23歳・北澤響、長編映画初主演で中年男性と愛の逃避行 強ハートで役者道に邁進
俳優で23歳の北澤響が、中年男性との逃避行に身を任せる役に挑んだ。5月6日公開の『さいはて』(越川道夫監督)で映画初主演。人生に疲れた若い女性のモモを演じている。越川監督、共演は中島歩とベテランぞろいの現場に、長編映画出演すら初めてだった彼女はどうコミットしていったのか。その原動力と過程を聞いた。
北澤響、今月6日公開『さいはて』で11歳上の中島歩と共演
俳優で23歳の北澤響が、中年男性との逃避行に身を任せる役に挑んだ。5月6日公開の『さいはて』(越川道夫監督)で映画初主演。人生に疲れた若い女性のモモを演じている。越川監督、共演は中島歩とベテランぞろいの現場に、長編映画出演すら初めてだった彼女はどうコミットしていったのか。その原動力と過程を聞いた。(取材・文=大宮高史)
『さいはて』は、北澤が演じるモモと、中島が演じる中年男性のトウドウが夜の街で出会うところから始まる。偶然出会った2人は情を交わし、あてのない逃避行に身を任せていく。やがて、モモはトウドウが抱えた暗い過去と、彼が旅の終わりに何をしようとしているかを知る――。
「この役が私でいいのかなと思うとともに、初めて台本を読んだときはどう映像になっていくか楽しみに感じました。日常であまり使わない言葉遣いで、文学的な気分を味わえる作品になりました」
越川監督によるくすんだ映像風景の中で、淡々と進むノスタルジックなロードムービーは、7日間で全編を撮りきった。北澤はこれまでに岡山県のPRムービー『ぽつり、岡山』(2019年)や『セーラー忍者かげちよ』(20年)など短編映画での経験はあったが、長編映画は初出演。しかも主演に抜てきされた。
「完成した映像を見返すと、恥ずかしいくらい全力疾走していました。海に飛び込むシーンでもその場の勢いで演じ切りました。監督からはロケの前に『自分の全てを持って来て』と言っていただいたので、全てを差し出そうと決めて臨みました。モモの役作りや、トウドウさんとの空気感もしっかり計算したものというよりは、中島さんとの共同作業の中でイメージを形にしていきました。監督からも『まっすぐにしか走れないタイプの女優だね』と言われました。初めてだからこそ、映画に余計な先入観を持たずにいられたかもしれません」
11歳上の中島との共演。北澤は「私の芝居にしっかり呼吸を合わせて反応してくれました」と感謝し、「2人で感情を交わすだけのシーンがとても多いのですが、濃密に芝居を研究できたので物怖じをしたりとかはなかったですね」と振り返る。
「トウドウさんって、個人的には『かわいい男の人だな』と思います。ちょっと面倒な性格のおじさんだけど、そこが放っておけなくて助けたくなっちゃいます。私自身も何かを抱え込んでいる人は気になってしまうので、モモがトウドウさんについて行く心理は共感できますね」
現場を楽しみながらも、映画初主演を経て、「表現の難しさを実感しました」という。
「私が演技で見せる感情が、しっかりと相手に、今回でいえば中島さんに伝わっているかが作品の成否を担っていると思います。なので、すごく慎重にならないといけないし、大胆にならないといけない場面もありましたから」
これまでもテレビドラマに出演し、劇団に所属して舞台経験を積んできたが、俳優業の原点は高校時代だった。
「始めた演技の経験がすごく楽しくて、その時感じたことが全てです。高校時代から最近までは結構少年の役を演じる機会もあって。私、中性的でボーイッシュに思われることが多いみたいです。女性役に限らない、いろいろな役どころをやらせていただきました」
最近、オフで気になっているエンタメは、TikTokだ。「短い時間の動画であれだけポンポンと情報が入ってくるのってすごいツールだと思うんです! 映画とは全然違いますし、私はSNSが得意ではないので余計に驚愕(きょうがく)です。とにかく情報量がすごいので、疲れている時こそ何も考えずにリラックスしたくて、あえて立て続けに動画を見てしまいますね」
目標とする俳優像については「共演の俳優さんに『あなたのおかげでこの作品ができた』と言われるような役者ですね」と語る。監督から「真っすぐにしか走れない」と評された一本気ぶり。持ち前の強心臓も踏まえ、ベテラン俳優たちとも渡り合えそうだ。
□北澤響(きたざわ・ひびき)1999年8月3日、東京都生まれ。2018 年から舞台のキャリアをスタート。映画では19年に全国オーディションを経て前野朋哉監督短編映画『ぽつり、岡山』のヒロインに抜擢され、続けて20 年の短編映画『セーラー忍者かげちよ』に主演として出演。22 年は日本テレビ系連続ドラマ『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』に近藤真緒役で出演。特技はジャズダンス、ギター。157センチ。