強豪アマチュア選手も続々参入 群雄割拠の『RSPT』でF・マリノス選手たちが目指すもの
横浜F・マリノスeスポーツの『Shadowverse』部門は、今季の『RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR』(RSPT)にも参戦する。同チームメンバー6人に昨季の振り返りや今季への意気込み、取り組みたいことなどについて聞いた。
RSPT新シーズンへ 「どんどんレベルを上げないといけない」(水煮)
横浜F・マリノスeスポーツの『Shadowverse』部門は、今季の『RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR』(RSPT)にも参戦する。同チームメンバー6人に昨季の振り返りや今季への意気込み、取り組みたいことなどについて聞いた。(取材・構成=片村光博)
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――まず、昨シーズンのRSPTの振り返りからお願いします。
あぐのむ「個人的な話になりますが、昨年度は就職して兼業プロゲーマーに移行し、拠点を地元の新潟に移しました。新潟からどうやってプロツアーを挑んでいこうかといろいろ模索した年でした。うまくいった部分もありますし、うまくいかなかった部分もたくさんあり、それを踏まえて今シーズンに取り組めればいいかなと思っています。
個人として試合に出たのは1回だったので、試合に出るメンバーのことは信頼していましたが、悔しい思いもあります。今シーズンは出場の回数を増やせるように取り組んでいきたいなとは思っています」
みずせ「ルール変更によって、予選ではBO3(※1) を7回戦うような形になり、チームとして本戦に行くこともできましたが、同一シーズンに2つの予選グループから本戦に進出することはできませんでした。新ルールでのデッキの持ち込み方も難しく、その読み方の部分は課題です。今シーズンもみんなで一致団結して戦えたらなと思います」
※1 BO3:2本先取の対戦ルール
kaoru「5thシーズンで、あと1歩のところで優勝を逃したことをすごく悔しく思っています。昨シーズンの最後の最後の試合だったので、それからずっと悔しい思いを抱えて、『次こそ優勝を』という気持ちですし、また今年も戦えることにすごく喜びを感じています。今年こそは絶対個人で優勝を獲りたいです。本当に1勝、あと1点のところまで押し込んだ上での敗戦だったので、それが一番ですね」
バーサ「僕は全シーズンに出場して、全て本戦に行くことができませんでした。しかも、そのうち3回は全てその最終戦に勝てば本戦に行ける状況で、負けてしまった。最後に勝ち切る力が必要ですし、だいたい毎回フォレスト選手(現NORTHEPTION)に止められているんですよ。だから僕はフォレストさんに勝たないといけない。“32先”(どちらかが先に32回勝つまで行う対戦企画)でもなかなか勝ち切ることができず、それもやっぱり終盤に乱れが出てくるんです。メンタル的な部分もありますし、プレイング精度にも課題がある。RSPTで2Pick(※2) に出場する選手は多くないですし、しっかりと研究して勝ち切ることが大事だと思ってます」
※2 2Pick:2枚ずつ提示されるカードのいずれかを選び、30枚のデッキを組んで対戦するルール
しーまん「自分は1回も出ていませんが、ずっとバーサと一緒に練習していました。練習段階では『いい仕上がりだな』と思っていても、試合当日はなかなか結果が出なかったというのが、昨シーズンの印象です。昨シーズンまで一発勝負だったところが1日に何試合もこなす形になって、2Pick特有のデッキを暗記し直すところや、気持ちの切り替えの部分が難しいところだったのかなと思っています。ただ、今シーズンは経験を生かせるので、昨シーズンよりはうまくいくと思っています」
水煮「個人としては2ndシーズンで優勝できました。ただ、3回出場して予選通過は1回だけ。現在のルールだと予選通過の意味がかなり大きいと思っていますし、優勝するにはもっとアベレージを上げないといけないとも思っています。チームとして優勝するためには、全員が何回か予選通過して入賞する必要があります。チーム全体としても個人としても、どんどんレベルを上げないといけないと思ったシーズンでした」
――RSPTは昨シーズンから今シーズンにかけて、多くの有力アマチュア選手の参戦がありました。印象的な選手や注目している選手はいらっしゃいますか?
