高梨臨「とても挑戦的でした」 出世のため不倫関係になる役演じ「家に帰ってもイライラ」
俳優の高梨臨は「現場で一番年上になったり、後輩と仕事をすることが増えてきているんですよね」と語った。そうなるにつれて、「いただく役も幅が広くなってきているような気がします」とも言った。最新作となる9月配信のU-NEXT制作ドラマ『MALICE』では、林遣都、佐藤隆太と共にトリプル主演を務め、出世のためには不倫もいとわない上昇志向の強い大学講師・谷村夏帆をシリアスに演じている。では、現場でどんなこと感じながらの撮影だったのだろうか――。話を聞いた。
9月配信、U-NEXT制作ドラマ『MALICE』でトリプル主演
俳優の高梨臨は「現場で一番年上になったり、後輩と仕事をすることが増えてきているんですよね」と語った。そうなるにつれて、「いただく役も幅が広くなってきているような気がします」とも言った。最新作となる9月配信のU-NEXT制作ドラマ『MALICE』では、林遣都、佐藤隆太と共にトリプル主演を務め、出世のためには不倫もいとわない上昇志向の強い大学講師・谷村夏帆をシリアスに演じている。では、現場でどんなこと感じながらの撮影だったのだろうか――。話を聞いた。(取材・文:磯部正和)
高梨といえば、女性ファッション誌で活躍するなど、クールビューティーな印象が強い。だが、今年4月期放送のTBS系連続ドラマ『ラストマン-全盲の捜査官-』では、料理系インフルエンサー役。内に秘めた欲望により人を殺めてしまう女性を好演した。一方で、昨年10月期のフジテレビ系連続ドラマ『PICU 小児集中治療室』では、緊迫感あるPICUの現場で、ムードメーカーとして周囲を盛り立てる看護師を演じた。かと思えば、21年10月期の読売テレビ・日本テレビ系連続ドラマ『アンラッキーガール!』では、仕事運のない35歳無職の女性役でコメディエンヌぶりを発揮した。近年、クールなパブリックイメージに反するようなキャラクターを演じており、役柄の幅を広げている。また、プライベートでは2018年1月、元サッカー日本代表の槙野智章氏(22年シーズンで現役引退、現解説者)と結婚をしている。
「本当に、ここ数年すごく幅広い役柄をいただける機会が増えています。個人的にすごくうれしいですし、どんどん女優という仕事が楽しくなってきているんです。結構、見た目はクールに見られるので、以前はそういう役が多かったのですが、福原遥ちゃんや若月佑美ちゃんとご一緒した『アンラッキーガール!』では、ぶっ飛んだアッパラパーなキャラクターでした。自分の素はあんな感じなので、見つけていただいた感じです(笑)」
こうした変化の1つに、視野が広くなってきたことが要因として挙げられるのでは……高梨はそう感じている。
余裕がなかった20代からの変化「共演者、作品のことに目が向くように」
「20代の頃は、与えられたものを一生懸命にこなすことでいっぱいいっぱいだったのですが、この年齢になって、現場で自分が一番上ということもあるし、先輩として入ることも増えてきました。そうなると、自分のことだけではなく、共演者のこと、作品のことなど、自然とそっちにも目が向くようになっていくんですよね。特にコメディー作品だと、『もっと、ふざけた方が面白いかな』なんて思いも出てきて。元来、ちょっと抜けているので(笑)。そういう部分を見てくださって、『こいつにこんな役をやらせたら面白いかも』と思ってくださっているのかもしれません」
『MALICE』で高梨が演じている大学講師・谷村夏帆は、准教授昇進を狙うため、大学の事務局長と不倫関係になるという上昇志向の強い女性だ。また、新たな一面を見せてくれている。
「今まで自分が演じたことがない役ですね。とても野心が強くて、周囲の人を利用するけれど、誰も信じない……みたいな。父親への恨みもあるなど、負の感じがすごく強いんです。とても挑戦的な役でした」
これまではどんな役でも、現場から離れるとスッと切り替えることができていたというが、本作で演じた夏帆は、どこか違ったようだ。
「感情の起伏とかも結構激しくて、叫ぶところとか本当にヤバイ感じなんです(笑)。最初は、私生活では絶対あり得ないようなシチュエーションなので、演じていてめちゃくちゃ面白いし、ストレス発散になるなって思っていたんです。でも、何か役が抜けないというか、どこか引っかかっているのか、家に帰ってもなんかイライラした感じになっちゃうんです。それはあまり経験したことがなかった感情でした」
本作では、高梨演じる夏帆が不倫していた大学の事務局長が殺害されたことにより、殺人の容疑が掛けられる。その夏帆と、スクープを狙う週刊誌記者・丸山奏太(佐藤隆太)、事件を追う刑事・星野尚人(林遣都)という三方向からの視点で事件の謎に迫る。
「夏帆という人物の感情を考えると同時に、丸山や星野から見た夏帆という視点もある。感情の出し方などは、より俯瞰でというか客観的に演じなければ……という意識は強かったです。それはすごく新しい体験で面白かったです。これまで私は演じるキャラクターの心情を追うタイプだったのですが、相手が主軸になって、自分が演じる役がどう見えるかという考え方でお芝居をするのは、とても勉強になりました」
磯部正和