早大卒・アンゴラ村長、卒業論文は北野映画分析「演出上の裏切りがどこかコントと似ている」

元気はハツラツな芸風で知られるお笑いコンビ・にゃんこスターのアンゴラ村長(29)は、早稲田大卒の学歴を持つ。埼玉県内の公立中学から早大の付属高校・早稲田大学本庄高等学院に合格し、早大文学部に内部進学した。高校時代は自由で個性的な仲間とともに楽しい時間を過ごしたというが、高校としては珍しい卒業論文もお笑いをテーマに執筆していた。早大文学部の卒業論文では、ビートたけしの映画について考察。インタビュー連載最終回の【大学編】では、アンゴラ村長が分析する北野映画の魅力を聞いた。

大学生時代は「お笑いに浸かった」と明かしたアンゴラ村長【写真:山口比佐夫】
大学生時代は「お笑いに浸かった」と明かしたアンゴラ村長【写真:山口比佐夫】

年末の番組でビートたけしと共演 「こんな時代だけど頑張って行こう!」と若手を鼓舞

 元気はハツラツな芸風で知られるお笑いコンビ・にゃんこスターのアンゴラ村長(29)は、早稲田大卒の学歴を持つ。埼玉県内の公立中学から早大の付属高校・早稲田大学本庄高等学院に合格し、早大文学部に内部進学した。高校時代は自由で個性的な仲間とともに楽しい時間を過ごしたというが、高校としては珍しい卒業論文もお笑いをテーマに執筆していた。早大文学部の卒業論文では、ビートたけしの映画について考察。インタビュー連載最終回の【大学編】では、アンゴラ村長が分析する北野映画の魅力を聞いた。(取材・構成=鄭孝俊)

――早大本庄高は卒業論文を書かないと卒業できないそうですね。何を研究しましたか。

「テレビ朝日系の『アメトーーク!』を見ていたら、出演している芸人さんが擬音や身振り手振りをたくさん使っていて、そういうのってどうやってやるんだろうと思って調べ始めました。擬音語や擬声語などを『オノマトペ』と呼び、身振り手振りは『非言語コミュニケーション』と呼ばれます。『アメトーーク!』を見ていれば論文は書けたので、資料収集はそれほど苦労しなかったですし、研究自体、とても面白かったです」

――内部進学で文学部を選んだ理由は。

「高校生の頃から『脚本家になりたい』と思っていたので、候補は文学部と文化構想学部でした。文化構想学部って表象研究やメディア研究のコースがあって、すごくカッコいいし、おしゃれな印象でしたが、『抽象的で何をやっているのか分からないな』という感じもしていました。文学部なら演劇映像コースがあったので、そっちに行った方が私には合っているかなと思いました」

――大学生になっても勉強は大変でしたか。

「高校時代に比べれば、まったく問題はありませんでした。演劇も映像も私が取り組みたかった学問で、学生生活の8割は“お笑い”に浸かる日々でした。勉強というか学問として一番頑張ったのは、卒業論文です。タイトルは『北野武論 映画監督かつコメディアンであること』。早大の本キャンパスの図書館には本が眠っているような空間があって、そこにたけしさんに関する本がたくさんありました。『こんな情報が欲しい』というときにそれが手元にあるという環境だったので、卒論を書いていて楽しかったですね」

――卒論で考察できたことは何ですか。

「たけしさんの映画は、芸人ならではの面白い撮り方だなっていうふうに思っていたので、そこを掘り下げました。『キッズ・リターン』では、極道の組長が道路に出て車に乗るシーンがありますが、そのときに後ろから普通のおじさんがフワッと現れる。日常を演出するために、通行人が通るシーンを挟むのはよくある演出ですが、芸人のたけしさんが演出するとこの通行人が急にポケットからピストルを取り出して、『パーン』と組長を撃ち殺してしまう。そういう演出上の裏切りがどこかコントと似ているというか、観客に気付かれないようにして、いきなりそういう展開を持ってくる見せ方がたけしさんらしいというか、芸人らしいなって思いました。仕上がった卒論を指導教官に見ていただいたら、『最初はこういう小さいテーマでは書けないと思っていたけど、すごく良かった』と褒めてくれて、とてもうれしかったです」

――たけしさんに直接会ったことはありますか。

「お会いしたことはあります。年末のたくさん芸人が出る番組に出て、芸人がネタを披露しては、たけしさんにバサバサと切られていくのですが、終わった後にみんなで写真を撮ろうと集めてくださって、『こんな時代だけど、頑張って行こう!』と熱い言葉で若手を鼓舞してくださいました」

――卒業してしばらくたちましたが、どんなときに“早稲田愛”を感じますか。

「本キャンパスから文学部がある戸山キャンパスに向かう際、交差点にある穴八満宮の前を必ず通りました。『最近、運が悪いかも』と思ったときは、この穴八幡宮に出かけてお参りして早稲田のキャンパスをのぞいて帰ります。友人から紹介された占い師に『あなたと縁の深い神社は穴八幡宮』とズバリ言われたこともあります(笑)」

――最後に早大を目指している受験生にアドバイスをお願いします。

「学業優秀な人が集まっているのは確かです。ただ、この優秀というのは勉強ができることだと今まで思っていたんですけど、そうじゃなくて他人を認めたりとか、他人に興味を持って、それを『面白い』と思える気持ちとか、そういうのも含めて、人間の聡明さにつながるといいますか。早大本庄高時代も感じたことですが、自分としては普通のことを言ったり、心からそう思ったことを言っているのに、『何か変だよ』とか『それっておかしいよ』とか、『あの子、カワイコぶってるじゃん』とか言われたことがある人は、ぜひ、早稲田に来てほしい。多様な個性を認め、自分の話を聞いてくれる人が早稲田にはたくさんいると思います。慶応と比べると早稲田は芋っぽいかもしれませんが、早稲田の人たちは、それ自体も面白く受け入れてくれるんじゃないかなって思うところがたくさんあります。高校受験は大変でしたが、私は早大に入学して本当に良かったと思っています」

□アンゴラ村長 本名・佐藤歩実(さとう・あゆみ)1994年5月17日、埼玉・本庄市生まれ。早大文学部演劇映像コース卒。2008年のテレビ朝日系『M-1グランプリ』決勝戦で優勝したNON STYLEに刺激を受け、お笑い芸人を目指すようになった。ワタナベコメディスクール20期生となり、コンビやピン芸人・アンゴラ村長として活動を本格化。17年4月にEコマース支援サービスの株式会社これからに入社し、フレックス社員として勤務するかたわら、スーパー3助とのコンビ・にゃんこスターを結成。同年のTBS系『キングオブコント2017』で決勝に進出し、注目を集めた。19年の日本テレビ系『女芸人No.1決定戦 THE W』では、あいなぷぅとのユニット・にゃんパーで出場し、準決勝に進出。150センチ。血液型B。特技はリズム縄跳び。

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