小5で俳優目指した理由はいじめ 紗葉「置かれた環境から逃げられる世界がテレビの中」

京都芸術大学映画学科の俳優コースや養成所に通う学生ながら昨年、映画『夢見るペトロ』(田中さくら監督)に主演し、第16回『田辺・弁慶映画祭』で俳優賞を受賞した前田紗葉(すずは)。2020年にはNHKの連続テレビ小説『おちょやん』にも撮影所のメイク役で出演している。豊かな才能を感じさせる前田が今春、大学を卒業し、プロの俳優として本格デビューを果たすため芸能事務所に所属した。芸名は紗葉。紗葉に芝居との出会いや今後の抱負、目指す俳優像を聞いた。

実力派俳優を目指す紗葉
実力派俳優を目指す紗葉

第16回『田辺・弁慶映画祭』で俳優賞受賞 著名な監督たちが才能絶賛

 京都芸術大学映画学科の俳優コースや養成所に通う学生ながら昨年、映画『夢見るペトロ』(田中さくら監督)に主演し、第16回『田辺・弁慶映画祭』で俳優賞を受賞した前田紗葉(すずは)。2020年にはNHKの連続テレビ小説『おちょやん』にも撮影所のメイク役で出演している。豊かな才能を感じさせる前田が今春、大学を卒業し、プロの俳優として本格デビューを果たすため芸能事務所に所属した。芸名は紗葉。紗葉に芝居との出会いや今後の抱負、目指す俳優像を聞いた。

 まずは俳優を目指したきっかけを尋ねた。

「私は一人っ子で、小学生の時はテレビの前に座って一日中、ドラマや映画を見るような子でした。当時、学校でいじめにあい、人間関係で悩むことがあっても誰にも話すことができず、生きることを窮屈に感じていました。そんな時、自分の置かれた環境から逃げられる世界がテレビの中だったんです。俳優という職業を知り、将来の夢を聞かれると俳優と答えるようになっていました。私にとって俳優は自分の人生から逃げられる仕事。他人の人生を生きることができる仕事。そう思って目指したのが小5の時でした。その後、中2になって養成所に入りました」

 今は、さわやかな23歳の女性だが、俳優がつらく切ない思いから解放してくれる仕事と感じたのが小5とは衝撃的だ。続いて『夢見るペトロ』についても尋ねた。大切な人が遠ざかっていく寂しさや喪失感を抱えながらも、前を向こうとする少女を描いた作品。現実と幻想、現在と過去の境界線上でさまよう主人公を巧みに演じた。

「撮影中にずっと思っていたのは、どこにでもいるような女の子の思いのリアルさを素直に演じたいということでした。監督の実体験でもある作品。監督の頭の中にある確立された世界に入るのは難しかったです」

 芝居の魅力をどう感じているのだろう。

「エンターテインメントは人に希望を与える力を持っています。私も実際に映画やドラマのおかげで救われました。おこがましいですが、表現者として私も見てくれる人の日常に少しでも彩りを添えていけるような俳優を目指さないといけないと思っています。最近は、自分のやりたいと思うことほど、大変で、楽しいと感じることは少ないです。でも作品を見てくださった観客の皆さんの表情を見た時、やって良かったと感じます。やはり心の底には芝居は楽しいという気持ちがしっかりあると思います」

 養成所に通っていた15歳の時には『無限の住人』(三池崇史監督)の撮影にエキストラとして参加した。初めての撮影現場だった。

「私は見る物すべてが初めてで、キャストの方々がどんな芝居をして、撮影の合間はどうすごし、スタッフの方はどう動いて現場が回っているのかしっかり観察していました。大勢のエキストラの中で、そんな私の姿を三池さんのスタッフの方が見てくださっていて、三池さんが総監督の19年放送のドラマ『ひみつ×戦士 ファントミラージュ!』に呼んでもらい、せりふも頂いて出演しました」

 今年は阪本順治監督の『せかいのおきく』にも出演。大学の先生たちが紗葉の才能を見抜き、推薦した。21年の『燃えよ剣』のオーディションでは原田眞人監督に「目が良かった」と絶賛された。最近も『夢見るペトロ』を見た大友啓史監督にほめられたという。

「大友監督には『芝居は芝の上に居ると書きます。登場人物は映画の中、物語の中に、実際の人物として存在していないといけない。まさにそれをあなたはできていた』と言っていただきました。『ピュアに素直に今しかできない芝居をしていた』とも。うれしかったし、もっと成長した姿を見てもらいたいと思いました」

 著名な監督たちが認める才能。あらためてプロとして生きていく覚悟を聞いた。

「見てくださる方に希望を与えられたり、作品に登場する私を見て、楽しかったとか、明日も頑張ろうと思ってくれたりしてもらえるような女優になりたいなと思います。新人の段階なので、とにかく数をこなしていくことが今は一番大事かなと考えています。将来、大河や朝ドラなど大きな作品に出演したり、主役級というのももちろん目標ではありますが、今は数をこなして役の幅を広げる。自分を知ってもらうことが一番大切だと考えています」

 目標とする俳優像はどうか。

「黒木華さん、安藤サクラさん、田中裕子さんです。リアルさを追求し、独特な雰囲気を持ちながらしっかりと演技で評価されている方々。私も演技力のある実力派と言われる俳優になりたいです」

 最後に芸名を紗葉にした理由も聞いた。

「紗葉という漢字を純粋に気に入っていて、その漢字を残したいと思っていました。14歳から養成所で芝居の勉強をしていましたが、今回、一からのスタート、勢いで臨みたいと思ってこの名前にしました。前田をなぜつけなかったかというと、特に理由はないです(笑)。前田という名前の人は多いですが、紗葉は希少。すずはと読める人は少ないと思います。認知してもらえるよう仕事で頑張るつもりです」

□紗葉(すずは) 2000年4月26日大阪生まれ。17年に映画『無限の住人』、18年『スカーフ』、23年『せかいのおきく』『花心 ファーシン』に出演。ドラマは19年にNHK『みをつくし料理帖スペシャル』、20年NHKの連続テレビ小説『おちょやん』にも出演。舞台は17年『夜明けの前がいちばん暗いの』、『午前5時47分の時計台』。CMは17年に『サントリー緑茶 伊右衛門』、19年『OPPO Reno A』など。特技は水泳、ピアノ・エレクトーン。趣味は料理、お菓子作りとカメラ。所属事務所はオールウェーブ・アソシエツ。

次のページへ (2/2) 【写真】「セクシーに憧れるお年頃」と紗葉が投稿したキャミソール姿
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