コロナ禍で一変したニューヨーカーの暮らし(前編) 外出規制で進むオンライン交流

新型コロナウイルス感染者が世界最多の100万人を超えた米国で、最も深刻な状況下にあるニューヨーク。外出が規制されてから1か月以上が経った。市民は外出時に社会的距離を保つことが求められ、マスク着用を義務付けられたことで街の風景は大きく変わった。これまで当たり前だったものがそうでなくなったいま、市民はどのような思いで過ごしているのか。筆者の体験とニューヨーカーの声をもとに「いまの暮らし」をレポートする。

 新型コロナウイルス感染者が世界最多の100万人を超えた米国で、最も深刻な状況下にあるニューヨーク。外出が規制されてから1か月以上が経った。市民は外出時に社会的距離を保つことが求められ、マスク着用を義務付けられたことで街の風景は大きく変わった。これまで当たり前だったものがそうでなくなったいま、市民はどのような思いで過ごしているのか。筆者の体験とニューヨーカーの声をもとに「いまの暮らし」をレポートする。

入店時のマスク着用を促すスーパー【写真:岡田弘太郎】
入店時のマスク着用を促すスーパー【写真:岡田弘太郎】

マスク着用、当たり前の光景に

 ニューヨーク州では社会的距離を確保できない際にマスク(に相当するもの)の着用が義務付けられているため、マスク姿の人々を見るのは当たり前になった。入手が困難な時期もあったが、最近は薬局などの店舗でレジカウンター越しに販売され、デリバリー・テイクアウトのメニューに加えているレストランもある。価格は通常の2倍以上に跳ね上がり、1枚2ドル~4ドル(約212円~425円)程度で販売されている。

 筆者が住む近所のスーパーでは入り口で店員がマスク着用を促し、レジでは一定間隔を空けて並ぶように床にテープが貼られている。薬局や郵便局などは厳しい入店規制を敷かれているところもあり、建物外まで列ができる。狭いニューヨークの歩道では社会的距離を保つのも難しいため、人とすれ違うだけでも緊張が走る。街中や公園などでマスク不備を巡って口論になる光景は珍しくなくなった。

安全と利益の間でローカル・ビジネスオーナーの苦悩

 長引く外出自粛で最も大きな打撃を受けているのが、ローカル・ビジネスのオーナーたちだ。大半のエリアでレストラン(デリバリー・テイクアウトのみ)やコインランドリーなど一部のローカル・ビジネスが営業を続けているが、外出規制期間が長引くにつれて営業を休止する店が増えてきている。ブルックリン区で15年以上コインランドリーを経営するケン・リーさん(37)は早い時期に「Closed」の張り紙を店先に貼った。

「通常営業しているコインランドリーは多いです。家賃を払わないといけないから仕方ないかもしれないですが、お客さんの安全を第一に考えた場合、一時休業するべきだと判断しました。密室に多くの人が集まれば、感染のリスクは高まります。レストランが危険でコインランドリーが安全という理論は成立しません」と話す。現在は常連客相手のデリバリーのみ提供しており、収入は3割以上減った。

「家族がいるので収入が減るのは痛いです。市から支援も期待できないし、多くの経営者が安全と利益の間で頭を悩ませています。でも、政府には市民の安全をどうやって守るかを第一に考えてほしいです。生活していて戦時下のような緊張感があります。いつになったら安心して営業できるようになるのか分かりません」と不安を吐露する。新型コロナ感染拡大を受け、安全と利益の間で個人事業者の苦悩が続いている。

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