田原俊彦、ジャニーズ問題は「言わないよ」も…「アイドルは過酷。僕もそうだった」
来年45年目を迎える歌手の田原俊彦(62)が、通算79枚目のシングル『ダンディライオン』を21日にリリースする。活動歴40年以上の歌手は他にもいるが、田原はデビュー以来、アイドルとして走り続けてきた。親子ほど歳の離れた若手クリエーターたちとコラボし、心身も充実している。その原動力とは。ジャニーズ事務所時代から現在までの思いやファンへの感謝を語った。
来年45年目、デビューから走り続けるトシちゃんをインタビュー
来年45年目を迎える歌手の田原俊彦(62)が、通算79枚目のシングル『ダンディライオン』を21日にリリースする。活動歴40年以上の歌手は他にもいるが、田原はデビュー以来、アイドルとして走り続けてきた。親子ほど歳の離れた若手クリエーターたちとコラボし、心身も充実している。その原動力とは。ジャニーズ事務所時代から現在までの思いやファンへの感謝を語った。(取材・文=福嶋剛)
――敬意を込め、「トシちゃん」と呼ばせていただきます。
「いいんだよ。みんな遠慮しちゃって、『トシちゃんさん』とか呼ぶんだけど、腹を割って話をしたいならどんどん飛び込んでこないと」
――では、遠慮なく聞かせていただきます。
「でも、少し遠慮しろよ(笑)。お前は『ズバリ聞きます』とか言って核心を突きすぎるんだから。まあ、いいけど」
――最初に昨年9月に始めたYouTube『田原トシちゃんねる!』についてお聞きします。
「TikTokも2年くらいやっているんだけど、昭和ど真ん中世代が取り残されないように自分から率先して始めました。スタッフは全員、平成生まれの“子ども世代”。企画は一緒に考えて、あとは彼らに全てお任せです。みんな僕のことを『ただの面白い芸能人』だと思っていて、『トシちゃんって、ジャニーズだったんですか? 見えない』だって(笑)。若い子たちは、僕の知らない世界を見せてくれるから、逆に彼らの“遠慮のなさ”が面白いんですよ。時々、『リアルなところが見え過ぎちゃって、良いのかな?』って思うこともあるんだけど、まあ、みんなに楽しんでもらえたら良いのかなって。だけど、8か月たって、まだ登録者数が5万人いってないんで、『チャンネル登録をよろしく!』って、この場を借りてみんなにお願いしたいです(笑)」
――YouTubeと言えば、トシちゃんが暮らしていたジャニーズの合宿所について話して、間取りまで紹介。ネット上でざわつきました。
「あれはたまたまです。そんなの知らない時に撮っているし、公開のタイミングがそうなっちゃっただけでね。『田原俊彦は相変わらずKYだ』とかたたかれているんでしょ。ネットニュースは見ないから分からないけど。僕が合宿所にいた8年間は、風呂も飯も一番先だったから、『本当に楽しかった』という昔話をしただけなんだけどね」
――さて、OBとして今、ジャニーズ事務所をめぐって起きている問題をどうお考えですか。
「話したくないよ。だって、ジャニーズを辞めて30年だよ。そんな人間が言っちゃ、ダメでしょ。でも、おりも政夫さんの(ENCOUNTでジャニーズ問題について語った)インタビューは読みました。おりもさんは僕の恩人なんですよ。僕がジャニーズに入ったばかりの時に付き人をやらせてもらったんだけど、自分は『グループは嫌だ。ソロじゃないとやらない』とかクソ生意気だったし、現場にも遅刻しちゃったり、先輩に叱られて当たり前だったのに、おりもさんは怒らなかったんだ。こんな俺を見守りながら、育ててくれたんだよ。だから、今でも頭が上がらないんだ。麻雀は別だけど(笑)」
――記事を読んでの感想は。
「だから言わないよ。アイドルっていう仕事は過酷なんです。みんな与えられた時間の中で、本当に頑張っているんです。僕もそうだった。40年以上前は死ぬほど忙しかったし、生意気だったけど、自分の役割を必死にやっていたよ。本当に冗談抜きで早朝からテレビやって、ドラマやって、映画やって、レコーディングやって、ラジオやって真夜中に合宿所に帰って、ちょっと寝たらすぐに朝を迎えるという毎日でね。ツアーも毎年30か所くらい行ったけど、デビューから今日まで番組を飛ばしたり、仕事をキャンセルしたことは1度もないからね。コンサートで声が出なくなったことは2回くらいあったけど、それくらいですよ」
――壮絶な日々ですね。
「本当休んでないもんな。でもね、大変なのは今のアイドルだって同じなんだよ。みんなが上を目指して真面目にコツコツと頑張っていて、ファンの子たちだって、一生懸命応援して支えてくれているのよ。僕のファンなんていろいろあっても44年、ずっと応援してくれているんだよ。だから、僕から言えることは、『これからもみんなハッピーでいてほしい』。そう願うだけです」
