新人賞を総ナメした奥平大兼、独自オーラを放つ19歳の素顔「自分にしかできない役を」
映画『MOTHER マザー』(2020年)で主演の長澤まさみ(36)の息子役で第44回日本アカデミー賞新人俳優賞を始め、新人賞を総なめにした奥平大兼(19)。その最新作が森七菜(21)とダブル主演による映画『君は放課後インソムニア』(6月23日公開、池田千尋監督)だ。衝撃のデビューから3年、奥平の現在地は?
森七菜とダブル主演、監督からの要望は「高校生の感覚に戻って」
映画『MOTHER マザー』(2020年)で主演の長澤まさみ(36)の息子役で第44回日本アカデミー賞新人俳優賞を始め、新人賞を総なめにした奥平大兼(19)。その最新作が森七菜(21)とダブル主演による映画『君は放課後インソムニア』(6月23日公開、池田千尋監督)だ。衝撃のデビューから3年、奥平の現在地は?(取材・文=平辻哲也)
本作は『週刊ビックコミックスピリッツ』で連載中のオジロマコト作の同名コミックが原作。石川県七尾市を舞台に、不眠症に悩む高校生、伊咲(森)と中見丸太(がんた=奥平)の青春ストーリー。奥平にとっては等身大の主人公といった感じだろうか。
「原作を読ませていただき、高校生ならではの空気感や七尾市でしか見られない風景に魅力を感じました。原作の良さをちゃんと実写の中で出していけたらいいなと思いました」
監督から言われたのは、「高校生のときの感覚に戻ってほしい」ということ。
「難しかった。1、2年前のことですが、仕事もあり高校にはあまり行けていなかったですし、コロナ禍だったんで、高校生活らしいことをしていなかった。だから、中学の頃、バスケ部の部活をやっていた頃を思い出したりしました」
撮影は昨年7、8月に、原作の舞台の七尾市で行った。クランクインの1日前に原作のロケ地めぐりで年上の共演者と気軽に会話できたことが大きかったという。
「僕はちょっと人見知りのところもあって、自分でも直そうと思って、積極的に話すようにしていたんですが、監督が敬語禁止にしてくれたおかげで、フランクに会話することができました。明るい子たちが多く、関係性を築けましたし、七尾市の高校もお借りできたので、すごいリアル感がありました。雨が降った後に、太陽の周りに虹が出ていたのを撮影して、今でも、スマホのホーム画面にしているんです。こういうのって、高校生の思い出の感覚と一緒なんだろうなと撮影が終わってから気づきました」
劇中、丸太が伊咲に告白するシーンもあるが、「実は撮影前にめちゃくちゃふざけあっていて、目を見ると、笑っちゃいそうになっていました。森さんはすごく大人だなって思うときもあるし、どこかつかめない。それが森さんの魅力でもあると思うし、お芝居にリスペクトしていますし、やっていて楽しい。友人みたいな感覚ですかね」と話す。
眠れない夜を過ごし、偶然にも天文台で伊咲と出会う男子高生、中見丸太役。天体写真を撮ることをきっかけにカメラにも目覚めていく。役作りのためにカメラも勉強した。
「すごい写真が撮れるわけじゃないですけど、こういう撮り方すればいいのかは自分の中で分かるようになりました。撮影のときも風景を撮っていたので、プライベートでも星が撮れるようになったのはうれしかったですね。エンドロールに僕が撮ったみんなの写真が結構流れるんです」
眠れない夜はあまりないそうだが、そんなときはアナログのレコードプレーヤーで音楽を聴くことが多いそう。
「普段はクラシックを聴くのですが、父がレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)を好きで、その影響でよく聴いています。地方に行くと、レコード店めぐりをしています。一時はプログレッシブ・ロックにハマって、キング・クリムゾンを聴いていました」
20年、演技未経験ながら『MOTHER マザー』で長澤まさみの息子役に抜てきされ、その演技が注目を集め、日本アカデミー賞新人賞など映画賞を総なめした。
「その1年前は家で日本アカデミー賞を見ていました。授賞式で、長澤さんがいろんな人を紹介してくれましたが、『うわぁ、すごいな』という感じでした。しかも、テレビや映画で見た人が自分が出た作品や僕を知ってくれているのがすごくびっくりというか、変な感じでした。それは、今でも思います。『MOTHER マザー』は時間がたつにつれ、どんどん大きな存在になっています」
その後はクルド人難民の少女の境遇を描いた『マイスモールランド』(22年)で主演・嵐莉菜の相手役、『ヴィレッジ』(23年)では主人公(横浜流星)とともにゴミ処理場で働く青年を演じてきた。本作では、人知れず自分の闇に悩む役どころだが、奥平の闇は? と聞くと、こう答えた。
「『よく暗いと思っていた』とか、『自分の世界観がある子だね』とか、『何考えているかわかんない』って言われるんですが、何も考えていないですよ。『ヴィレッジ』を撮影している時は、自分の中でどこかモヤモヤしていたことがありましたが、いろんな現場でいろんな監督さんに相談して、今はあまり思っていません」
本作では、初のダブル主演も経験したが、『ヴィレッジ』での横浜の振る舞いには刺激を受けたという。
