元CoCoの料理研究家・宮前真樹さん、50歳を機に“お宝断捨離” アイドル時代の衣装ケース「恐る恐る開けて」
アイドルグループ・CoCoの元メンバーで現在は料理研究家の宮前真樹さんが、SNSに投稿したCoCo時代の衣装写真が話題になっている。1994年にグループが解散してから30年間、一切触らずに実家に置いたままだった「お宝」。なぜ、このタイミングで衣装ケースを開けようと思ったのか。50歳になり、新たな転機を迎えた宮前さんが今の心境を語った。
30歳で芸能界引退
アイドルグループ・CoCoの元メンバーで現在は料理研究家の宮前真樹さんが、SNSに投稿したCoCo時代の衣装写真が話題になっている。1994年にグループが解散してから30年間、一切触らずに実家に置いたままだった「お宝」。なぜ、このタイミングで衣装ケースを開けようと思ったのか。50歳になり、新たな転機を迎えた宮前さんが今の心境を語った。(構成=福嶋剛)
今年7月、アイドル時代の衣装を断捨離しようと思って衣装の写真をツイッター(X)に投稿したら、ビックリするくらいたくさんの人からコメントをいただきました。なぜ、今になって断捨離をしようと思ったのか、お話をしたいと思います。
CoCoは、コンサートが終わると、衣装やアクセサリー類は毎回クリーニングに出して、再びメンバーに渡されていました。事務所やグループによって管理の仕方は違いますが、私たちは「家に持って帰って預かっておいて」と理解していました。
実家に持ち帰り、衣装ケースにぎゅうぎゅうに詰めて、「いつか落ち着いたら整理しよう」と思いながら、それを押し入れにしまいました。あれから30年。何度も開けるタイミングがあったのですが、開ける気にはならなかったんです。家族にも「実家に置いてあることを忘れてほしい」そんな気持ちで置きっ放しにしていました。
「なぜか」かというと、今やっている仕事を頑張らなくちゃいけないので、過去に引きずられたくなかったという理由が1つ。CoCoという存在があまりにも大きかったので、その後、それぞれの人生を送っているのに「あの頃がピークだったよね」と思われるのが悔しい。その思いもあって「アイドル時代に乗っからないで生きていく」と決意し、前だけを向いてきました。
もう1つは、ネット上の誹謗(ひぼう)中傷です。30歳になって初めて自分のパソコンを買い、人生初のエゴサーチをしました。すると、私への悪口がびっくりするぐらい書かれていました。アイドル時代も攻撃されやすいタイプだったので慣れていたつもりでしたが、あまりにも攻撃的で、死にたくなるような言葉の数々に「私ってこんなに嫌われていたんだ」とファンの人たちに恐怖を感じてしまいました。それから、「やっぱり、私には価値がないのかな」って真剣に悩んだ時期もありました。そして、克服するために『過去を封印しよう』と思い、やってきました。
そんな怖さから救ってくれた人が、中嶋美智代ちゃんです。初めは『ネットで近況を発信するのは怖いから』とちゅうちょしていたのですが、「ブログから始めてみたらどう」とアドバイスをくれて、美智代が私のブログを全部作ってくれました。15年前のことですが、やってみるとエゴサーチした時とは違い、好意的なコメントやファンの優しいメッセージをたくさんいただきました。そして、『誹謗中傷は一部の人たちだったんだ』と気が付きました。
それから恐る恐るツイッターを始めてみました。最初は今の仕事に支障が出ないように、ファンとの距離を一定に保っていました。アイドル時代の話もあまりしないようにしていましたが、50歳になるタイミングで『思い切ってバースデーライブをやってみよう』と思い立ちました。そして、去年の夏ぐらいに「ライブをやります!」と発表したら、ファンの方たちがとても喜んでくれてSNSに対する印象が変りました。
それが大きな転機となり、今年1月に開催したバースデーライブでファンと直接会ったことで、「私が経験させてもらったことは本当に幸せなことだったんだ」とあらためて思えました。自分がかたくなになって感じていた“恐怖”から解放されました。50歳という年齢もあったと思います。20代の頃、「30歳になったら新しいことをやろう」と思い、30歳で芸能界を引退しました。そして、料理の道に進んで、漠然と「40歳になったら自分のやりたいことができる」と信じてやってきたのですが、40代はようやく土台ができたくらいでした。そして、50歳になって少しずつ形になってきました。「歳を取るって悪いことじゃない」と思えたのは、「まあ、仕方がないかな」といい意味で割り切りが早くなったからでしょう(笑)。そんなタイミングで親から「衣装ケースどうするの?」と聞かれて、「じゃあ、思い切って断捨離するか」となったんです。
