4年ぶり“全面解放”コミケ、参加者を待ち受ける有明の「交通戦争」コロナ前と様変わりのワケ

コミックマーケット102(C100)が12日~13日、東京ビッグサイトで開催される。4年ぶりに入場者数制限を撤廃した夏の大規模イベントには、各交通機関も特別ダイヤで対応する。盛況が予想される夏コミだが、4年の間に近隣地域に起きた“異変”が、スムーズなコミケ輸送に立ちはだかるかもしれない。

東京駅~東京ビッグサイト間を走る都05-2系統。有楽町・銀座・築地・勝どきなどを経由して有明エリアに至る。
東京駅~東京ビッグサイト間を走る都05-2系統。有楽町・銀座・築地・勝どきなどを経由して有明エリアに至る。

地元利用者の漸増が続く都バス

 コミックマーケット102(C100)が12日~13日、東京ビッグサイトで開催される。4年ぶりに入場者数制限を撤廃した夏の大規模イベントには、各交通機関も特別ダイヤで対応する。盛況が予想される夏コミだが、4年の間に近隣地域に起きた“異変”が、スムーズなコミケ輸送に立ちはだかるかもしれない。(取材・文=大宮高史)

 7月某日、筆者は東京ビッグサイトから東京駅丸の内南口行きの都営バス都05-2系統に乗車した。この日は休日とはいえ特に大規模イベントもなく、始発のビッグサイトバス停からの乗客は数人。

 ところが、バスは有明テニスの森・有明ガーデン・ゆりかもめ新豊洲駅などを経由する十数分のうちにたちまちに座席は埋まり、満員に近い状態に。勝どき・月島を経由して都心の築地や銀座エリアにいたるまで混雑率は下がらず、途中から時刻表にない増発便の後ろについていた。乗客の多くは子連れやカップルで、いかにも地域に暮らす子育て世代という印象だ。バスの繁忙ぶりは、この都05-2系統がビッグサイトへのアクセス路線のみならず、有明エリアの生活路線としても機能していることを如実に示していた。イベントがない日でも、状況に応じて柔軟に臨時便の運行がなされているようだ。

 東京ビッグサイトへのコミケ参加者輸送を担うのは、主にりんかい線・ゆりかもめ・都営バスの3社局。それぞれ一長一短があるが、運賃ベースが高いりんかい線とゆりかもめに対して、都バスなら一律210円で東京駅など都心まで移動できるメリットがある。長年、都バスはコミケ期間中に一般系統の他に臨時便を大増発してきており、東京駅―ビッグサイト間をノンストップで往復する急行系統をはじめ、門前仲町駅―ビッグサイト間の門19系統も増発される。

 ビッグサイト~東京駅間の一般系統は前出の都05-2系統(丸の内南口発着)と、東16系統(八重洲口発着)の2路線があり、いずれも発展著しい有明・豊洲エリアを経由する。特に、有明北地区と呼ばれるりんかい線の線路から北の区域と、豊洲市場周辺は昼間人口が激増した。目玉となるのは、2020年から21年にかけて開業した、大型商業施設とコンサート会場の東京ガーデンシアター、有明四季劇場を備えた有明ガーデン。ここから陸側の豊洲・勝どきエリアにかけてもタワーマンションが立ち並んでいるため、人口も多い。

 同地区の住民の目線に立てば、大井町・大崎・新木場にしか出られないりんかい線や新橋・豊洲までしか行かないゆりかもめより、都心に直行できるバスにもニーズがあることはうなずけよう。都05-2系統は23年春に増発がなされ、昼間時間帯に5本を増発した。5本では少ないように見えるが、ラッシュ時ではなくデータイムに毎時1本が増える計算で、それだけでも運行間隔がほぼ20分未満で統一されるようになった。

 こんな事情から、東京ビッグサイトでのイベント開催時に一般系統に来場者が殺到するとどうなるかは想像に難くない。4年前の19年夏のC96では4日間で73万人が来場したコミケだが、4年ぶりの入場制限なしのC102で、この現状を踏まえて東京都交通局がどんな増便シフトを敷くかも気がかりだ。できるだけ、一般系統に人が集まらない措置が望まれよう。

バスと鉄道の中間、東京BRTもコミケに“初参加”

 では都バス・りんかい線・ゆりかもめ以外に、ビッグサイトや周辺の大型施設に行くのに本数もそこそこで便利なアクセス手段はないのか? 答えは「ある」だ。計画的につくられてきた、埋立地の広い道路を生かした乗り物が参入しつつある。

 一つは、20年からプレ運行を開始した東京BRT。連接車を主力に、一般バスよりも少ない停留所で、運賃は都バスより10円高いだけの220円だ。プレ運行開始以来、順次本数が増やされていて、23年4月から新橋~国際展示場間の路線を開設(一部は虎ノ門ヒルズや東京テレポートまで運転)。国際展示場停留所からゆりかもめ新橋駅近くの新橋停留所までは、7時台から21時台まで毎時3本、約20分間隔での運行を維持しており、コミケ開催時間帯の増発もなされる計画だ。他に豊洲市場から豊洲駅を経由して新橋に至る「豊洲ルート」や勝どきBRT~新橋間をノンストップで往復する「勝どきルート」も展開しており、鉄道とバスの中間的存在を担う役目が期待されている。

 ただし「国際展示場」といいながら、停留所が都バスなどが発着するビッグサイト直下ではなく、りんかい線国際展示場駅の駅前ロータリーにあるのがデメリット。知名度もまだまだゆえ存在を見落としてしまいがちだが、ゆりかもめより安く、座れる保証もない都バスを長時間待たなくてよいメリットはあるだろう。

 もう一つ、高速バスを運行するJRバス関東が東京駅~東京港フェリーターミナル間に運行している路線もビッグサイトを経由する。東京駅八重洲南口を出ると国際展示場駅前まで無停車、東京ビッグサイトのバス停を経て東京港フェリーターミナルに至る路線だが、東京駅からの運賃はICカード利用なら350円(現金400円)。着席定員制、高速バス車両を使用してスマホ充電も可能なので、乗り心地も保証されている。

 東京五輪を経て、開発が進んだ有明地区は都心に至近で注目の街になったが、従前からの大規模イベント会場もこの地域に人を集めている。住民と大型イベントの参加者、それぞれのニーズに応えた交通網の実現が、ベイエリアに新しく浮上した課題でもある。

 東京駅~東京ビッグサイト間を走る都05-2系統。有楽町・銀座・築地・勝どきなどを経由して有明エリアに至る。

次のページへ (2/2) 【画像】バスより大幅に停留所を絞った東京BRTの路線網
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