桜庭大世にとっての父・和志 家では「普通のお父さん」…振り返る父の鉄拳「ゲームをやりすぎて」

寝技格闘技イベント「QUINTET」の5年ぶりのナンバーシリーズ「ReBOOT~QUINTET.4~」(神奈川・横浜アリーナ)に桜庭和志の長男・大世が出場。プロデビュー戦で柔道男子アテネ・北京五輪66キロ級金メダリストの内柴正人と対戦する。大会直前もニコニコの大世に話を聞いた。

プロデビューを迎える桜庭和志の長男・大世 【写真:ENCOUNT編集部】
プロデビューを迎える桜庭和志の長男・大世 【写真:ENCOUNT編集部】

不動産営業からプロ格闘家に転身…理由は「楽しみが大きそう」

 寝技格闘技イベント「QUINTET」の5年ぶりのナンバーシリーズ「ReBOOT~QUINTET.4~」(神奈川・横浜アリーナ)に桜庭和志の長男・大世が出場。プロデビュー戦で柔道男子アテネ・北京五輪66キロ級金メダリストの内柴正人と対戦する。大会直前もニコニコの大世に話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 大世のプロデビューの一報は瞬く間に拡散された。「桜庭DNAやいかに」などSNSには期待の声が多く上がっていたが、本人はあまり気にしている様子はない。それどころか「楽しみな気持ちが7割」と満面の笑みだ。

 柔道を10年間やってきた。小学校からスタートさせ、中学で魅力にドハマり。実力が伴っていないことを認識しながら高校は神奈川の強豪校に進学した。

「柔道推薦で入学するような柔道部でしたが、自分は勉強で受験して入部しました。母は反対していたのですが、父は『やりたいならやってみれば』のような形で。高校2年生までは66キロ級、その後は減量がきつくて73キロ級です。高校は神奈川ベスト8まで行きました。大学は校内予選で勝てなくて試合に出られなかったです」

 現在、25歳。一般的には社会人3年目の代だ。これまでは不動産会社で営業をやってきたという。なぜプロ格闘家への道を選んだのか。いたってシンプルだった。

「内容的にはキツイ仕事だったんですけど、『社会人がつまらないから』とかではないんです。仕事も楽しかったし、尊敬できる先輩もいました。それでも格闘技をやった方が楽しみが大きそうだなって」

 格闘技シーンの最前線で戦ってきた父・和志は長男のプロデビューに「どれくらいの考えで言ってるのだろう」と難しい顔をしていた。大世の言う「楽しい」はまた違った意味だった。

「格闘技でご飯を食べられるのって日本人は少ない。それはもちろん分かっていて、でもその道の方が楽しいと思うタイプ。不動産もですけど、歩合で決まる会社でした。そういうところにとことん行きたい派。僕の好きだった塾の先生の言葉『いばらの道を行け』が頭に残っていますね」

 プレッシャーはないわけではない。それでも「深刻に考えていない」と白い歯を見せる。

「良いプレッシャー程度です。勝っても負けてもお父さんが絡む。負けたら『桜庭の息子なのに強くねぇじゃん』、勝ったら『桜庭和志がお父さんだから』ってなるかもしれない。でも、僕は僕なので」

格闘家としての父は「世界一すごいお父さん」

 そんな父は大世にとってどんな存在だったのか。

「本当にみんなと一緒です。どちらかと言うと自由に育てられてきましたね。『やりたいことをやりなよ』みたいな。優しいわけではないけど、良い意味で放任主義です」

 そんな父の鉄拳が飛んできたことがある。「中学のときにキッズ携帯だったんですけど、iPodタッチを買ってもらって、ゲームをやりすぎて成績が下がったときに一番怒られました。そのときは拳が飛んできました(笑)。めっちゃ重たかった。最近は頑固親父になりつつあります」と笑った。

 格闘家としての父は「世界一すごいお父さん」というが、あまり父の試合を見たことはない。幼少期は入場までしか見なかったし、中高時代には酔っ払った父がする試合自慢を聞く程度だった。それでもプロになることを意識した途端に見方は変わった。

「入場のイメージが強いですけど、本当に面白い試合ができる人。お客さんの歓声に合わせて盛り上げることができる。自分の世界を持っている戦い方をするイメージがあります。人が見て面白いと思わせることが仕事でもある。そこが1番勉強になりますね。周りが望んでいないかもだけど、そういう選手になりたいです」

 寝技格闘技がプロとしてのデビュー戦となるが、今後はどんな格闘家を目指しているのか。

「いま、K-1のジムでキックボクシングの練習もしています。楽しいし、すごい難しい。キックの試合も小さい試合から出てみたい。いろいろやりたいが根底にありますね」

 初戦を迎えるにあたって楽しさと怖さの比率は7対3。相手は五輪金メダリストだが、「柔道じゃない」ことが突破口だ。怖さについて「注目してもらっていますけど、ぶっちゃけお父さんの力でしかない。負けるか面白くない試合をしたらみんなが飽きてしまう。これで負けたら……みたいな部分です」と明かす。

 それでも楽しみが勝ってしまうのが大世だ。「入場曲があって、いろんなお客さんがいると思う。見られることが好きなので」とニカっと笑ってみせた。

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