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――44年たっても、忙しいトシちゃんですが。
「暇だよ(笑)。オスのトイプードルを飼い始めて。最近は女の子より犬とドライブに行くことが多いかな(笑)。このところは、1年のルーティンが決まっていて、6月くらいに新曲をリリースして、夏から11月くらいまで全国ツアーを回って、年末はディナーショー、父親の墓参りで山梨に帰って、年が明けたら次の新曲を作ってMVを撮影して、気が付いたら、あっという間に1年ですよ」
――そして、通算79作目の新曲『ダンディライオン』が完成。
「毎年、シングル作る時は『同じ流れではいけない』と思って、去年リリースした『ロマンティストでいいじゃない』は、ハリウッド風のジャジーな曲だったから、今回は『みんなが踊れるような曲にしたい』と思って、若い世代の作曲家に曲を作ってもらいました」
――楽曲制作でも、若い世代との共同作業が刺激になっているんですね。
「それぞれの時代の作家さんが、僕を通して良い意味で遊んでくれていて、歌謡曲、アイドルソング、ロック、ヒップホップ、ダンスミュージックとバリエーションも豊富なんで、毎回新鮮だし、『ダンディライオン』のMVも昨年からツアーを一緒に回っている女性ダンサー2人と踊っていて、『明るく元気に攻めるぞ』って曲になっています」
――どの曲も“トシちゃんカラー”に染めてしまう印象です。
「『それがブランド力だよ!』とか大げさに書くなよ(笑)。大したことないんだから。『次はどんな顔を見せるか』っていうのが、自分自身も毎回楽しみなだけですよ。僕の歌ってきた曲は、J-POPじゃなくて田原オリジナルの『T-POP』ですから」
――カップリングは、『風の上ならSO HAPPY』(1984年)の最新録音です。こちらは『チャールストンにはまだ早い』のB面で、果実ドリンク「カプリソーネ」(グリコ)のCMソングにもなりました。
「あの頃はCMもたくさんやっていたからね。この曲は当時あまり歌わなかったんだけど、ファンには人気の曲みたいなんで、初めて歌い直しました。40年前と同じキーで歌って、死にそうだったけど、声出てるでしょ(笑)」
――確かに昔と変わらないですね。ところで、「カプリソーネ」のCMには松田聖子さんバージョンもありました。トシちゃんと聖子さんは同期で、今もステージに立っています。
「やっぱり、聖子ちゃんはすごいアーティストですよ。現役バリバリでね。あれだけピンクの衣装が似合う人は、聖子ちゃんしかいないよ。デビュー前から同じ現場にいることも多かったですし、男性アイドルと女性アイドルの違いだから、意識するようなことは全くなかったんだけど、『聖子ちゃん頑張ってるよな』とずっと思ってましたよ。本当に『すごい!』としか言えないよね」
――トシちゃんの新曲を引っ提げた全国ツアー『TOSHIHIKO TAHARA DOUBLE ‘T’ TOUR 2023 DANDYLION』は8月から11月まで。どのような公演にしていきますか。
「北海道から九州まで全国16か所でやります。今年は声も出せるから『哀愁でいと』から『ダンディライオン』まで、思い切り汗をかきながらみんなで歌って踊って大騒ぎしたいと思ってるんです。準備も始まっていますが、間違いなく『ワンダーランド』になりますから。楽しみにしておいてください」
――そして、来年は45年目を迎えます。
「やっぱり、子どもの頃からこの世界のトップを目指してやってきて、田原俊彦というポジションを築いてきたので、45年目も通過点の1つで、まだまだこのポジションは誰にも渡したくないです。そのためには、今の時代を作っている若い世代と一緒に挑戦し続けることも大切だから、これからも、『トシちゃん』と呼んでくれる仲間たちと一緒にやっていきたいですね」
□田原俊彦(たはら・としひこ) 1961年(昭36)2月28日、山梨県生まれ。79年にTBS系連続ドラマ『3年B組金八先生』の沢村正治役でデビュー。同じくジャニーズ事務所に所属していた近藤真彦、野村義男と3人で"たのきんトリオ"と呼ばれ、一躍人気アイドルに。80年『哀愁でいと』で歌手デビュー。これまで79曲のシングルをリリースし、オリコンチャート1位獲得が12回、ベスト10ランクイン38曲。80年代後半には、フジテレビ系連続ドラマ『ラジオびんびん物語』『教師びんびん物語』など、『びんびん物語』シリーズの作品で主演。94年2月末にジャニーズ事務所を退所。その後も新曲をリリースし続け、コンサート、ディナーショーを開催。175センチ、57キロ。血液型B。