上智大を2度中退、両親とは絶縁状態 ラランド・ニシダの後悔「勉強しておけばよかった」
今月24日に小説デビュー作となる『不器用で』を発売するラランドのニシダ。読書好きとして知られ、執筆した原稿は業界の人間もうなるほどだったという。そんなニシダを形成した幼少期についてや上智大を2度退学となった真相、絶縁状態の両親、そして社会に広がりつつある「学び直し」について話を聞いた。
転校が多かった小学生時代
今月24日に小説デビュー作となる『不器用で』を発売したラランドのニシダ。読書好きとして知られ、執筆した原稿は業界の人間もうなるほどだったという。そんなニシダを形成した幼少期についてや上智大を2度退学となった真相、絶縁状態の両親、そして社会に広がりつつある「学び直し」について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
ファンへ手を出すクズぶりや、遅刻癖など“クズ”芸人としても知られている。自身の少年時代を振り返ろうとすると「あんまり覚えてないんです」と顔をしかめた。その理由のひとつにあったのは転校が多かったこと。小学校時代に3度経験した。ドイツの学校からスペインの学校へ。さらにスペインから日本の学校へ転校した。
唯一でてきた記憶は小学校の校庭。「ドイツは砂じゃないんですよ。小さいゴムみたいなのがいっぱい敷き詰められてる。見たことない公園だなって思ったのは覚えてますね」と語った。
現在、両親とも絶縁状態のため聞くこともできない。転校について「嫌ではありましたね。新しい環境って子どもが1番不安になる。1回目のドイツからスペインのときはすごく嫌だった気がします」と頭の片隅にある記憶を引っ張り出した。
中学、高校の6年間は中高一貫の男子高へ進学。バレーボール部に6年いたというが。この記憶もあまりない。部活と受験勉強と読書、ごく普通の生徒だったといい、「明るくはなかった」と振り返った。
そんな白黒のニシダの生活に色が付き始めたのが大学だった。「タバコを吸い始めてからは全部楽しい」と振り返る大学時代。学歴からもそれは伝わってくる。ニシダは一浪で上智大学に入学。その後、3年間通って退学。1年後に再入学をし、2年間通ってまた退学した。「計7年間通って、高卒になったんですよね(笑)」と明るい。
2度目の中退と時期が重なった『M-1グランプリ』準決勝進出
2度退学になった理由についてこう明かした。
「上智大学の外国語学部イスパニア語学科っていう結構難しいところでした。必修の単位を2年連続で落とすと退学、というシステムがあって。自分は2年生のときに落とした必修を3年生のときにも取れなかったのでルールに基づき、1回目の強制退学をしました。
退学者は1回だけ再入学できるというシステムがあって、面接と小論文試験を受けて1年後に再入学をしました。2度目の退学はワナだと思っているんですけど、大学って2年間の間に20単位取らないと強制退学になるというルールがあるんです。自分は再入学だったので、これまでの単位を持ちこしてたんですよ。だからこのルールには抵触しないと思って適当にやってたら、それは自分の勘違いで、授業1個分足りなくて強制退学でした」
そもそもなぜ単位を取れなかったのか。大学生活について明かす。
「好きな授業は行けるんですけど、嫌いな授業は絶対行きたくなくて。それ以外はお笑いサークルのライブに出たり飲みに行ったりでしたね」
普通では考えられない「2中退」だが、当の本人にとってはダメージが少なかった。
「2度目の退学はちょうどコロナ前のタイミングだったんですよ。そこでラランドは『M-1グランプリ』の準決勝まで行けていて、『おもしろ荘』(日本テレビ系)に出演したりしていて。だから『別にいいでしょ』『面白いだろ』くらいの感覚でした。相方は引いてましたけどね」
そこから人気、知名度ともに急上昇していくラランドだが、ニシダはあるつながりを失った。
「2回目で完全に疎遠になりましたね。家族と退学の前から仲良くはなかったから大学の話をしたことなかった。なんとなく自分は退学するって分かってたんですけど、それを親に言わずに上智から家に退学届みたいなものが届いてケンカしました。ケンカというか一方的に言われた感じですけど」
そこから絶縁状態に。しかしこれも本人はあまり気にしていなかった。
「親、あんまり好きじゃなくて。人として合わない。同じクラスに友達として学校の先生としていたら、絶対に好きになれないなって。性格がそもそも合わない。感覚の問題ですね。かといって向こうから見たら、俺もそんなに良い息子ではなかったんでしょうけど」
今だから思う「勉強しとけばよかった」
怠惰な大学時代を過ごしたようにも見えるニシダ。しかしツッコむときには博学ぶりをちらりと見せる。ツッコミは瞬発力も大切。どこから知識が飛び出してくるのか。
「読書がひとつあるのは絶対です。あとは覚えたら面白いなっていうことあるじゃないですか。ベッキーの本名がレベッカレイボーンだったり、木村カエラって木村カエラりえなんだよとか。『面白いかもしれない』っていう動機で覚えたことが多いですね。変なのばっかり覚えるんですよ」
2度の退学も後悔はない。それでも学びの部分には少しの悔いがあった。
「後悔はないですけど、いまになって大学の勉強ってたぶん面白いんだろうなと思います。面白がれる範囲が絶対広がってるなと。中学生のころって修学旅行でお寺に行ってもなにも面白くなかったじゃないですか。社会人になって芸人になってからの数年間で学生と違う経験をなんとなく踏んできたから面白がれる範囲が絶対に増えてる実感はあります。
退学したことに未練はないですけど、『勉強しとけばよかった』に近い。卒業しなくてもいいけど、もう少し勉強をしておけば良かったという気持ちもあります。大学のカリキュラムの中に面白いし、勉強しておけばよかったものはあったなと思いますね」
昨今の日本では、社会全体で「学び直し」をする動きが広まり始めた。日本政府もリスキリングへの支援を表明している。「2中退」のニシダは何を思うのか。
「(学び直しは)めちゃくちゃ良いことですよね。自分も小説を書くようになって、良い作品を作りたいと思っています。そんなときに自分の好きな小説家のカズオ・イシグロさんのキャリアについて調べたら、創作系の大学院に行っていたりしていて。そういうことを教えてくれるところがあるなら行きたいなと思うようになりました」
小説を書くことがニシダの学びへの意欲を強くしたようだった。
「人生のタイミングによって、欲しいものとか自分のなかでのニーズは変わっていく。そのなかでリスキリングみたいなものは豊かになるだろうと思いますね。いまは、放課後に絶対に飲みに行かないといけないって気持ちはないじゃないですか。学校に通ったら復習とか予習をすると思うんですよ。いま学び直したらもっとちゃんと勉強するんだろうと」
社会の波にもまれ、若いころの自分とは違う感情も生まれてきている。絶縁状態になってしまっている親との関係について、“いま”の思いを吐露した。
「親と仲が良いにこしたことはないのも、もちろん分かっています。自分ももう今年で29歳になるんで大人として良いわけがない。世の中には“許せない”親御さんもいる。でも自分の両親はそういう人ではないので、こんなに仲が悪いのは良くないです。親孝行した方がいい。恥ずかしながらまだ(自分が)大人になれてないっていう感じですね」
さまざまな経験がニシダの人生や考え方を豊かにしていく。小説執筆もそのひとつ。「いろいろ勉強しようと思います」。クズだけでない新たなニシダの姿は世間をあっと驚かせそうだ。