横浜流星、ボクサー役にかける覚悟「中途半端なことをしてはいけない」 運命を変えた15歳の決断

俳優の横浜流星が佐藤浩市とともにダブル主演を務める映画『春に散る』(瀬々敬久監督)が8月25日に全国公開される。中学校3年生のときに出場した空手の大会で世界一になった経験を持つ横浜は、格闘家に対して深い敬意を持つ。ボクサーとして「本物を見せたい」と鍛錬を重ね、撮影後には日本ボクシングコミッション(JBC)のC級(4回戦)プロテスト試験に挑戦。見事合格し、周囲を驚かせた。ENCOUNTのインタビューでは、15歳で俳優デビューしたが、仕事に恵まれない時代は「決断を間違えてしまったのかな」と将来を不安に感じていたことも明かした。横浜と、共演した橋本環奈に、「人生を左右した決断」と、作品の見どころを聞いた。

『春に散る』に主演する横浜流星と共演の橋本環奈(左から)【写真:舛元清香】
『春に散る』に主演する横浜流星と共演の橋本環奈(左から)【写真:舛元清香】

横浜は25年の大河で初主演 橋本は24年後期に連続テレビ小説『おむすび』で初主演

 俳優の横浜流星が佐藤浩市とともにダブル主演を務める映画『春に散る』(瀬々敬久監督)が8月25日に全国公開される。中学校3年生のときに出場した空手の大会で世界一になった経験を持つ横浜は、格闘家に対して深い敬意を持つ。ボクサーとして「本物を見せたい」と鍛錬を重ね、撮影後には日本ボクシングコミッション(JBC)のC級(4回戦)プロテスト試験に挑戦。見事合格し、周囲を驚かせた。ENCOUNTのインタビューでは、15歳で俳優デビューしたが、仕事に恵まれない時代は「決断を間違えてしまったのかな」と将来を不安に感じていたことも明かした。横浜と、共演した橋本環奈に、「人生を左右した決断」と、作品の見どころを聞いた。(取材・文:西村綾乃)

 ドキュメンタリー作家の沢木耕太郎原作の同名小説を、『ラーゲリより愛を込めて』などで知られる瀬々敬久監督が映画化。横浜は不公平な判定で負けて心が折れていたボクサーの黒木翔吾を、不公平な判定で負けアメリカへ渡り40年ぶりに帰国した元ボクサー・広岡仁一を佐藤が務めた。

横浜「瀬々監督は役者を信じて、寄り添ってくれる方。撮り直しを希望したときも快く受け入れてくださり、熱い組の中で力いっぱい演じることができました。翔吾にとって仁さんは心の支えで、戦友でもある。現場では、役以外の所でもミットを持っていただく時間もあり、浩市さんと心がつながったと感じた時間がありました。『胸を借りて本気でいこう』とぶつかることができたのは、浩市さんだったからという部分が大きいです」

 橋本は生い立ちに陰りをまとった仁一のめい・佳菜子で新境地を見せた。

橋本「浩市さんとは、暮らしていた大分で執り行われたお葬式のシーンが最初でした。親の介護などで自分の人生を選ぶことができなかった佳菜子は、夢を持つことができず生命力も低い。これまで演じたことがない女性を演じ、新鮮でした。撮影初日から浩市さんはじめ、スタッフのみなさんとご飯に行ったことも楽しい思い出です。浩市さんが少し酔われていて、素の表情を目にすることができたこともうれしかったですね」

横浜「うらやましいです。心を許せる存在であっても、くだけちゃいけないという思いがあったから、僕も飲みに行ったりしたかったです」

 横浜は役作りのため2021年4月から、元日本ウエルター級王者・加山利治氏が会長を務める東京都内のジムで練習。プロボクシング元WBAスーパーフェザー級王者の内山高志氏の指導も受けた。

横浜「僕自身、空手をしていたので格闘家の方々へのリスペクトが強くあり、中途半端なことをしてはいけないという思いがありました。俳優と格闘家の道、どちらの道に進むのか悩んだ時期もありましたが、格闘家としての基礎を持っているので『本物を見せることができる』と信じて、練習に打ち込みました。同じ格闘技といっても顔面攻撃があるボクシングと、それが反則行為になる空手とは大きく異なるところもありました」

橋本「流星くんの動きを初めて見たときは、『ボクシングもやっていたんだ』って思ったんです。クライマックスでは、世界チャンピオンの中西利男を演じた窪田(正孝)さんと試合をするのですが、男同士の打ち合いを見せてくれました」

 映画の中で黒木は、偶然居酒屋で出会った広岡に、人生初のダウンを奪われたことから、広岡に「ボクシングを教えてほしい」と懇願。2人は諦めかけていた夢に挑戦し、再生していく。2人にとって運命を変えた決断はいつだったのだろうか。

横浜「15歳のときに、役者として生きていこうと決めたことです。向いているかいないのか、分からないけれど『これしかない』と決めて、1度決めたことはやり遂げたいと前だけを見ていたけれど、役をいただくことができなかった時期は選択を『間違ったかな』と弱気になったときもありました。不安を抱えて孤独だったけれど、人と何かを作り上げる楽しさを知って、『やっぱりこれだ』と自分を奮い立たせることができました」

橋本「私は是枝監督の『奇跡』に出演させていただいてからです。それ以来、女優という職業を意識してこの世界で生きていきたいと考えるようになりました」

 横浜は2025年に放送予定のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~』で、“江戸のメディア王”として時代の花形になった蔦屋重三郎役として主演を務める。橋本は2024年の後期にNHKで放送される連続テレビ小説『おむすび』で初の主演が決定している。

横浜「役を演じるときは、役のために生きることしか考えられなくなってしまうのですが、現場の士気を挙げながら、全体を俯瞰して見られる浩市さんの姿に感銘を受けました。その視野の深さはまだ自分にないもの。そうなれるように成長したいです」

橋本「普段快活な印象を持ってもらうことが多く、役も元気な役をいただくことが多いのですが、テンションを上げずに静かにいられる今回の役はとても新鮮でした。自分でも知らない自分の姿もあると思うので、今までとは違う役柄にも積極的に臨んでいきたいです」

□横浜流星(よこはま・りゅうせい) 1996年9月16日、神奈川県出身。2011年に俳優デビュー。TBS系連続ドラマ『初めて恋をした日に読む話』、『DCU』などに出演。映画『線は、僕を描く』(小泉徳宏監督)、映画『ヴィレッジ』(藤井道人監督)など主演作多数。25年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で初主演を務める。

□橋本環奈(はしもと・かんな) 1999年2月3日、福岡県出身。2011年に映画『奇跡』(是枝裕和監督・脚本)で映画デビュー。16年公開の角川映画40周年記念作品『セーラー服と機関銃 -卒業-』(前田弘二監督)では初主演を務め、同作にて「第40回日本アカデミー賞」で「新人俳優賞」を受賞。映画主題歌でもある「セーラー服と機関銃」でソロデビューした。22年には東京・帝国劇場で舞台「千と千尋の神隠し」で主演。同年大みそかに放送された「第73回 NHK紅白歌合戦」では司会を務めた。24年度後期のNHK連続テレビ小説『おむすび』で初主演を務める。

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