島津亜矢が歌と歩んだ52年の人生 演歌歌手が髭男、YOASOBIを歌うワケ「心のままに挑戦したい」
歌手の島津亜矢が6月にポップスだけを歌う全国ツアーに初挑戦する。島津が披露するポップソングは若い世代もひきつけ、コンサートには老若男女が足を運んでいる。その素顔に迫りながら、「歌」と歩んできた人生52年を聞いた。
6月からポップスだけを歌う全国ツアーに初挑戦
歌手の島津亜矢が6月にポップスだけを歌う全国ツアーに初挑戦する。島津が披露するポップソングは若い世代もひきつけ、コンサートには老若男女が足を運んでいる。その素顔に迫りながら、「歌」と歩んできた人生52年を聞いた。(取材・文=福嶋剛)
島津にとって大切な「歌」。これを授けてくれたのは母親だった。
「母は演歌や歌謡曲が大好きな人で、私がお腹にいる時に『今度生まれてくる子は演歌を好きになってほしい』と言って、北島三郎さんの歌を毎日胎教で聴かせてくれました。だから、今でも北島さんの歌を聴くと背筋がゾクゾクとする不思議な感覚があるんです」
物心がついた頃には、「歌手になりたい」と言うようになった。そして、母からは1曲を15分で覚えるトレーニングなど、厳しい指導を受けた。
「母には『これくらい練習しないと歌手にはなれないよ』と言われ、私は毎日泣きながらレッスンを受けていました。反対に父はとっても優しくて、私が泣いていると『今日はこれくらいにしよう』と言ってくれました。でも、母は演歌だけじゃなく、車の中でいろんな音楽を聴かせてくれましたし、厳しさの中にも優しさがありました。何より母のおかげで私は歌手になれたので、感謝しかないです」
母との二人三脚でメキメキと上達。地元の熊本では敵なしの“ちびっこ歌姫”となり、グランプリ獲得数は6歳で100を超えていたという。
「最初は引っ込み思案で自信のない子どもでしたが、お客さんから拍手をもらったり、『上手だね』と褒めてもらうことがうれしくて、人前で歌うことが楽しくなっていきました。その上、負けず嫌いな性格で、大会で負けてしまうと悔しくて、悔しくて。生意気だったので、審査員の人に『どこがダメでしたか』とよく質問しました(笑)」
歌の次に時代劇が好き。夕方に始まる『水戸黄門』『桃太郎侍』『遠山の金さん』などの再放送を見るため、学校が終わると一目散に帰宅していたという。
「水戸黄門の『この紋所が目に入らぬか』という名シーンは、学校でもよくまねしていましたね(笑)。昔の話し言葉が大好きだったので、よく決めぜりふをまねしていました。その甲斐もあって、歌手になってせりふ入りの歌があると練習なしでも一発でOKが出るくらい得意なんですよ」
両親を説得し、憧れだった作詞家の星野哲郎氏に14歳で弟子入り。1986年に『袴をはいた渡り鳥』で歌手デビューを果たし、今年でキャリア38年目を迎えた。圧倒的な歌唱力で、ファンからは「歌怪獣」のニックネームで親しまれている。ポップスのカバーアルバム『SINGER』を発売したのは、39歳の2010年だった。
「それまでは、『演歌はこうあるべき』とこだわり過ぎていました。ある時、J-POPの音楽番組に出演させていただき、ほかの出演者さんのステージを見ていたら、歌っている時の楽しさがお客さんにも伝わり、お互いに幸せがにじみ出ていたんです。うらやましくて、『いろんなジャンルの歌で、もっとたくさんの人に楽しさを届けたい』。そう思いました」
海外の曲をカバーするときはカタカナに直して何度も歌う
国内外の有名曲をカバーしたアルバム『SINGER』シリーズは8作を数える。演歌特有の歌いまわしを使わない自然な歌唱法が、若い音楽ファンにも受け入れられており、最新作『SINGER8』では、Official髭男dism、YOASOBI、アデルなどの代表曲をカバーしている。
