院長がわいせつ容疑で逮捕 通院中の女性患者が明かす卑劣手口 「アレってそういうことだったのかな」

神奈川・横浜市の「うしみメンタルクリニック」で院長が診察を装い、女性患者にわいせつな行為を行ったとして逮捕された。診察室という密室で何が行われていたのか。ENCOUNTはこのクリニックに6年通い、現在も通院中という女性を取材。悪質な手口の実態が浮かんだ。

横浜市のうしみメンタルクリニック【写真:ENCOUNT編集部】
横浜市のうしみメンタルクリニック【写真:ENCOUNT編集部】

診察室という密室で何が? 看護師不在 医者の立場を利用した身勝手行為

 神奈川・横浜市の「うしみメンタルクリニック」で院長が診察を装い、女性患者にわいせつな行為を行ったとして逮捕された。診察室という密室で何が行われていたのか。ENCOUNTはこのクリニックに6年通い、現在も通院中という女性を取材。悪質な手口の実態が浮かんだ。

「たまたま寝る前にニュースで『医師が逮捕』というタイトルの記事を見て、またかと思って開いてみたら、私の通院しているクリニックの名前があった。『エッ!』と思いました。被害女性の訴えを読むと、『診察のときのアレってそういうことだったのかな……』って私も感じることがあった。ちょうど数日後が診察日だったので、『診察どうなるのかな?』という不安もあって、その日は一晩中寝れませんでした」

 主治医の逮捕というまさかの事態に、女性は混乱した様子を隠さなかった。

 神奈川県警泉署に逮捕されたのは、院長の牛見豊容疑者(62)。専門は精神科、心療内科で公式サイトでは「当クリニックが地域の皆様にとって、安心していつでも相談できる 心と体のホームドクターになれればと、強く願ってやみません」などと、あいさつしている。

 女性は双極性障害を患い、6年前から月に1回のペースでクリニックに通院していた。クリニックの医師は牛見容疑者だけで、ほかに受付として牛見容疑者の妻や女性スタッフが働くことがあった。

「先生の印象は物静かでおっとりした感じ。声も大きくない。診察を受けると、ひと言目に『この1か月、調子はどうですか?』と、優しい声がけをする先生でした」

 しかし、報道を受け、改めて振り返ると、“違和感”を感じることが複数あったと女性は話す。

 院長はたびたび、「健康診断は受けていますか?」と声をかけてきた。女性が首を振ると、隣の検査室に移動し、簡単な検査が始まったという。「『産婦人科は定期的に行っていますか?』と聞かれて、『最近は行ってないです』と答えると、『ちょっと軽く診ますね』と言われて、いわゆる内診をするんです。それで、『卵巣の腫れもないですね』という感じでした」。健康診断なのに、聴診器を胸にあてることもなく、婦人科のような診察が、「何回もありました」という。

 さらに、女性が漢方楽を処方されるときも、院長の内診があった。「ちょっと粘膜を見ますね。下着を脱いで横になってください」と言い、手袋をはめ消毒をする。漢方を服用するための体質チェック、と説明を受けた。

 どの検査でも、なぜか上半身には触れないという共通点があり、「腰から上はないです。先生は上(の診察)には興味ないんだ、と思っていました」と徹底していた。

 また、検査室へは通常診察室から一度出て、入り直す必要があった。ところが、ここ最近、動線に変化があったと明かす。

「診察室の先生のデスクの裏からカーテンを挟んで中から検査室につながっているんですけど、『裏からどうぞ』と言われるようになったんです。普通そういう通り方ってしないじゃないですか。『なんでそこ?』と思いました。しかも、狭いんですよ」。妻や女性スタッフに知られないように、“裏ルート”を使い、犯行に手を染めていた可能性がある。

 クリニックに看護師がいなかったことも不可解だった。血液検査も院長自身が行っており、「だから、診察室の検査も基本1人でできる。好き放題できたのかな」。疑問が湧くこともあったが、相手は医師だけに、「どこまでが正しいか、素人だから分からなかった」が本音。「引きこもりの人とかほかの病院に行くのが難しい人もいるから、(健康診断などを)柔軟に対応してくださったのかなという思いしかなかった」と、訴え出るなどの判断は難しかった。

牛見容疑者の「数えきれないくらいやった」にあ然 必要な薬、転院を視野に検討も…

 女性は自身も被害者だと悟った。

「今回、被害に遭った女性が50代というのを見て、私に対しての行為もそういう目的だったのかなと思いました。その後の続報で、『数えきれないくらいやった』とか『ストレス解消だった』という発言を目にして、そんなしょっちゅうやってたことなんだ、しかもストレス解消だったんだと知ってショックでした」

 院長逮捕の後、クリニックからは一度電話で着信があった。女性は薬を継続して飲む必要があり、「処方箋がないと困るという状態」と、状況は深刻だ。

 現在、クリニックの入り口には、患者へのおわびの言葉とともに、「しばらくの間休診となります」という貼り紙が出されている。このまま閉院する可能性もあり、女性は転院を検討している。

「新しい受け入れ先が決まったところで、先生と相性が合うかどうかも含めて、一からやり直さなきゃいけない。医者の考え方で治療の方針も変わってくる。紹介状やカルテはどうすればいいのか」

 メンタルクリニックという繊細な領域で、患者の弱みにつけ込んだ悪事。「されるがままの人が多かったと思う。ものを言えない患者の状態を利用したとすれば、悪質ですよね」と、女性は怒りをにじませた。

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