【らんまん】神木隆之介を植物学博士が絶賛 実在のモデル人物と共通する「純粋で熱狂的な植物好き」
俳優・神木隆之介が主人公の槙野万太郎を演じるNHKの連続テレビ小説『らんまん』(月~土曜、午前8時)で植物監修を担当する国立科学博物館植物研究部の田中伸幸博士が取材に応じ、植物監修の舞台裏や専門家から見た神木隆之介の植物学者ぶりなどを語った。作品は、江戸末期に生まれ、激動の時代に、草花を愛し、夢に向かって人生をまっすぐに歩んだ植物学者・槙野万太郎の生涯を描くオリジナル。実在の人物である植物学者・牧野富太郎をモデルにするがフィクションとして制作している。
国立科学博物館植物研究部の田中伸幸博士が明かす舞台裏
俳優・神木隆之介が主人公の槙野万太郎を演じるNHKの連続テレビ小説『らんまん』(月~土曜、午前8時)で植物監修を担当する国立科学博物館植物研究部の田中伸幸博士が取材に応じ、植物監修の舞台裏や専門家から見た神木隆之介の植物学者ぶりなどを語った。作品は、江戸末期に生まれ、激動の時代に、草花を愛し、夢に向かって人生をまっすぐに歩んだ植物学者・槙野万太郎の生涯を描くオリジナル。実在の人物である植物学者・牧野富太郎をモデルにするがフィクションとして制作している。
まず監修の仕事内容から尋ねた。
「台本の段階から脚本家がこういうストーリーを成立させたい、そのためにはこういう流れで、せりふを入れたいという時、どういう植物をどう出すか。ドラマの設定の季節に合い、かつ、手に入るもので、当時、日本に存在した、といった制約のある中で植物を選んで提案するところからやっています」
脚本家が台本を書く段階から携わり、「東大の教室に何が置かれるべきか、植物学の教授の部屋にどういう物があるか」といった植物以外の細かなことも提案するという。
「明治時代なので専門用語も違います。植物名も、ウリの仲間は、今はウリ科と言いますが、当時は表現が違いました。そういうところまでこだわってリアル感を出しています。植物も撮影に合わせて花が咲くわけではないのでレプリカも作ります。レプリカは模型と違い、本物の型を取って作るもの。ですから本物が手に入らないとレプリカも作れません。本物の花が咲いている時に型を取り、レプリカを作っておいて撮影の時に出しています。私一人では無理なので、ほか5人の専門家と計6人の植物監修チームを作って作業にあたっています。SKTと名付けています」
大変そうな中で、こだわりはまだある。
「今後の放送で植物学の文献がどんどん出てきます。本物をちゃんと複製し、万太郎がこれを調べるならこのページを見るはずだと特定して作っています。こだわることで植物学的なリアリティーを出しています。万太郎の人生がメインですが、あたかも植物もメインのように一般の人に見えているということは、細部にもこだわっているからだと思います」
植物の専門家の間では『らんまん』の評価はどうか。
「植物分類学の黎明期の現場の話が毎日、ドラマとして放送されていることに、毎日、感動して見ているという人が結構います。後にも先にもこのドラマだけじゃないかとも(笑)。植物学がドラマの題材として扱われるようになったのも牧野富太郎の功績の一つでしょう」
牧野富太郎の功績は後半の人生も注目に値するようだ。
「功績は後半の人生で行った植物知識の普及活動も大きいです。全国に植物の研究、採集を趣味にする人を作る活動を牧野富太郎ほどやった人はいません。明治の終わりから昭和の初期にかけて植物同好会が全国にでき、各地で講師として指導して弟子を作りました。同好会の中心メンバーは各地の理科の教員。牧野富太郎は理科の教員を育てることにすごく尽力したのです。今の市民科学の先駆けだったと言えます」
続いて神木隆之介が演じる植物学者ぶりを尋ねた。
「神木さんの万太郎は本当に純粋でさわやか。純粋で熱狂的な植物好き。そこはモデルの富太郎と共通していると思います。牧野富太郎は道楽で生きた人で天真爛漫な性格だったことはおそらく確実。天真爛漫ということは、思ったことは何でも言うし、いい意味でも悪い意味でも鈍感さがあって、こうだと思ったら突き進む。万太郎と富太郎は根底では共通しているように演じていると感じます」
神木が植物と触れ合う表情はどうか。
「植物の好きさ加減がとても表現できていると思います。牧野富太郎も植物に夢中。万太郎も植物を見ている時は話しかけても聞こえてないじゃないですか。牧野富太郎も書斎からご飯の時にしか出てこなかったほど植物に没頭していたと言われていますから」
最後に視聴者にメッセージ。
「皆さんが普通に散歩して日本で目にする植物にはすべてに名前があります。名前のない植物は、ほぼない状態。必ず図鑑に載っています。それは牧野富太郎をはじめとする明治以降の植物分類学者たちの研究の積み重ねです。今、その恩恵を受けています。このドラマはその研究者の意気込みをよく描いていると思います」