗(右)が渡辺智子に強烈なエルボーを見舞う【写真:(C)SEAdLINNNG】

全女スタイルの女子プロレスを残したい

 ちなみに今年3月、米国から帰国したSareeeは、会見で以下のように話している。

「プロレスなので、私は“闘い”だと思うんですね。なので、キレイとかわいいとか、いいですよ。もちろんそれもいいんですけど、その前にしっかりと“闘い”をやった上で、そういうことをやっていかないと」(『Sareee-ISM』開催決定会見でのSareeeの言葉より)

 もちろんこの発言は一部で物議を醸したが、これに対し渡辺は「今初めて聞きましたけど、でも、私もSareee派です。団体によっては、考え方が違う場合もあるじゃないですか。それはそれでいいんですけど、私がやってきたプロレスはそうじゃないし、やりたいのもそれではないので、Sareeeの意見は、確かにね、と思います。Sareeeは気も強いしね」と同意した。

 実は渡辺は、28日に伊藤道場で実施される道場マッチで、伊藤と組み、再び中島と対戦することが決まっている。中島のパートナーは、同じSEAdLINNNGの海樹リコだ。

「私たちだって、実は『“いとなべ”と対戦するなんて無理!』って思われているかもしれない。でもその“いとなべ”とやりたいって言ってくれる人がいるのはすごく嬉しい。だったら受けて立とうかってなりますよね。先輩だからってことじゃなく、遠慮なく来てほしい。あの海樹リコっていう子もすごくいいものを持っているし、もっと自信を持ってやってほしいですよね。私たちも闘うのは楽しみです。でもまた、次の日、首が動かなくなるのかな。でも、それが嬉しいからいいんですよ」

 そういってまた笑顔を見せた渡辺。話を聞いていると、今の選手たちとの圧倒的な修羅場の数の違いを感じる。

「普通にエルボーやられたって、頭の周りに星が飛ぶくらいはあるけど、それ以上飛ぶと、ヒヨコが飛ぶんですよ。ピヨピヨピヨって。もう目がチカチカしちゃうくらい、ガンガンに来るので、でもそのほうがこっちもガンガン行けるし、ホントああいう子は大事にしたほうがいいと思いますよ。でも、いつかなくなっちゃうのかなって思っちゃいますよね、寂しいですね。ああいうプロレスが私は好きなので」

 渡辺が言う通り、どうにかSareeeと中島には、そういった「あたりが強い」女子プロレスが受け継がれてはいるものの、それでも「絶滅危惧種」状態にある。だからこそ渡辺は、そういった女子プロレスを「残したい」と話す。

「今の女子プロレスって種類別になっているじゃないですか。お腹を出してコスチュームを着ている人たちとかアイドルチックなモデルさんみたいな人たちとか。それはそれでいいとは思うけど、いま女子プロレス界が『あれ?』っていう方向に進んじゃっているし、私たちが散々な思いをしてやってきたものとは違ってきちゃっている。だから、そうじゃないSareeeと中島がやっている女子プロレスは残していってほしいよね」

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