新日・小島聡、人生初の“鼻テープ”はがし 残虐行為の全日本・斉藤レイ「クソまずかった」
「鼻テープ 君がむしって食べたから 8月19日は鼻テープ記念日」。小島聡(新日本プロレス)が人生で初めて鼻テープをむしり取られた。24年間、愛用してきた鼻テープ(鼻腔拡張テープ)が、全日本プロレス「双子の野獣兄弟」の弟・斉藤レイによってはがされてしまうという衝撃の大事件が勃発したのは8・19東京・後楽園ホール大会だった。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.159】
「鼻テープ 君がむしって食べたから 8月19日は鼻テープ記念日」
小島聡(新日本プロレス)が人生で初めて鼻テープをむしり取られた。24年間、愛用してきた鼻テープ(鼻腔拡張テープ)が、全日本プロレス「双子の野獣兄弟」の弟・斉藤レイによってはがされてしまうという衝撃の大事件が勃発したのは8・19東京・後楽園ホール大会だった。
この日、開幕した10回目の全日本・王道トーナメントは他団体、ジュニアもヘビーも入り乱れ多士済々の百花繚乱。入場式から小島が1回戦で対戦するレイに襲撃されるなど不穏な空気が充満していた。
意外にも王道トーナメント初出場の小島は、超ヘビー級の体をふる稼働させパワーで押し込んでくるレイの豪快な攻めに苦戦していた。エプロンで動けない。その時だ。何と鼻テープを無慈悲にむしり取られてしまった。
「あーーーーーッ!」という悲痛なさけび。それは絶叫に近かった。客席はどよめく。マスクマンがマスクをはがされた時はショックが大きく、しかも恥ずかしいという。小島は後日「マスクはぎにあったマスクマンの気持ちが、少し分かった気がする」と振り返っている。
しかもレイは何とむしった鼻テープを口に入れた。まさに「むしゃ、むしゃ」と食べ出したが、二口、三口で「まずい」とばかりに吐き出した。
24年間の長きに渡り、誰も手を出さなかった言わば小島の「守護神」鼻テープがむしり取られた上に食べられるという極悪非道な残虐行為。被害者の小島だけでなく、その場を目撃した全員の背筋が凍り猛暑も吹っ飛んだ。
思いもよらなかった攻撃に小島は「一瞬、真っ白になってしまった」。精神的ダメージはいかばかりか。ある意味、大技を喰らうよりも衝撃だったかも知れない。だが「すぐに怒りが充満してきた」と振り返っている。
鼻テープはなくても、パワーも気力も大爆発。怒りの剛腕ラリアットを連発しレイをフォール。見事に1回戦突破、8・22東京・新木場大会では野村卓矢を退け、準決勝(8・27愛知・名古屋国際会議場)VS石川修司に進出した。
ベスト4(小島、石川、諏訪魔、本田竜輝)が勢ぞろいしたリング上で、小島は意気込む本田に「2000年2月11日生まれのお前には、まだまだこのトーナメントの荷は重すぎる。ここは1970年9月14日生まれのこの俺が優勝してやる」とアピールし、ファンの歓声を浴びた。
マスクはぎは即反則負けも鼻テープはぎは反則にはならない
小島といえば「行っちゃうぞ、バカヤロー!」と鼻テープが代名詞。「ファンがいろいろな色やデザインを描いてプレゼントしてくれる」とニッコリ。まさに体の一部なのだ。
鼻テープは鼻の通りをよくするためのもので、3割以上も通気が良くなるという。就寝時に使用する人が多いが、スポーツ時に使うことにより効果が上がると知られてからは使用するアスリートも増えた。
プロレスでは、相手のサポーターを外したり、テーピングをむしったりする攻撃は以前からあったが、小島の鼻テープは、聖域なのかアンタッチャブルなのか、なぜか今まで誰も手を出さなかった。ファンの間では「小島の鼻テープに最初に手を出すのは誰か」と言われ、鈴木みのる、鈴木秀樹、拳王などの名前が挙がっていた。
ところが実際に行ったのは、大穴のレイ。双子のため、デビュー当初は見分けがつかないと言わるほど似ていた兄・ジュンと弟・レイの斉藤兄弟だったが、ここに来てレイの大型化とワイルド化が進み、個性の違いがハッキリして来た。
小島の大事な鼻テープを「クソまずかった」と罵倒したレイは「まだまだ、これからだ。小島と対戦するとき、いや、いつでもどこでも『取っちゃうぞ、バカヤロー!』だ。覚悟しとけ!」と意気込む。常在戦場。しつこく小島を、小島の鼻テープを狙うことを宣言した。
長年の小島ファンは「ひどい。コジがかわいそう」と憤慨。レイのファンは「良くやった! すごい発想」と大絶賛。賛否両論あるというのはそれだけ衝撃的だったということに他ならない。
「鼻テープ(ブリーズライト)を試合で着け始めて24年。初めてそれを食べる人間と闘った記念すべき日。2023年8月19日。小島聡vs斉藤レイ」と、小島本人もショックを隠しながらつぶやいている。一生忘れらない日となったことだろう。
翌日には「昨夜、鼻テープを取られてエネルギーは減ったけど」とダメージの大きさを認めつつも「新しい鼻テープがあるので大丈夫です!!」と気丈にコメントした。
試合の20分前に装着し、戦闘モードに入るという小島。鼻テープをはがされたショックを原動力とし、ベテランの凄みを発揮したのはさすが歴戦のツワモノ。
覆面と違って面積が小さいので、見えづらい。だが、マスクはぎは即反則負けを喫することも多々あったが、鼻テープはぎは反則にはならないようだ。
小林邦昭が初代タイガーマスクとの対戦で、素晴らしい試合内容ももちろんだが、マスクはぎをして「虎ハンター」と呼ばれ、好敵手として人気を博したように、レイも「小島ハンター」になり得るのではないだろうか。
チャンピオンカーニバルも王道トーナメントも参戦の小島。今後も全日本マットに登場することは十分考えられる。
小島の前に、大ベテランの鼻テープを臆することなく冷酷にむしり取れるレイが立ちはだかってきた。誰もがしなかったことに着目したプロレス頭もある。
試合には負けたが、ひと皮むけたのではないだろうか。大きくて豪快で、そして悪い。三拍子揃った斉藤レイ、そしてジュンの斉藤兄弟と小島の抗争が楽しみになってきた。