「事務所の先輩、横浜さんは作品のことをすごく考えていました。目立たないところで周りへの配慮ができるのがかっこいい。僕も惚れちゃうわと思いました。でも、主演っぽい振る舞いをするわけでもなく、ただ人として役者として、堂々とあり続ける人なんです」
役の幅も少しずつ広がっているが、「多分、周りの子と比べたら割とキラキラしてないと思うので、自分にしかできない役をやりたい」。奥平は自分らしくありたい、と考えているようだ。
□奥平大兼(おくだいら・だいけん)2003年9月20日、東京都出身。映画『MOTHER マザー』(20/大森立嗣監督)で演技未経験ながらメインキャストの周平役に大抜てきされ俳優デビュー。この作品で第44回日本アカデミー賞新人俳優賞、第94回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第63回ブルーリボン賞新人賞、第30回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞し、一躍脚光を浴びる。その他の出演作に第72回ベルリン国際映画祭でアムネスティ国際映画賞を授与した『マイスモールランド』(22/監督:川和田恵真)、『早朝始発の殺風景』(WOWOW)など。待機作に7月期新土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』、ディズニープラス独占配信ドラマ『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』がある。
等身大の自分を分析「周りの子と比べたら割とキラキラしてない」
眠れない夜はあまりないそうだが、そんなときはアナログのレコードプレーヤーで音楽を聴くことが多いそう。
「普段はクラシックを聴くのですが、父がレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)を好きで、その影響でよく聴いています。地方に行くと、レコード店めぐりをしています。一時はプログレッシブ・ロックにハマって、キング・クリムゾンを聴いていました」
20年、ネグレクトをテーマにした『マザー』では演技未経験ながら長澤の息子役に抜てきされ、日本アカデミー賞新人賞など映画賞を総なめした。
「1年前は家で日本アカデミー賞を見ていました。授賞式で、長澤さんがいろんな人を紹介してくれましたが、『うわぁ、すごいな』という感じでした。しかも、テレビや映画で見た人が自分の出た作品や僕を知ってくれているのがすごくびっくりというか、変な感じでした。それは、今でも思います。『マザー』は時間がたつにつれ、どんどん大きな存在になっています」
その後はクルド人難民の少女の境遇を描いた『マイスモールランド』(22年)では主演・嵐莉菜の相手役、『ヴィレッジ』(23年)では主人公(横浜流星)とともにゴミ処理場で働く青年を演じてきた。本作では、人知れず自分の闇に悩む役どころだが、「奥平の闇は?」と聞くと、こう答えた。
「『よく暗いと思っていた』とか、『自分の世界観がある子だね』とか、『何考えているかわかんない』って言われるんですが、何も考えていないですよ。『ヴィレッジ』を撮影しているときは、自分の中でどこかモヤモヤしていたことがありましたが、いろんな現場でいろんな監督さんに相談して、今はあまり思っていません」
本作では、初のダブル主演も経験したが、『ヴィレッジ』での横浜の振る舞いには刺激を受けたという。
「事務所の先輩、横浜さんは作品のことをすごく考えていました。目立たないところで周りへの配慮ができるのがかっこいい。僕も惚れちゃうわと思いました。でも、主演っぽい振る舞いをするわけでもなく、ただ人として役者として、堂々とあり続ける人なんです」
役の幅も少しずつ広がっているが、「多分、周りの子と比べたら割とキラキラしてないと思うので、自分にしかできない役をやりたい」。奥平は自分らしくありたい、と考えているようだ。
□奥平大兼(おくだいら・だいけん)2003年9月20日、東京都出身。映画『MOTHER マザー』(20/大森立嗣監督)で演技未経験ながらメインキャストの周平役に大抜てきされ俳優デビュー。この作品で第44回日本アカデミー賞新人俳優賞、第94回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第63回ブルーリボン賞新人賞、第30回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞し、一躍脚光を浴びる。その他の出演作に第72回ベルリン国際映画祭でアムネスティ国際映画賞を授与した『マイスモールランド』(22/監督:川和田恵真)、『早朝始発の殺風景』(WOWOW)など。待機作に7月期新土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』、ディズニープラス独占配信ドラマ『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』がある。