美しい音色は無段階で音程調節可能 ペットボトルから生まれた創作楽器に称賛の嵐

水を入れたコップで音階を作り、ふちをたたいて『きらきら星』などを演奏する様子を見たことがある人は少なくないはず。SNSでは空のペットボトルで音階を作り、『交響曲第9番』を演奏する動画が注目されている。楽器を考案したkajii創@手作り楽器(@kajiisou)さんに話を聞いた。

ペットボトルでできた楽器「エアコーク」を奏でる創さん【写真:ソーダ創作楽器店公式サイトより】
ペットボトルでできた楽器「エアコーク」を奏でる創さん【写真:ソーダ創作楽器店公式サイトより】

奏者を増やし、楽団を作ることが目標

 水を入れたコップで音階を作り、ふちをたたいて『きらきら星』などを演奏する様子を見たことがある人は少なくないはず。SNSでは空のペットボトルで音階を作り、『交響曲第9番』を演奏する動画が注目されている。楽器を考案したkajii創@手作り楽器(@kajiisou)さんに話を聞いた。

 空のペットボトルが、1枚板に組まれている謎の物体。画面の左端から伸びた両手がペットボトルの表面をこすると、スティールパンのような優しい響きが広がった。セットされている9本のペットボトルを駆使して奏でているのは、日本では師走になると多くのオーケストラが演奏されているドイツの作曲家・ベートーベンの『交響曲第9番』だ。名作曲家も驚く42秒に渡る動画は、88万件以上視聴され、1万7000件ものいいねが寄せられた。

「全く現実感がありませんが、現実です」という一文が添えらえれた動画を見た人からは「なでるだけで音が出る、だと?!」「すごい」と称賛する声のほか、「音が想像できなかったので聞いてビックリ」という心の声も。「すぐにゴミに出すより1度楽器として利用なんてすてき」という感想が集まっていた。

 制作したのは創作楽器店「SODA(ソーダ創作楽器店)」(@sodaaircoke)の創業者で、愛知県を拠点に活動している創(そう)さん。鳴らしていた正体不明のものは、今年の3月に立ち上げた店の第1弾として生み出した「エアコーク」と名付けた打楽器。ペットボトルのキャップに自転車のタイヤバルブを接着し、空気圧で調律する音階打楽器は、約2オクターブの音域を持つという。

「『エアコーク』という自作楽器を使っているのですが、水にぬらした手でこするといい音がすることに気が付きました。弦楽器のような音なので、オーケストラのような曲…。直感で『第九』がいいのではと思いました」と投稿した経緯について話してくれた。

 エアコークには、「くびれを持つコカ・コーラの1.5リットルボトルが欠かせない」と言い、ボトルに空気を注入することで音程を変化させていると明かした。音が出る部分を作るのはそれほど困難ではないそうだが、「どうセッティングするかが結構難しい。照明や気温で簡単に空気圧が変わるため、調律は結構デリケート」と苦労を語ってくれた。

 調律のほかにも音階を作るため、9本のペットボトルを準備することも大変なのだそう。「自分だけで集めるのは大変なので、友人に譲ってもらったり、今だったら(フリーマーケットサイトの)メルカリで空きボトルのみ買うこともあります」と苦笑いした。

 集まった反応に「なぜ違う音が鳴るのか不思議な楽器ですが、結構多くの方が『空気圧で音を変えている』と気が付かれていることに驚きました。こする音ということで『不快に感じる方もいらっしゃるかな』と思っていましたが、多くの方が『良い音!』と言ってくださって救われました」と感謝している。

 水と炭酸飲料など飲料ごと、メーカーごとに形の差があるペットボトル。音の差もあるといい、「コカ・コーラのペットボトルは分厚く丈夫で それ自体をたたいてもいい音がします。特に気に入っているところは音の良さです。見た目を大きく裏切る音がするので、そこは最高です。少しマニアックなことを言えば、音程が無段階で調整できるというかなり特殊な打楽器になるので、いわゆる木琴や鉄琴とは全く違った機能性も持っています」とこだわりを話してくれた。

 創作楽器店では今後、「奏者を増やし、楽団を作ることが目標」と夢は広がる。楽団では、新しい音楽にチャレンジしたいといい「聴いたことのないような音色やリズムの音楽を作ってみたい」と目を輝かせた。

 エアコークは創さんの店で購入も可能。6月10・11日には、東京・代田橋にある「スタジオ・イヴ」で、創作楽器の展示・演奏などを行うイベント「ふしぎな創作楽器展」を予定している。

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