“悪魔”中島戦の翌々日、傷だらけの新王者・Sareeeが激白「いつ何時、誰の挑戦でも受ける!」
「SEAdLINNNG(シードリング)~8周年大会~」(8月25日、後楽園ホール)で行われた中島安里紗 VS Sareeeによるシングル王座のタイトル戦。令和女子プロレスを震撼させた両者の一騎打ちから2日、新王者に輝いたSareeeに話を聞いた。
安堵の中島に「らしくない」とSareee
「SEAdLINNNG(シードリング)~8周年大会~」(8月25日、後楽園ホール)で行われた中島安里紗 VS Sareeeによるシングル王座のタイトル戦。令和女子プロレスを震撼させた両者の一騎打ちから2日、新王者に輝いたSareeeに話を聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
激闘から2日、Sareeeは東京・大森のW-BOX(伊藤道場)にいた。その日行われる道場マッチで、Sareeeは高瀬みゆきと組み、Sareeeの師匠である伊藤薫、田中きずなと対戦した。驚いたのは、登場したSareeeの左脇腹に、大きな湿布が貼ってあったこと。
さらに試合後、話を聞かせてもらう際に気づいたが、両腕には大きなアザがある。左腕だけ見ても、その大きなアザ以外に、いろいろと激闘の痕跡が見てとれた。
「私もですけど、向こう(中島)もそうだと思いますよ」
Sareeeはそう言ってニコリと笑いつつ、新王者のインタビューがはじまった。まず、今の心境から聞いていくと、Sareeeはこう答えた。
「(ベルトが)無事に私の腰に来ました。すごい(重量が)重たいです。(ベルトの上部に)赤も入ってますし、私にピッタリのベルトだなって思っています。このベルトを巻くには本当にキツい試合でしたね。本当に簡単に手に入ったベルトじゃないし、前哨戦を2回して、本番のベルトを賭けた試合で私が見事勝利できたので、重みのあるベルトですね」
試合は戦前の宣言通り、腕折りに徹した。
「結果的に言うと、折ることはできませんでしたけど、腕攻めでいきましたね。(中島の)あの(キラー)エルボーがヤバいので、あれをいかに食らわないようにするか。最終的にはすごかったですね。やってもやってもエルボーで返してくるっていう」
Sareeeの言う通り、お互いが意地になってエルボーを撃ち合う場面は、文字通り“戦慄”を覚えた。
「女子プロレス界の強さの象徴、中島安里紗。『このベルトは強さの象徴だ』って言ってましたけど、試合をしていて、あ、そうなんだなと。なかなかこんなにお互い殴り合える相手って、そうそういないと思いますし、なんの遠慮もなく、ガンガン行けるっていう。そんな相手に出会えてよかったなって今は思いますね」
そこまで話すと、Sareeeは「でも……」と口にしながら、こう続けた。
「あんなすがすがしい顔をしてましたけど、なんだよ、悪魔らしくないなって。なに? なに? って感じですよね、ちょっとね」
試合後、中島は「敗れはしたが、それでもやりきった」と雰囲気を感じさせながらコメントしていたが、なぜか安堵(あんど)の表情を浮かべているように見えた。“冷酷の悪魔”中島としては、ベルトの重圧から解放された気分なのか。
「でも、それってなんか中島安里紗らしくないなって思いますよね」(Sareee)
Sareeeの言う通り、試合後の中島は「うーん……(視線を斜め上にしながら)、私らしくないかもしれないけど」と口にした後、「ちょっとベルトはいいかな。今は考えてないです」と答えている。確かにらしくない。本当に解放感なのか、それとも他に意味があるのか。真意は分からないが、“悪魔”の言動だと思うと、これ以上ない謎が残る。
「Sareee-ISM」で敗れた橋本千紘にもリベンジを
再びSareeeの話に戻ろう。この発言にSareeeは、「らしくないですね。でもいいんじゃないですか。そんな気持ちだったらもう二度とこのベルトはあの人の腰には巻けないと思いますよ」と中島を突き放した。
中島も分かっているだろうが、Sareeeのこの言葉は実感がこもっていると思う。それだけ必死で獲得したベルトだからこそ、欲してもいない人間が手に入れられるほど安っぽくはない、という意味だ。なによりベルトの価値を高めようという気概を感じる言葉だった。
「試合をしていて、こんなにもキツい。精神的にも。橋本千紘選手と戦った時とはまた違いましたね」
そう言ってSareeeは日本復帰初戦となった、「Sareee-ISM」(5月16日、新宿FACE)での橋本戦を引き合いに出した。
