金を振り込ませて消息不明、税金を永遠に払うリスクも…自動車の個人売買は自己責任、プロの警告

近年、SNSの普及とともに自動車の個人売買によるトラブルが増えている。仲介業者を介さないため、中古車市場の相場に比べ、自由に価格を設定できるメリットがある一方で、車を渡したものの入金されない、受け取った車が故障車だった、掲載写真と実車が違ったなどのリスクもあり、それらはすべて自己責任だ。国内最大級の自動車フリマサイト「カババ」を運営する株式会社アラカンの田中一榮代表に注意点を聞いた。

自動車の個人売買に潜むリスクとは?(写真はイメージ)【写真:写真AC】
自動車の個人売買に潜むリスクとは?(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「誰かベンツ買いませんか?」SNSに書き込み多数 メリットとデメリットを解説

 近年、SNSの普及とともに自動車の個人売買によるトラブルが増えている。仲介業者を介さないため、中古車市場の相場に比べ、自由に価格を設定できるメリットがある一方で、車を渡したものの入金されない、受け取った車が故障車だった、掲載写真と実車が違ったなどのリスクもあり、それらはすべて自己責任だ。国内最大級の自動車フリマサイト「カババ」を運営する株式会社アラカンの田中一榮代表に注意点を聞いた。(取材・文=水沼一夫)

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 SNSを検索すると、自身の愛車の写真を掲載し、個人売買を持ちかける投稿は多い。「誰かベンツ買いませんか?」「110万円希望です!」「約21年乗ってきた愛車…売ります」。車を買いたい側の目に留まれば、直接メッセージを送って交渉することができる。実車確認を経て、入金→納車という流れが一般的だ。

 中古車を売る方法は大きく分けて、3つある。

「王道は次の車を買ったお店に買い取ってもらう、下取りという出し方が一つです。そして、買取の専門業者に買い取ってもらう方法があります。これは一括査定サイトに依頼して、同時に複数の業者からバーッと買取の査定依頼が来て、自宅まで来てもらって査定してもらう出張買取も含みます。そして、あとはいわゆる個人売買ですね」。他には業者に頼んで売買するオークション代行という方法もある。

 中古車1台につき、販売する業者にかかるコストは30万円ほどと言われる。中古車販売店は利益を出さないといけないため、車を少しでも安く仕入れ、また、高く販売する必要がある。

 その点、個人売買は仲介業者が入らないため、価格を自由に設定できるのが強みだ。

「一般的なメリットは間違いなく価格です。本当に個人と個人でやった場合は中間マージンがゼロになります」

 ほかにも、前オーナーから車の履歴を聞けることも魅力で、「出品者の方と直接会って車を買うので、その方がどういうふうに乗っていたのかは会ったときに何となく分かります。事実かどうかは分からないにしても、少なくとも口頭で、『俺はこういうふうに乗ってきたんだよ』『ガレージ保管で雨の日は乗っていないよ』『タバコは吸ってないよ』『犬は飼ってないよ』など、車の履歴について直接説明を聞くことができます。中古車屋の場合は、前のオーナーの履歴を消す作業が入るので、どのような乗り方をしていたかは分かりません。例えば、実際は犬を飼っていてめちゃくちゃ臭い車だったけれど、仕入れた時点で徹底的に洗浄して、きれいにして分からないようにした上で、『動物は乗せていません』と売ることもできます」と、指摘した。

 一方で、個人売買には注意したい点もある。

 上場する中古車販売会社で長年役員を務めていた田中さんは、「自分が持っていない車をあたかも持っているように装って画像で投稿し、しかも相場よりも安い金額で出品する。買い手が現れると、例えば先に半分だけお金入れてください、みたいな感じでお金を振り込ませて連絡がつかなくなる。いまだにそういったことがあります」と、一例を明かす。

 ネット上でも、こうした金銭トラブルは絶えない。入金を確認せずに車を渡してしまったり、車両交換後に盗難車と気づいて代金の返還を求めても連絡が途絶えた事例もあった。出品者に不利な修復歴や車の不具合が隠されていることもある。多くの場合、被害者は泣き寝入りをせざるを得ない状況だ。

書類の個人情報が悪用される危険… 重大事故の責任を負う可能性も

 さらに、個人売買では個人情報が入った書類のやり取りも危険をはらんでいる。

「車を引き渡し、名義変更の書類を引き渡したのに、購入者の人が万が一、名義変更をしてくれなかったら、例えば自動車税を永遠に自分が払わなきゃいけないとか、あと所有権が自分についたまま相手が事故して、相手が保険に入っていなかった場合、今だと所有者に責任が来ます。その人が起こした重大な事故の責任を、引き渡したはずの元所有者である出品者が負わなきゃいけないことがある」。車が名義変更されないまま、犯罪などに利用されれば、知らないところでトラブルに巻き込まれる可能性も捨てきれない。

 カババでは、これらのリスクを排除するため、取り引きされる全車両について、資格を持ったプロが鑑定している。個人売買のメリットを生かしたまま、手数料は出品者が0円、買い手が3万5千円で、名義変更のオプションも付けることが可能だ。「全部本人に直接会って、本人確認と免許証の確認、車検証で所有者かどうかの確認、そこまでやってから出品してもらっています」

 英国では80%、韓国でも40%以上が車の売買に個人売買を利用していると言われる。それに対し、日本は5%以下で、他国と比べれば、まだ慎重な姿勢がうかがえる。だが、車に限らず、ネットを利用した個人売買の流れは加速している。若者を中心に、手軽な自動車購入の手段として、今後さらに広がる可能性がある。

 高額な買い物だけに、“ハズレ”を引きたくないという心理は誰もが持っているもの。SNS上の匿名の相手が、取り引きするにあたり、信用できる人物なのか、冷静に見極める必要がありそうだ。

「一般的な個人売買で現車を見ずに買うことはあり得ないと思います。お金を振り込むときも、出品者の方と立ち会って、必ず現車と名義変更に必要な書類をもらった上で、その場で代金を振り込む。そうすることによって、出品者の方も購入者の方もリスクをミニマムにできます。現車の引き渡しと同時に購入者がその場で振り込みができない、もしくは出品者がその場で振り込みをインターネットで確認できないようなケースは正直リスクが高いので、やめたほうがいいと思います」と、田中さんは警鐘を鳴らしている。

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