あぐのむ「個人的には、よしもとゲーミングに入ったぱらちゃん選手です。僕は配信や動画に結構力を入れているんですが、ぱらちゃんもYouTubeでかなり活動しつつ、アマチュアとしてRAGEでも結果を出しています。RSPTの舞台では絶対に負けられないと思っている選手の1人ですね」
――ぱらちゃん選手の“選手としての強み”はどこにあるのでしょうか?
あぐのむ「ぱらちゃんの選手としての強みは、特にウィッチクラスのスペシャリスト的なところがあり、結果にも表れていますが、それ以外のクラスもアベレージが高い。良い意味でこだわりがない、どのデッキを使っても一定水準のスキルがあるというのは強みかなと思います。“ウィッチの人”としてのキャラ立ちもあり、中身も伴いつつ、どのデッキを使ってもうまい。すごく魅力的だなと思います」
バーサ「最初期から配信されている方の1人なので、シャドウバースのプレイヤーはみんな見ている方ですよね。そんな方がプロになったというのは、すごく話題性があって面白いと思います。『プロではどうなのか』というのも結構注目ですよね」
水煮「僕はレバンガ☆SAPPOROに加入したrikka選手に注目しています。シャドウバースを長くやってきた方にとっては大ニュース。競技環境に打ち込んでいる人に『一番シャドウバースがうまい人は誰ですか』と聞いたら、rikkaと名前を挙げる人は多いと思いますし、僕もそう感じています。RSPT参入はすごく驚きですし、プロの舞台で一戦交えたいですね」
――アマチュア最高峰として知られていたrikka選手はプロになること自体が驚きだった印象です。
「僕も『プロに興味ないのかな』と思っていたので、『本当に来たんだ』と思いました。rikka選手との対戦履歴があるんですが、実はちょうど40戦やってて、20勝20敗なんです。履歴に残らないところでの対戦もあるので、実際にどっちがリードしているのかは分かりませんが……。僕にとっては憧れでもあり、ライバルとして超えたい壁でもあります。かなり注目しています」
――2Pickでは選手の変動はあまりありませんが、フォレスト選手がNORTHEPTION所属になりました。
バーサ「NORTHEPTIONではなかったとしても、確実にどこかが獲得していた選手だと思います。引き続きライバルになったので、倒すしかないですね。もしチームメイトメンバーになってたら『よろしくお願いします』でしたが(笑)。アマチュア含めてもトッププレイヤーで、攻め方や環境の把握の仕方がすごくうまい。普通は思いつかないようなカードの強い組み合わせ方をするんです。それは2Pickだけじゃなくて、“カードゲームのプロ”としての思考がかなり入っている。最近対戦したときもギリギリで負けてしまったので、RSPTでは仕返ししたいと思います。
ほかの選手たちもみんなうまいのですが、その中でもoya選手(福岡ソフトバンクホークス ゲーミング)はかなり強い。もしかしたらフォレスト選手よりもうまいかもしれないと思っています。oya選手はクラス提示の取り方とカードピックがとがっているところもあるんですが、本当に1つ1つのプレイングが丁寧です。攻撃的なピックの仕方をしていて、エルフクラスのテンポプランでカードを組み合わせて戦っていく。そうしたゲーム展開の仕方がうまい選手です。プロシーンではまだ結果が伴っていませんが、本当に強い選手なので、いつ化けてくるか分からない選手として警戒しています」
新規ファンに注目してほしいポイントは? 「選手の表情を見るだけでも楽しめる」(しーまん)
――今シーズンのRSPTの展望を教えてください。
kaoru「連覇しているSHG(福岡ソフトバンクホークス ゲーミング)をどこかが倒さなきゃいけないというのが、今シーズンの注目ポイントだと思います。F・マリノスとしては、彼らを止める存在になりたいですね。SHGは隙のない相手ではありますが、そこを超えない限り優勝にはたどり着けません。打倒・SHGを目標にやりたいなと思っています。実際の試合では誰が相手でも意識はしませんが、本戦では絶対に(SHGの選手と)当たりますし、勝たなきゃいけない、超えなきゃいけない相手です」
みずせ「他のチームの補強を見ても、アマチュア競技シーンで実績を残した選手たちが多いです。メタ読み(※3) も今までは各チームの選手に合わせて考えたりもしていましたが、今シーズンはアマチュア競技シーンのメタがより刺さるシーズンになるかもしれません」
※3 メタ読み:その時々でのメタ(流行や傾向)を考慮して戦法を変更、準備すること
――では、今シーズンからRSPTを見る人も想定して、どんなところに注目してほしいですか?