「私、本当に、復帰して3か月経ちましたけど、橋本選手とシングルした時よりも、本来のSareeeに戻ってきていると思います。体力的にもブランクっていうものが、日本のリングにはありましたけど、そういうのももうないって言えるので。だからこそ、中島安里紗に勝って巻けたベルトだと思いますし、本当にまた再戦したいですよ、橋本選手とも」
「Sareee-ISM」では橋本に敗れたSareeeだが、今なら橋本にリベンジできる、という自信を感じるひと言だった。なにせ中島とのあれだけ壮絶な試合を制したのだ。自信につながらないわけがない。
事実、Sareeeは「でも、本当に胸を張って、いま女子プロレス界の強さの象徴だって、このベルトを取って、なお、中島安里紗に勝ったからこそ言えることだと思いますので、胸を張って行きたいですね」と話した。
その発言を裏付けるかのように、Sareeeは中島戦の翌日、自身のSNSには「第10代SEAdLINNNG BEYOND THE SEA Single Champion になりました」と書き記した後、以下のようにつづっている。
「みなさんの心強い応援、本当に助けられました。心から感謝します。”強さの象徴”中島安里紗に勝ってこのベルトを巻いたからこそ声を大にして、胸を張って言うことができる。私が女子プロレス界の”強さの象徴”。誰もが認めるくらい、極めていきたい。まだまだやらなきゃいけないことだらけ。私のプロレス道はこれから先も続く」
そしてSareeeの投稿は、この言葉で締めくくられている。
「いつ何時、誰の挑戦でも受ける!」
もちろんこの言葉は、Sareeeが多大なる影響を受けた、現役時代のアントニオ猪木が口にしていた言葉でもある。
「(スターダムの選手)誰の挑戦でも受け……たい」
「リング上で言えなかったので、SNSに書きましたけど、その通りで、私に勝てるヤツがいると思うなら挑戦して来いよっていう。ちょっと上から目線ですけど、本当にそう思っているから。あのSEAdLINNNGの8周年のリングでシングルマッチをしてベルトを巻いて、次の挑戦者が誰も上がってこないっていう現実。あ、そんなもんなんだっていうか。残念だなっていう。みんなあの試合を見てビビちゃってるのか知らないですけど。私は『いつ何時、誰の挑戦でも受ける!』。その気持ちでいます」
実際、Sareeeは試合後のインタビュースペースでこう語っている。
「戦いたい選手はいっぱいいますね。スターダムの選手とかめちゃくちゃ戦いたいですね。逃げも隠れもしませんし、むしろ、言ってきてくれないかなって感じですかね。すべてはタイミングだと思うので」
これに関してSareeeは、「スターダムの選手、誰でもいいわけじゃないので、そのレベルに達している選手が来てくれないと。それをちょっと付け足し忘れちゃったなあっていうのはありますね」といったんは答えたが、「まあ、でもそれでも挑戦して来たいんだったら、全然受けて立ちますけどね」と補足した。
「自分が達してないと思っても、本人が絶対に負けない、絶対に取ってやるって思うんだったら、そんな面白い相手はいないじゃないですか。だから、そうですね。誰の挑戦でも受け…たいですね」(Sareee)
こうしてSareeeの言葉を書き記しながら思うのは、この言葉を吐けるSareeeはすごい。正直そう思う。それだけ自信があるのだろうが、それでもなかなか吐ける言葉ではない。
とはいえ、Sareeeが腰に巻いたのはSEAdLINNNGのベルトだ。だからまずはSEAdLINNNG界隈で、タイトルの防衛をするのが筋ではないか、との見方も成り立つ。そんな思いで、「Sareeeさん的に誰とかってありますか?」と水を向けると、「ない……ですね。ちょっと考えてます、今のところ。あそこで来ると思ってましたからね、誰かしら」との返答。
それでも、ようやくと言った雰囲気で名前が出た。
「海樹リコとか何してるんだって思いますよ。タッグのベルトを巻いて満足しているのか知らないですけど、自分の団体のね、2人しかいない所属選手のうち、先輩(中島)が取られているんだから、お前が上がってこなきゃどうするんだよって話ですよね」とSEAdLINNNG所属選手・海樹リコの名前が出たが、Sareee的には、すぐに名乗りを上げて来なかったのが不満なようだ。
だからこそ、「ちゃんと教育しかほうがいいですよ。南月たいようさん(代表)も中島安里紗も、はい」としったを込めた。
いずれにせよ、新王者・Sareeeによる令和女子プロレスの「革命」は次なるページに突入した。おそらくSareeeが再び業界を“震撼”させる日もそう遠くはあるまい。Sareeeはたとえ満身創痍でも常に前を向いて進んでいく。それを感じさせる新王者・Sareeeの所信表明だった。