真夏に女子プロレスが熱く燃える日 王者・中島安里紗とWWE帰りのSareeeの遭遇がもたらす意味とは
衝撃的な決定がリング上でなされた。それは新たなる“闘い”の、正式なのろしが上がった瞬間だった。
Saraee「受けて立ちましょう」
衝撃的な決定がリング上でなされた。それは新たなる“闘い”の、正式なのろしが上がった瞬間だった。
6月28日、新宿FACEで開催されたSEAdLINNNG(シードリング)の大会、メインでのタイトルマッチの防衛を果たした、王者・中島安里紗から呼び込まれたWWE帰りの女子プロレスラー・Sareeeは、リング上に花束を持って登場。中島にそれを手渡すと、中島から驚愕(きょうがく)の提案がなされた。
Sareeeに対して一騎打ちの要求、しかもベルトをかけての一戦を迫られたのだ。
「受けて立ちましょう!」
Sareeeはそう言い放ち、電撃的に両者によるベルトを賭けた一騎打ちが決定することになった。
あいさつ後のSareeeを追いかけ、舞台裏に下がった場所でコメントを求めた。
「まさかのSEAdLINNNGの8周年大会(8月25日)の後楽園ホールでのタイトルマッチが決まりました」
かなり衝撃的な決定にもかかわらず、冷静にそう話すSareee。そもそも、なぜSareeeがSEAdLINNNGに現れたのかと言えば、理由は二つある。
ひとつは、Sareeeが2021年の1月、WWEに行くことが決まった段階での日本ラストマッチ、つまりは壮行試合を行ったのがSEAdLINNNGだったこと。
Sareeeはこのことを「私はSEAdLINNNGに恩があるんです」という言葉で胸の内を明かしていた。
ちなみにその試合はSareeeが世志琥とのタッグチーム(鬼と金棒=通称オニカナ)を組み、中島&高橋奈七永と闘ったものの、結果はSareeeのパートナーの世志琥が奈七永に敗退。それでもSareeeは「恩がある」と口にした。ということは、Sareeeの意識下には相当な深い思いが詰まっていると予想される。
もうひとつは、Sareeeが発した以下の発言だった。
「プロレスなので、私は“闘い”だと思うんですね。なので、キレイとかわいいとか、いいですよ。もちろんそれもいいんですけど、その前にしっかりと“闘い”をやった上で、そういうことをやっていかないと。嘘はあとからバレてしまうので。しっかり私が“闘い”っていうものを日本の女子プロレス界に。(日本に)帰ってきて、しっかり見せていきたいと思っています」(3月13日に行われた会見場でのSareeeの言葉より)
この発言は女子プロレス界に大きな問題提起を投げかけたが、これに対し、真正面から呼応したのが中島だった。15日に行われた、挑戦者・青木いつきとのタイトル防衛戦の調印式で、中島がSareeeに来場を呼びかけたのだ。
「日本に帰ってきたばっかりで(Sareeeは)何がやりたいのか全然見えてこないけど、強さだとか闘いとか言うんだったら、避けて通れない道があるんじゃないかなと思います。それはこの団体であり、このベルトであり、と思っているので、これを見て、ちょっと興味があるなら、会場にぜひ、この闘いを見にきてほしいなと思います」
愛すべきプロレスラー・中島安里紗
もちろん、すぐさまSareeeはこれに反応。19日に行われた「Sareee-ISM~Chapter II~」(8月4日、新宿FACE)の会見上で、SEAdLINNNGでの中島の試合を見届けに行く旨を表明している。
事実、SEAdLINNNGでのあいさつを終えたSareeeは、「私も挑戦してこないかって中島さんから言われたからには、もちろん私がベルトを巻くチャンスがあるならば狙いに行きたいと思っています、はい」と発言。改めて王座取りを宣言していた。
実際、唐突ながら両者のタイトルマッチの決定を聞いた観客の反応はかなりのものがあったが、当のSareeeはどう思ったのか。
「メチャクチャいいんじゃないですか」
これにより、タイトルマッチの前哨戦が「Sareee-ISM~Chapter II~」で行われることになる。同大会では、メインイベントでSareeeがKAIRIとの元WWEスーパースターズを結成し、中島&彩羽匠(マーベラス)との対戦することになっているからだ。
「だから、もっともっと盛り上がるんじゃないかなという、そんな感じがしてますね」
平然とそう答えるSareeeだが、本音を言うと、中島のファイトスタイルを一度でも目にした人間であれば、いかにこの発言が驚くべきなものかが分かるはず。というのも、中島の攻めはズバリ言ってエグい。というかエグすぎる。
例えばエルボーの角度や蹴りの一発一発、ロープやコーナーを使った攻撃を含め、なかなかの“カタさ”を感じる。もし「プロレス」をヤラセや八百長の類だと思っている方がいたら、ぜひとも一度、中島の試合を見てみることをオススメする。そのくらいのエグさ満載なのだ。
もちろん想像の域を出ないが、おそらく対戦相手からあまり歓迎されない、愛すべきプロレスラーの一人だろう。
「昔からなので、変わらず『エゲつないなー』と今日も見ながら思いましたけど、メチャクチャ強いと思いますよ。強いと思いますけど、すべてを兼ね備えているのは、今は私のほうだと自信をもって言えるので、何も怖くないですね」(Sareee)
そんな中島とSareeeは、真夏のリングで2度も“闘う”道を選んだ。
「あのSEAdLINNNGのベルトを私が巻いて、もっともっと輝かせなければいけないなと、今日改めて思いましたね。メチャクチャ楽しみです」(Sareee)
毎年この時期になると新日本プロレス恒例の真夏の祭典「G1クライマックス」に向けた動きが注目され、一方で今年は「超RIZIN2」(7月30日、さいたまスーパーアリーナ)も開催される。他にも真夏だからこその熱い“闘い”が繰り広げられるが、それは女子プロレスも同じこと。
ただ、女子プロレスにおいては、Sareeeと中島による2年半ぶりの危険な遭遇が“震源地”ならぬ“発火点”となることは間違いがない。