そして、実家から衣装ケースを持ち帰り、恐る恐る開けてみました。置きっぱなしだったので、「汚れていたらどうしよう」と心配しましたが、状態が良くて驚きました。色あせもしていないし、当時の記憶も一気によみがえって整理が楽しくなりました。「処分する前に記録に残そう」と衣装や出演番組の台本を撮影してSNSにアップしたら、ファンのみなさんから「30年間ずっと大事にしてくれてありがとう」「CoCoちゃん愛を感じる」というメッセージをいただきました。また、同じくらい「捨てないで」とお願いされました。
特にバズったのは、テレビゲーム『ストリートファイターII』のキャラクター、春麗(チュンリー)の衣装でした。春麗のテーマソング(1992年『夢へのポジション』)を歌った時の衣装で、たくさんの方から「懐かしい」と。友達の娘さんからは「真樹ちゃんて、春麗だったんだ」と言われて、世代を超えて春麗が認知されていることに気が付きました(笑)。当時は映画化されて水野美紀さんが春麗役。コスプレ文化もなかった時代なので、個人的に私の方は「イロモノ扱いなのかな」と思っていたのですが、スタッフさんの熱意でいろんな企画に出演したことを思い出しました。
ファンのみなさんは私が覚えていない衣装にも即座に「いつの時代の衣装です」と返信をくださいました。私以上に私たちのことを大切に思っていてくれて、私が忘れていた記憶もファンの人は『自分たちのことのように大切にしているんだ』と気が付きました。断捨離を始めてはみたのですが、そんなみなさんに喪失感を与えたくないと思い、「CoCoの5分の1の大切なものを処分するのは止めよう」と断捨離を中止しました。
通販番組の販売員に初挑戦「厳しさを学びました」
今年は大きな変化もありました。バースデーライブを終えた時、「夢の時間はこれで終わり」と考えていたのですが、周りの仲間たちから「気負わずにこれからも歌っていけば」と言われました。私も芸能界にいた時よりも、今の仕事を長くやってきたので「ご褒美だと思って許してもらえるかな」と思い、「歌いませんか」と声を掛けていただいた時は『前向きに検討しよう』と考えるようになりました。すると、イベント出演で呼んでいただく機会も増え、10月にribbonの松野有里巳ちゃんとQlairの今井佐知子ちゃんの3人で乙女塾のイベントを開催することになりました。
去年から取材の話も多くいただき、CoCoの思い出話をする機会も増えたのですが、あくまで私はグループの5分の1です。ファンのみんなはりえちゃん(三浦理恵子)、幹代ちゃん(大野幹代)、えりちゃん(羽田惠理香)、あづさちゃん(瀬能あづさ)の話も聞きたいと思うし、私もCoCo代表ではないので本当は「私の主観で昔話をすること自体どうなんだろう」と迷っていました。だけど今は「これは順番だ」と考えるようにしています。「いつか話したい」「歌いたい」というメンバーが出てきたら、「次はその人にバトンを渡そう」って。そう考えたら気持ちが楽になりました。
今年は本業で初めて通販番組『ショップチャンネル』の販売員としてデビューしました。もともと、私のスイーツブランドで作ってきたオリジナルの寒天ゼリーを共同で商品化させていただきました。タレントと違い、自分の商品をカメラの前で販売するってすごく大変です。放送中にどれだけ売れているのか、それがリアルタイムで分かるのですが、初出演の時は目標の8割で完売できませんでした。今まで自分で作った商品を店頭に立って直接販売するという仕事をしてきたので、1人のお客様に足を止めてもらうことや1000円の商品を買っていただく大変さは分かってはいました。それでも、通販番組を通してあらためてその厳しさを学びました。これからも出演を予定しているので、次回はもっとアピールしていきたいですし、いつかこれまでずっと作ってきたロールケーキを通販番組でも商品化したいというのが私の目標です。
他にはエルマーという私の愛犬との思い出を残したくて、YouTubeチャンネルも始めました。日本橋三越さんと一緒にワンちゃんのご飯やケーキのワークショップを定期的にやったり、メーカーさんとのコラボで体のケアを考えたワンちゃんのご飯レシピを共同で作ったりしています。そして、私のやりたいこと、やってきたことを1つにつなげて形にしていく50代にしたいです。大変なことも多いですが、いつも幸せなことをイメージしながらマイペースでやっていきたいです。
□宮前真樹(みやまえ・まき)1973年1月16日、新潟・十日町生まれ。89年、アイドルグループ・CoCoの一員としてデビュー。「食」を本格的に学ぶため、30歳で芸能界を引退。フランスの名門料理学校ル・コルドンブルーで学び、ロールケーキブランド「maq bon」を立ち上げ、グルテンフリー・低糖質ロールケーキを販売。国際食学協会親善大使・名誉理事を務める傍ら、自らの経験を基に「体に優しい食事」を提案して「犬の食事」にも力を入れている。