あぐのむ「今、僕の人生の抱負として『自由に生きる』というものがあるんです。良い意味でシャドウバースにこだわらず、好きなことをしようと思っていて、のびのびとやっていこうという気持ちが強いんです。趣味に近いところもありますが、個人としての発信活動なものは多くしようかなと思っていて、1人の生き様として見てほしいですね。
RSPTでも、あまり気負うことなく戦いたいと思っています。兼業で働いているなかで、もちろん負けたら悔しいですし、ファンの方にも申し訳ないとも思いますが、勝利にこだわりながらものびのびと活動していきたいという気持ちが強いです」
みずせ「今までは配信などはあまりしてこなかったんですが、今シーズンは少しずつやっていこうと思っています。慣れるまでは自分のペースでやっていきます。RSPTでも勝つために頑張りますし、F・マリノスのメンバーは個性的で面白い人が多いので、それぞれの個性も楽しんでいただけたらとも思っています」
kaoru「今年は動画と配信に本腰を入れようかなと思っています。YouTubeは以前から活動していたんですが、そこで応援していただけることが本当にうれしくて。どうしても競技シーズンになると自分の練習に時間を割くことが多く、(動画と配信が)滞ってしまうことがありましたが、うまく両立できるようにしたいですね。もちろん、その活動を言い訳にせず、むしろ配信を糧としてRSPTで結果を出せるように頑張っていきたいと思います」
バーサ「僕はもう優勝しかないですね、実は今年から地元の山口に帰って、あぐのむさんと同じく働きながら選手活動をする兼業の形を取ることになったんです。会社の皆さんにも理解をしていただいて、空いた時間には『シャドウバースやってていいよ』とも言ってもらっているんです。『木下くん、早く終わらせてもらっていい?』『すみません』『3ターン以内に終わらせてください』というやり取りがあったり、同僚のおばあちゃんに『プロ……プロ…何やったっけ。山口でやってる場合じゃない。あなたはもう空へ羽ばたく人間なんや!』と言われたりしています(笑)。そんな人たちに勝利報告をしたいですし、去年はずっと応援してくださったファンにいいところをお見せすることができなかったので、もう勝つしかないですね。もっと勝つことに執着したいと思っています」
しーまん「構築(※4) は基本的に勝率が5割近くに収束していく一方で、2Pickは上振れと下振れが激しいフォーマットです。そこで頭一つ抜けられたらいいですし、バーサも兼業になった中で昨シーズンよりも協力しながら、誰が出ても昨シーズンの分を取り返したいですね。これから見てくださる初心者の方には、F・マリノスの選手たちはいろいろな背景を持っていて、ゲームが分からなくても人となりから入ってくれたらいいなと。中継のワイプとか、選手の表情を見るだけでも楽しめるんじゃないかなと思っています」
※4 構築:ローテーション。最新5パックのカードを使って自由にデッキを組んで対戦する、シャドウバースにおける最もベーシックなルール
水煮「今年の誕生日を迎えたとき、この1年どうするか、どうしたいかを考えて、『個性を出したいな』と思ったんです。僕は結構、硬派なイメージというか、ずっとシャドウバースを頑張っているというイメージを持たれていると思うんです。その中で今年は、もっと私生活とかも見てほしいなと思い、最近はツイートとかも気にしながら活動しています。ファンの方やシャドウバースの仲間に見てもらうために始めて、地方大会やRAGEのときにシャドウバースの話だけじゃなくて、趣味など別のジャンルの話をしてもらうことも出てきました。今までどおり結果にこだわることに加えて、普段の様子も気にかけてもらえるような活動をしていきたいなと思っています」