「演歌もポップスも曲によって自然に歌い方が変わります。自分でも不思議ですが、歌の世界に引き込まれると、その景色とともに歌い方も変わっていく感じがします。英語の歌は自分で聴いたイメージをカタカナで書いてみて、何度も繰り返し歌って雰囲気をつかんでいきます。でも、なるべく時間をかけずにマスターするようにしています」
そんな需要に応えるべく、島津は6月にポップスだけを歌うコンサートツアー『島津亜矢 PREMIUM POPS TOUR 2023』を熊本、東京、大阪、名古屋の全国4か所で開催する。
「初めて演歌を歌わないコンサートツアーに挑戦するのですが、オリジナルのポップナンバーも初披露したいと思っています。今まで私のコンサートを見たことがない若い世代の方にも楽しんでいただけるような内容を考えています」
決して演歌から離れるつもりはない。生まれる前から与えられていた「歌」だからこそ、ジャンルにこだわることなく、世に広く伝えていくことを願っている。
「歌は私の人生を懸けてきたたった1つの大切なものです。あと何年、今の声で歌えるか分かりませんが、『こうじゃなきゃいけない』といった型にはめることなく、心のままに挑戦して歌っていきたいです。今度のポップスコンサートに来ていただいたお客さまが、『演歌も聴いてみようかな』って、そんなきっかけが作れたらいいなって思っています」
歌うことも生きざまも自然体。そうでいられる理由を聞くと、島津は「余計なことを考えないただの能天気な人間です」と言い、豪快に笑った。
〇…島津は2月22日、初めてのポップスツアーと同時にペット向けオリジナルブランドのプロデュースにも挑戦することを発表した。愛犬家でもあり、現在は「娘たち」と呼ぶ4姉妹のトイプードルと一緒に暮らしている。「私は4匹と呼びたくないので4人、4姉妹と呼ばせてください。長女のくりん(14)は後ろの両足が悪くて車いすを使っていますが、とっても気が強くて頑張り屋なんです。次女のキャンディ(13)はおもちゃが大好きで、三女のココ(11)はちょっと神経質で臆病ものです。四女のメロディ(10)は『末っ子』といった感じでとっても甘えん坊なんです」。コロナ禍に入ってからは、「愛しい娘たちに精神的にも助けてもらって」と言い、「レコ―ディングにも連れて来ます」と明かした。
□島津亜矢(しまづ・あや)1971年3月28日、熊本・植木町生まれ。86年5月21日に『袴をはいた渡り鳥』でデビュー。テレビの音楽番組などでポップスのカバーを披露しており、歌うたびに公式サイトにアクセスが集中。サーバーダウンも頻繁に起きている。洋邦ポップス曲のカバーを歌ったアルバム『SINGER』シリーズの売り上げは、累計約30万枚。
島津亜矢 PREMIUM POPS TOUR 2023「SINGALONG(シンガロン)」
6月03日(土) 熊本城ホール(熊本)
6月10日(土) 昭和女子大 人見記念講堂(東京)
6月16日(金) オリックス劇場(大阪)
6月24日(土) 名古屋市公会堂(愛知)
お問い合わせ:https://sunrisetokyo.com/detail/22013/
初のオリジナル・ポップス作品による両A面シングル「SINGALONG /笑い話」
発売日:2023年5月31日
TECA-23042/¥1,400(税込)
収録内容:
1.SINGALONG【作詞:渡辺なつみ 作曲:江﨑文武/小川翔 編曲:江﨑文武/小川翔】
2.笑い話【作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継 編曲:村松崇継】
3.SINGALONG -Instrumental-
4.笑い話-Instrumental-
島津亜矢プロデュースFAMILY & LIFEブランド
「SINGALONG(シンガロン)」:http://www.sing-along.jp/
オフィシャルサイト:http://www.shimazu-aya-koenkai.com/
Instagram:https://www.instagram.com/aya.shimazu_official/