アドベンチャーゲーム確立の名作ゲームがAI化されていた 40年の時を経て大きく進化

『ドラゴンクエスト』シリーズのゲームデザイナー堀井雄二氏が1983年に手がけたパソコン用ゲーム『ポートピア連続殺人事件』は、のちにファミコンに移植されるなどアドベンチャーゲーム確立の立役者といわれる名作ゲームだ。プレイヤーは刑事となり、相棒のヤスに指示をしながら連続殺人事件の謎を解明する。

ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』【写真:ENCOUNT編集部】
ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』【写真:ENCOUNT編集部】

連続殺人事件の謎を解明する『ポートピア連続殺人事件』

『ドラゴンクエスト』シリーズのゲームデザイナー堀井雄二氏が1983年に手がけたパソコン用ゲーム『ポートピア連続殺人事件』は、のちにファミコンに移植されるなどアドベンチャーゲーム確立の立役者といわれる名作ゲームだ。プレイヤーは刑事となり、相棒のヤスに指示をしながら連続殺人事件の謎を解明する。

 そんな『ポートピア連続殺人事件』が、40年の時を経てスクウェア・エニックスよりAI技術の1つである自然言語処理(NLP)を体験するソフト『SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』としてリリースされている。かつての名作がAIを搭載し、どのように進化を遂げたのか体験してみた。

 アドベンチャーゲームを大きく分けると、自由に指示を入力するキーボード方式か、あらかじめ用意されている選択肢から指示を選ぶコマンド選択方式の2種類がある。『ポートピア連続殺人事件』のパソコン版ではキーボード方式、ファミコン版ではコマンド選択方式を採用していた。

 今回新たにリリースされた『ポートピア連続殺人事件』は、パソコン版同様にキーボード方式を採用しているが、その精度は旧作とまったく異なる。パソコン版では、コマンドを一言一句間違えないように入力しないと、指示として認識されなかったが、AI搭載版では、あいまいな表現でも指示として認識してくれる。

 事件に関係のない指示をすると「え?」「ちょっとよくわからないですね」と言われ、雑談で盛り上がるようなことは起きないが、「聞け」などのシンプルな入力に「聞き込みをしてみます」などと返事を返してくるヤスとの会話には、かつてのパソコン版とは一味違う感覚がある。猛者がYouTubeにアップロードしているタイムアタック動画を見ると、事細かに指示をしなくてもAIが理解している様子が伺える。

 大きく話題になった作品だが、当初予定をしていた自然言語生成(NLG)による雑談会話機能は、AIが非倫理的な発言をする可能性があるため削除されている。今後の研究によって環境が整えば提供されるとのことなので、楽しみに待ちたい。また、AIの言語認識レベルも若干低いように思える。ヤスと雑談で盛り上がれないだけでなく、調査指示でも「調べる」「教える」「移動する」など特定のワードが入力されていないと指示が成立せず、カタコトな日本語を使うことになってしまう。こちらの機能が追加されれば、自由度の高い遊びがさらに広がっていくだろう。

 パソコン版の発表から40年が経過し、事件の犯人を知っている人も多い中、改めて命が吹き込まれた今作は、AIとの対話式ゲームを気軽に楽しめる仕上がりだ。まだまだ発展途上ではあるが、今後のゲームとAIのコラボレーションに可能性を示してくれた作品といえるだろう。

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