新垣結衣主演で映画化も決定 『違国日記』の魅力とは? 登場人物の“孤独”に共感の声
さまざまな人の“在り方”を描き、多くのファンから共感の嵐を呼んだヤマシタトモコ氏の『違国日記』。祥伝社の漫画雑誌『FEEL YOUNG(フィール・ヤング)』で連載されていた本作は、2023年8月8日に最終巻である11巻が発売された。
多くの現代に生きる人たちの心を捉えたストーリー
さまざまな人の“在り方”を描き、多くのファンから共感の嵐を呼んだヤマシタトモコ氏の『違国日記』。祥伝社の漫画雑誌『FEEL YOUNG(フィール・ヤング)』で連載されていた本作は、2023年8月8日に最終巻である11巻が発売された。
物語は、少女小説家・高代槙生(こうだい・まきお)と、事故で死んでしまった槙生の姉が残した一人娘・田汲朝(たくみ・あさ)を中心に、彼女らをとりまく人々の姿が描かれている。
24年には、俳優・新垣結衣の主演で映画化も決定している『違国日記』の見どころを、キャラクター紹介を交えて解説する。
主人公の槙生は、少女小説家として活動している。極度の人見知りだが、姉夫婦の葬式で遺児となってしまった姪(めい)の朝が親戚中をたらいまわしにされているのを見逃せず、自分が引き取ることを決める。
フィール・ヤング / on BLUE 編集部のnote「ヤマシタトモコに『違国日記』のことを聞いてみよう(2)」(19年8月16日更新)によると、作者のヤマシタ氏は19年5月12日に行われたトークイベントのなかで「メインテーマのひとつが発達障害」と語っており、メインの登場人物を発達障害の人にしようと決めていた、と明かしている。
他人と過ごすことが極端に苦手な槙生に対し、槙生に引き取られることになった姪の朝は、誰かと一緒にいたいタイプのキャラクター。朝が、槙生の小説家仲間や、信念を持って生きる同級生などと自分を比べて「あたしだけなんもないじゃん」と落ち込む姿は、日々悩み葛藤しながら生きている多くの人の心を打つだろう。
作中では、朝の心に巣食う“孤独”が「砂漠」として表現されており、SNS上では「朝の心の砂漠に共感する」「朝の姿を見て高校生だった頃を思い出す」など、多くの読者から共感の声が上がっている。
槙生の元カレであり、その後も槙生の友人として登場する笠町信吾は、男らしさを重んじる思想、いわゆる「マッチョイズム」に苦しめられた過去を持っている。その原因は、笠町と彼の父親との関係性に起因していることが物語のなかで明かされており、大人になった今でも父親のことを恐いと思う反面、愛されたいと願う心の葛藤が描かれている。
特に32話では、日常のさまざまな場面で無意識のうちに浸透しているマッチョイズムについて言及されており「弱みを見せない」「泣き言を言わない」など男性特有の生きづらさに苦しむ笠町の苦しみが描かれている注目回だ。
最後に紹介するのは、朝の幼なじみであり親友の楢えみりだ。同性愛者であり、交際相手がいるが、そのことを周囲にカミングアウトしているわけではなく、人知れず孤独を感じている姿が印象的だ。
作中では明言されていないものの、自身のセクシャリティーについて槙生に相談している描写があり、やがて親友の朝にも打ち明けることになった。
たとえ親友であっても、朝の悪気のない偏見に触れて動揺する様子も描かれており、ティーンエイジャーならではの友人関係のリアルさが見事に表現されているのも見どころだ。
このように、『違国日記』にはさまざまな立場におかれている人々の視点での“孤独”が描かれている。SNS上には「人生の本棚に入った」「ヤマシタトモコという作家に出会えたこの人生に感謝している」という声が多く寄せられており、『違国日記』が多くの現代に生きる人たちの心を捉えていることが分かる。
『違国日記』を読みながら、自分の“孤独”に声を傾けてみるのもいいかもしれない。